デジタルトランスフォーメーションの日本・世界の市場規模と今後の動向
ここ数年の間に、デジタルトランスフォーメーションについて取り上げるメディアが増えてきました。
デジタルトランスフォーメーションの重要性が知られるにつれて、導入を検討する経営者も増加しています。
そのため「DXの市場規模は?」「デジタルトランスフォーメーション市場の今後の動向を知りたい」方も多いのではないでしょうか。
本記事では上記の方のために、デジタルトランスフォーメーションの市場規模や今後、予測される変化について解説します。
DX市場の動向について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
- 1 デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
- 2 DX市場規模が拡大を続ける理由
- 3 国内におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組み状況
- 4 デジタルトランスフォーメーションに活用されている技術
- 5 将来的に活用を検討している業務
- 6 日本のデジタルトランスフォーメーションの市場規模
- 7 デジタルトランスフォーメーションへの分野別の市場規模
- 8 デジタルトランスフォーメーションの技術基盤への市場規模
- 9 日本におけるDXの事例3つ
- 10 世界と国外のデジタルトランスフォーメーションの市場規模
- 11 海外におけるDXの事例3つ
- 12 デジタルトランスフォーメーションの市場規模は今後も拡大する見通し
- 13 デジタルトランスフォーメーション市場で今後予測される変化
- 14 まとめ:デジタルトランスフォーメーションの市場規模は急成長している
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術・データを活用してビジネスモデルを変革することです。
デジタルトランスフォーメーションは、単なる業務のデジタル化ではありません。
企業文化や組織体制など、企業における広範な変革を指す言葉で、市場における競争力の獲得が目的です。
日本では、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート~IT システム2025年の崖の克服とDXの本格的な展開~」をきっかけに注目されるようになりました。
デジタルトランスフォーメーションについて、詳細を知りたい場合はこちらの記事もご一読ください。
>>デジタルトランスフォーメーションとは?注目される理由を徹底解説
DX市場規模が拡大を続ける理由
DX市場規模が拡大を続ける理由に、以下の4つが挙げられます。
- 業務効率化が図れる
- 働き方改革の広まり
- 少子高齢化による人材不足
- 「2025年の崖」の解消
それぞれの特徴や詳細について解説します。
理由1.業務効率化が図れる
DX市場が規模拡大していく理由に、業務の効率化を図れることが挙げられます。
最新技術を導入し、人の手で作業していた業務をAIやツールに任せることで工数が減らせるのです。
特に内容が決まった定型のルーチンワークを自動化することで、人的ミスを減らし作業スピードを上げられます。
それだけではなく、担当していた社員の浮いた工数をそのまま他の業務に転用することも可能です。
代替可能な業務を自動化し、今後自社で挑戦したい新たな分野や、力を入れたい分野に人材を注力することで自社の成長にもつながります。
理由2.働き方改革の広まり
日本では、働き方改革が重要視されています。
働き方改革とは、労働環境を改善する取り組みです。
厚生労働省からは、以下のように発表されています。
働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます。
引用:働き方改革 ~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~|厚生労働省
多様化したライフスタイルに合わせるためには、今までのシステムだけでは対応しきれません。
デジタル技術を駆使し、従業員の業務負担を減らして働き方を変えていく動きが広まっています。
理由3.少子高齢化による人材不足
日本を含めた先進諸国は今後、少子高齢化が進み労働人口の減少に伴う人材不足が予想されます。
DXを進めることで、業務の効率化や従来の工数カットが可能です。
日本を始めとする人件費が高い国の場合DXを導入すると、業務のパフォーマンスアップだけではなく人材獲得にかかる費用や手間を減らせるメリットがあります。
理由4.「2025年の崖」の解消
日本が抱えるITの課題に「2025年の崖」が挙げられます。
「2025年の崖」とは経済産業省が提唱している問題の一つであり、2025年までに既存システムのサポート終了・IT人材の引退・退職が進むことで、発生する経済損失を指しています。
DXによる社内のデジタル化を進め「2025年の崖」を乗り越えるためにも、
- 老朽化したシステム
- 現在利用しているシステムの維持費
を見直し、最新ツールの導入も検討していく流れができています。
国内におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組み状況
株式会社富士キメラ総研が、インターネット上で実施したアンケート調査によると、国内におけるデジタルトランスフォーメーションへの取り組み状況は、以下のようになっています。
- すでに導入している 19.5%
