デジタルトランスフォーメーション推進指標とは?診断方法を解説!
2021.02.02

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」をきっかけに、デジタルトランスフォーメーションに対する注目は日々に高まっています。
DXレポートに続いて、2019年にはDXを推進するためにDX推進指標も策定されました。
DX推進指標をもとに、デジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる方も多いでしょう。
一方で、「どのように活用すべきか分からない」「そもそもどのような指標なのか知らない」方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本記事では、上記の方のためにデジタルトランスフォーメーション推進指標について解説します。
DX推進指標の診断・活用方法を知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
デジタルトランスフォーメーション(DX) 推進指標とは?
デジタルトランスフォーメーション(DX) 推進指標は、経済産業省が国内におけるDX推進を後押しする目的で策定した指標です。
デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、従来の仕事の進め方や企業文化を改革する必要があるため、経営の幹部をはじめとする組織内のさまざまな部門が認識を共有し、行動に繋げる必要があります。
DX推進指標を活用すれば、自社におけるDXのあるべき姿と現状とのギャップを把握でき、社内でも認識を共有できるでしょう。
DX推進指標は、自己での診断が基本となっており、社内の各部門が協議しながら回答することを想定しています。
自己で診断を実施することで、目指すべきDXの目標や必要なアクションを明確にできるでしょう。
DX推進指標が策定された背景
デジタル技術を活用したこれまでにないビジネスモデルを用いた新規参入企業によって、既存企業はビジネスモデルの転換を迫られています。
既存の企業が競争力を獲得・維持するためは、デジタルトランスフォーメーションの推進が不可欠です。
一方で、DX推進には経営の戦略や企業の文化の改革が求められるため、全体で認識を共有しなければなりません。
DXに向けた限定的な取り組みを見られるものの、DXに対する社内での温度差から本格的なデジタルトランスフォーメーションに至っていないケースがほとんどです。
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」よると、DXが進まず古いシステムを利用し続けた場合、2025年以降年間で最大12兆円の経済的損失が生じるとされています。
上記の問題は「2025年の崖」と呼ばれています。
2019年に経済産業省は、デジタルトランスフォーメーションの推進を後押しするために、DX推進指標を策定しました。
DX推進指標が策定された背景には、既存企業のデジタル化の遅れと2025年の崖の問題があるのです。
DX推進指標の目的
DX推進指標の目的は、社内全体でデジタルトランスフォーメーションの必要性を認識し、具体的な行動を促すことです。
DXではビジネスモデルそのものを改革するため、単独の部署だけでは実現できません。
社内で認識を共有し、経営の幹部から事業部まですべての部門で、ビジョンを共有する必要があります。
経済産業省はDX推進指標を、以下のように位置づけています。
本指標は、現在、多くの日本企業が直面している DXを巡る課題を指標項目とし、上記関係者が議論をしながら自社の現状や課題、とるべきアクションについての認識を共有し、関係者がベクトルを合わせてアクションにつなげていくことを後押しすべく、気づきの機会を提供するためのツール
DX推進指標の作成を通して、社内でのデジタルトランスフォーメーションに関する議論を活性化する効果も期待できます。
従業員ひとりひとりがDXの重要性を理解できれば、問題が自分ごと化し、デジタルトランスフォーメーション推進における自身の役割をイメージしやすくなるでしょう。
2つのデジタルトランスフォーメーション(DX) 推進指標
デジタルトランスフォーメーション(DX) 推進指標は、大きく2つの項目に分けられます。
それぞれの項目について解説する前に、まずは定性指標と定量指標について解説します。
定性指標