- 実証実験段階である 17.5%
- 今後3年以内に導入する計画がある(実証実験はまだ行っていない) 12.3%
- 今後3年より後に導入する計画がある(実証実験はまだ行っていない) 16.1%
- 今後の導入を検討しているが具体的な計画はない 34.6%
引用:『2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社富士キメラ総研
「すでに導入している 」「実証実験段階である 」が40%となっており、DXの推進が始まっていることが分かります。
同社の調査では、多くの企業がデジタルトランスフォーメーションに強い関心を持っていることが明らかにされました。
デジタルトランスフォーメーションに活用されている技術
株式会社富士キメラ総研の調査では、現在デジタルトランスフォーメーションに活用されている技術は以下のものと言われています。
- 人工知能(AI)
- IoT(モノのインターネット)
- セキュリティ
- 画像処理
- クラウドコンピューティング
出典:『2018 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社富士キメラ総研
どのような技術が使われているのか、それぞれ解説します。
人工知能(AI)
人工知能(AI)は日進月歩で発展を続けている技術であり、ライフスタイルや業務においても十分にサポートできるほど成長しています。
- 自動入力
- 顔認証技術
- 言語翻訳
を始めとする多種多様な分野で活躍しており、今後も注目すべき技術の一つです。
特に画像に写っているものを判断する「画像処理」の技術も、人工知能が得意とする分野です。
情報の抽出やデータ化が可能となり
- 工場ラインのトラブルを即座に認識
- 防犯カメラによる不審者の検出
と、それまでは人の手で実施されていた負担の大きい労働をAIに任せられます。
DXとAIの関係性について、より詳細を知りたい方はこちらの記事もぜひご一読ください。
関連記事:デジタルトランスフォーメーションにAIが必要な理由は?得意な仕事や事例と併せて解説!
loT(モノのインターネット)
loTとはInternet of Things(モノのインターネット)の略称です。
家電や玄関ドアをネットワークと接続することで遠隔操作や自動操作を可能とし、生活をより豊かにする技術であると注目されています。
DXにおけるIoTは
- 全国の道路にセンサーを配置し、交通量を自動で計測する
- 室内の温度・湿度を測り、自動で施設の最適化をする
といった使い方がされており、IoTを通じて得られた情報をもとにDXを実現しています。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングは通称「クラウド」と呼ばれ、PCやスマートフォンを始めとする、インターネット上で活用されている技術です。
インターネットを通じてシステムの構築・サービスの利用が可能であり、自社でサーバー・運用環境の構築を必要としないため導入後からサービス開始までをスムーズに進められます。
サブスクリプションのような月額制サービスと相性が良く、定期的に料金を振り込むことで制限なく利用できます。
セキュリティ
コロナ禍の影響もあり、リモートワークやテレワークを実施する企業も増えてきています。
デジタル化の推進によって、データの管理ややり取りもWeb上で完結するようになりましたが、利便性の裏側にある情報漏洩や不正アクセスなどセキュリティのリスクも無視することはできません。
近年のサイバー攻撃はより巧みにかつ凶悪なものが増え、社内メールを偽装したフィッシングメールから社員情報を入手し、なりすましてアクセスする事件も報告されています。
DXが注目されるにつれて、セキュリティの考え方も見直されています。
現在では、データにアクセスするアカウントを常に監視し検証する「ゼロトラスト」に変化しているのです。
将来的に活用を検討している業務
さらに富士キメラ総研は、将来的にDXの導入を検討している業務に関する調査も実施しています。
同調査におけるDXを導入したい業務トップ5は以下の通りです。
- コーポレート 86.2%
- マーケティング 83.6%
- 一般事務 81.6%
- セールス 80%
- IT 80%
出典:『2018 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社富士キメラ総研
人事や総務といったコーポレート業務での活用を検討している企業が、もっとも多いことが分かります。
上位5つの業務はすべて80%を超えており、デジタルトランスフォーメーションの中でも、上記の分野での需要が高まることが予想されます。
つづいては、国内におけるDXの市場規模について見ていきましょう。
日本のデジタルトランスフォーメーションの市場規模
株式会社富士キメラ総研の調査によると、国内における2017年時点でのデジタルトランスフォーメーションへの投資額は約5,000億円でした。
デジタルトランスフォーメーションへの投資は徐々に増えており、2030年にはDXへの投資額が3兆円を超えると予測されています。
今後10年は国内におけるデジタルトランスフォーメーションの市場規模は、拡大する可能性が高いと言えるでしょう。
参考:『2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社富士キメラ総研