定性指標では、デジタルトランスフォーメーション推進の成熟度を0から5の6段階で評価します。
各段階の成熟度は以下の通りです。
0:未着手 | 経営者自身がDXに無関心か、具体的な取り組みをおこなっていない状態。 |
---|---|
1:一部での発散的実施 | 全社における戦略が定まっておらずの問題での限定的な実施にとどまる。 |
2:一部での戦略的実施 | 全社の戦略にもとづいて一部の部門でDXを実施。 |
3:全社の戦略に基づく部門横断的推進 | 全社の戦略に基づいて部門を横断してDXを推進している。 |
4:全社の戦略に基づく継続的実施 | 定量的な指標などに基づいて継続的にDX導入に取り組んでいる状態。 指標に基づいて積極的な業務改善をおこなっている。 |
5:グローバル市場におけるデジタル企業 | グローバル競争に勝ち抜けるレベルにまで、デジタル化が定着した状態。 レベル4を満たしたうえで、国際市場でも競争上の優位性を獲得している。 |
まったくデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいない状態はレベル0で、国際的な競争力を獲得した状態がレベル5です。
経済産業省は、DX推進指標を日本企業の国際競争力を高め、デジタル企業への変革を促すための指標を考えているため、レベル5「グローバル市場におけるデジタル企業」が最終的な目標です。
各レベルの詳細な内容は、設問ごとに設定されているため、「「DX推進指標」とそのガイダンス」の「6.DX推進指標 本体」を確認しなら回答すると良いでしょう。
また、成熟度の回答時には、なぜその成熟度を選択したのかを確認できる根拠と資料も合わせて回答が推奨されています。
理由は根拠にもとづいて回答することで、回答者による回答結果のばらつきを抑えられる、人事異動によって担当者が変わっても判断の根拠を引き継げるためです。
DX推進指標の自己で診断をおこなう際には、資料も準備しておきましょう。
定量指標
定量指標は、自社がデジタルトランスフォーメーションで伸ばそうとしている指標を、自ら選択して算出する指標です。
そのため、企業ごとに定量指標は異なります。
例えば、デジタルトランスフォーメーションで、製品の供給スピードを短縮したい場合は、リードタイムを定量指標に設定すると良いでしょう。
基本的に企業たんいでの評価が前提となっており、評価の対象とするシステムやサービスを自社で設定する必要があります。
定量指標は数値目標を立てた上で、進捗管理をおこなうなどの活用方法を想定しています。
DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
ここからはDX推進のための経営のあり方や仕組みに関する指標について解説します。
ビジョン
社内でビジョンやデジタルトランスフォーメーションの必要性を共有できているかを評価する項目です。
デジタル技術を活用して変化に対応しながら、どのような価値を創出していくのかを共有できているか、将来的な危機感とビジョン実現の必要性を共有できているか、2つの項目があります。
中期・長期の経営計画や経営会議の資料などをもとに回答しましょう。
経営トップのコミットメント
前述のビジョンを実現するために経営陣のリーダーシップの下、人員や予算の配分、企業文化の改革が実施されているかをチェックするための項目です。
単に経営トップが号令をかけるだけではなく、デジタルトランスフォーメーションによる改革を根付かせるための仕組みを明確化しているかどうかを評価します。
事業計画や中期経営計画などの資料をもとに回答しましょう。
仕組み
仕組みの設問は、
- マインドセット・企業文化
- 推進・サポート体制
- 人材育成・確保
の3つの項目で構成されています。
マインドセット・企業文化の項目は、挑戦を促し、改善をおこなうプロセスを継続的かつ、スピーディーに実行しているかを評価する項目です。
事業計画のほか、従業員の意識調査などにもとづいて回答します。
推進・サポート体制は、デジタルトランスフォーメーションを推進する部署や人員の役割が明確になっているかどうかや、必要な権限が与えられているかをチェックする項目です。
職務の分掌や組織図などの資料をもとに回答します。
人材育成・確保は、 DXの推進に必要な人材の育成・確保の度合いを評価する項目です。
人材・スキル開発計画や、中期経営計画書などにもとづいて回答します。
事業への落とし込み
経営者陣が率先してデジタルトランスフォーメーションによるビジネスモデルや、業務プロセスの改革に取り組んでいるかを評価する項目です。
改革に向けた戦略やロードマップが明確になっているか、経営陣が継続的に改革をリードしているかなどの観点から評価されます。
IR資料や事業計画などをもとに回答します。
DXの取り組み状況
DXの取り組み状況は定量指標のため、自社で指標を設定する必要があります。
デジタルトランスフォーメーションの取り組み状況は企業ごとに異なるため、画一的な指標による評価は困難です。
取り組み状況を診断するためには、「DXにより経営がどの程度変化したか」「進捗状況」の2つの観点から評価します。
「DXにより経営がどの程度変化したのか」を評価できる指標の例は、以下の通りです。
製品開発スピード | 新製品開発の予算措置から提供までの期間。 |
---|---|
新規顧客獲得割合 | 新規顧客からの売上や新製品による売り上げの割合。 |
決済処理スピード | 仕入れから販売後の現金回収までの期間。 |
一方、「進捗状況」の評価に活用できる指標の例は次の通りです。
- 業務プロセスとデジタル化率
- 企業全体に占めるデジタルサービスの割合
- デジタルトランスフォーメーションのためのトライアル件数
DXの取り組み状況に関する指標は、経年変化の把握と進捗管理が目的のため、定期的に評価する必要があります。
DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
ITシステムの枠組みに関する指標は、以下の3つに分けられます。
ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築
ビジョンを実現するために、既存のITシステムをどのように改善すべきかを把握し、対策を講じているかを評価する項目です。
システム全体の構成図やデジタルトランスフォーメーション推進計画などをもとに回答します。
ガバナンス・体制
ビジョンの実現に向けて、技術的な負債を低減しつつ、価値の創出へと繋がる分野へ資金や人材を配分できているかどうかを評価する項目です。
IT計画やIT予算管理簿などの資料にもとづいて回答します。
ITシステム構築の取り組み状況
ITシステム構築の取り組み状況は定量指標のため、企業ごとに指標は異なります。
指標の例は以下の通りです。
DX人材の数 | それぞれの部門の業務内容に精通しつつ、デジタル化で何が出来るのかを理解し、DXを推進する人材の数。 |
---|---|
データの鮮度 | 迅速に把握すべきデータを入手できるまでの期間や頻度 。 |
サービス改善までのリードタイム | ITシステムの改善策の立案からサービス開始までの期間。 |
ITシステム構築の取り組み状況は、進捗状況の把握と改善を目的とした指標のため、定期的に計測する必要があります。
DX推進指標を自己で診断するには?
DX推進指標の自己で診断をおこなうには、エクセルファイルで作成された指定のフォーマットへ入力後、Web申請システム「DX推進ポータル」へ提出する必要があります。
また、DX推進ポータルを使用するには、「gBizID」が必須です。
gBizIDは、「gBizID」の公式サイトで作成できるため、アカウントを持っていない場合は事前に作成しておきましょう。
自己で診断した後、提出した場合は、情報処理機構(IPA)が集計したベンチマークを入手できます。
他社のデジタルトランスフォーメーションの進み具合を確認するためにも、提出後は必ず入手しておきましょう。
DX推進指標の役割
DX推進指標には、「ベンチマーキング」「先行事例の情報提供」の2つの役割があります。
ここからは、それぞれの役割について解説します。
ベンチマーキング
DX推進指標にはベンチマーキングの役割があります。
先述の通り、DX推進指標をIPAに提出すると、他社の推進指標を集計したベンチマークを入手できます。
各社がデジタルトランスフォーメーションを手探りで進める中、他社や他の業界の取り組み状況を確認し、自社の位置づけを把握することも大切です。
他社と比較して、どの程度DXに取り組めているのかが明らかになれば、 何を改善すれば良いのか理解を深められるでしょう。
DX推進指標のベンチマークは、あくまでも集計した結果を提供するもので、それぞれ企業の診断の結果を公表するわけではありません。
先行事例の情報提供
DX推進指標は、これからデジタルトランスフォーメーションに取り組む企業に対して、先行事例の情報を提供する役割もあります。
経済産業省は、診断スコアが高い企業でおこなわれた施策に関する情報の提供をおこないます。
すでにDXに取り組んでいる企業の事例から学べることは多いです。
デジタルトランスフォーメーションを進める上で、避けるべき失敗や真似すべき点を見つけられるでしょう。
加えて経済産業省では、DX推進指標も提出した企業同士で意見を交換できる場の提供も検討中です。
実現すれば、他社のデジタルトランスフォーメーション担当者の意見をもらえる可能性もあります。
今後は、個別の項目の意味や解釈を伝えるアドバイザーのサポートの提供も視野に入れる方針も示されています。
DX推進指標の自己で診断が進めば、本格的にデジタルトランスフォーメーションに着手する企業も増加するでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX) 推進指標の活用方法
デジタルトランスフォーメーション推進指標をどのように活用すべきかを解説します。
組織内での認識を共有
デジタルトランスフォーメーションを推進するためには、経営陣やIT部門をはじめ、社内の各部署で認識を共有する必要があります。
また、必要に応じてDX部門の設置も検討しなければなりません。
デジタルトランスフォーメーションは単なるデジタル化を意味するのではなく、経営戦略やビジネスモデルの改革も含まれます。
そのため、経営陣と現場の両方でDXの必要性を共有しておかなければ、失敗してしまう恐れも。
先にご紹介したとおり、DX推進指標は社内で協議しながら回答する必要があるため、DXに関する各部門の意見を集約できます。
DXの必要性を意識するだけではなく、自社におけるデジタルトランスフォーメーションの方向性を考えるきっかけになるでしょう。
改善を促す
デジタルトランスフォーメーションの必要性を共有できても、実際に行動に移せなければ意味がありません。
DX推進指標には、具体的な行動を促す効果も期待されています。
DX推進指標の中には、取り組み状況を確認するための項目も設けられています。
デジタルトランスフォーメーションへの取り組みの度合いを確認できるほか、他社から収集された全体データとの比較も可能です。
そのため、自社のDXの取り組みが他社と比較して、どの程度進んでいるのか明確にできるでしょう。
目標とのギャップや他社との違いを確認できれば、具体的な改善点を洗い出せます。
進捗状況の把握
DX推進指標は、進捗状況の把握に活用できます。
年度ごとにDX推進指標で継続的に診断を実施すれば、デジタルトランスフォーメーションの目標をどの程度達成できたのかを確認できます。
デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、システムや業務手順などの定期的な見直しが必要です。
上記の理由から、DXの自己での診断は一度限りではなく、継続的におこなう必要があります。
自社にとって重要な指標は年次ではなく、より短期的なサイクルで確認するのも良いでしょう。
いずれにせよ定期的なDX推進指標のチェックと改善を、業務スケジュールに組み込むことが大切です。
DX推進指標の注意点
DX推進指標を活用する際は、以下の3点に注意しましょう。
- 良い点を取ることが目的ではない
- ビジネスモデルを評価する指標ではなく、対応力を可視化する指標
- あくまでも経営目標達成のための手段
DX推進指標は、デジタルトランスフォーメーションの推進が目的であり、高いスコアを取ることが目的ではありません。
また、DX推進指標は経営の指標を達成するための手段であり、DX推進指標の改善が目的化してしまうと、DX本来の目的であるビジネスモデルの改革よる競争力の獲得に失敗する可能性もあります。
まとめ:DX推進指標を活用して「2025年の崖」に備えよう!
デジタルトランスフォーメーション(DX)推進指標について解説しました。
ご紹介したようにDX推進指標は、社内の各部門で協議した上で回答する必要があります。
DXにこれから取り組む企業であれば、社内での意識を共有するきっかけになるでしょう。
しかし、「デジタルトランスフォーメーションを推進できる人材が在籍していない」「DX推進が思うように進まない」といったケースも多いです。
弊社、テクロ株式会社では、DX推進を支援しています。
デジタルトランスフォーメーションの推進でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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