『2018 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社富士キメラ総研
デジタルトランスフォーメーションへの分野別の市場規模
国内におけるデジタルトランスフォーメーションの分野別の市場規模は以下の通りです。
2019年度 | 2030年度予測 | |
交通/運輸 | 2,190億円 | 9,055億円 |
金融 | 1,510億円 | 5,845億円 |
製造 | 971億円 | 4,500億円 |
流通 | 367億円 | 2,375億円 |
医療/介護 | 585億円 | 1,880億円 |
その他 | 550億円 | 2,090億円 |
参考:『2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社富士キメラ総研
いずれの分野も2030年には、市場規模が増加すると予測されています。
ここからは、各分野における市場規模の詳細について解説します。
金融
金融における2019年度のデジタルトランスフォーメーションへの市場規模は、1,510億円とされています。
業界では、次世代の金融に関する基盤サービスやデジタル審査・予測への投資が盛んです。
2017年の銀行法の改正をきっかけに、複数の金融サービスの連携を可能にするシステムの構築が進められています。
次世代の金融に関する基盤サービスの導入によって、ユーザーの利便性向上が期待されています。
また、審査・予測の自動化を検討している機関も多いです。
新型コロナウイルスの影響で、計画を前倒しする機関も増えており、審査・予測の省力化が進むと考えられます。
近年ではロボアドバイザーによる資産運用や個人資産管理アプリが登場し、個人の投資が増えることでさらなる市場拡大も見込まれています。
金融業界のデジタルトランスフォーメーションについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:銀行など金融業界の課題とデジタルトランスフォーメーションの活用法3つ
製造
製造における2019年のデジタルトランスフォーメーションへの市場規模は971億円とされています。
製造では、スマートファクトリー化を目的とした投資が盛んです。
スマートファクトリーとは、工場内のあらゆる機器をインターネットに接続し、データを活用して継続的な生産プロセスの改善や発展を可能にした工場を指します。
クラウドサービスの普及によって、IoTシステムの導入コストが下がったことで、稼働の状況を可視化するため、設備への投資も加速しています。
2030年には市場規模が4,500億と4.6倍の成長が見込まれており、金融と並んで今後のDX市場拡大が期待されている分野です。
製造業におけるデジタルトランスフォーメーションについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:製造業でのデジタルトランスフォーメーションの戦略4つと成功事例3つ
医療/介護
医療/介護の分野における2019年度のDXの市場規模は585億円でした。
政府が医療ビッグデータの利用に力を入れていることも相まって、データの活用を目的としたデジタルトランスフォーメーションへの投資が増加しています。
特に厚生労働省が推進するデータヘルス計画を受けて、健康保険に関連する分野を分析・支援する動きが盛んです。
データヘルス計画は、医療・検診データの分析にもとづいて保健の事業の最適化を図る計画で、2015年からすべての保険組合に実施が義務づけられています。
今後は、データの再利用を目的とした分析支援の需要も増えると考えられています。
医療におけるDXの活用法について知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
関連記事:医療の業界が抱える3つの課題とデジタルトランスフォーメーションの活用法
流通
2019年の流通におけるデジタルトランスフォーメーションの市場規模は、367億円とされています。
流通では人手不足を補うために、オペレーションの効率化を目的とするDXの推進が盛んです。
デジタルトランスフォーメーションによって、季節による需要の変化を考慮した在庫の最適化や手持ちの在庫の削減が期待されています。
2030年には市場規模が2,375億円にまで成長が見込まれており、今回取り上げた分野の中でも市場規模の成長率が6.5倍と大きい数値が出ています。
流通業界のデジタルトランスフォーメーションについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:物流の業界におけるデジタルトランスフォーメーションの活用法5つ
交通/運輸
交通/運輸の2019年度の市場規模は2,190億円で、調査対象となった分野の中でもっとも市場規模が大きい分野です。
近年社会問題となっている高齢者による事故やあおり運転に対応するため、セーフティードライブの実現を目指すためのDX導入率が伸びています。
中でもドライブレコーダーを活用した状況の分析や、車載カメラによる運転者の状態の異常を検知するシステムへの投資も増加しています。
そのほか、タクシーなどの配車サービスにおける需要の予測への費用追加も増える見込みです。
2030年には9,055億円にまで市場規模が拡大すると予測されており、今後も最大の市場規模であり続けることがうかがえます。
その他
その他の分野における2019年の市場規模は550億円とされています。
2030年には他の分野同様、2,090億円まで市場規模が成長することも見込まれています。
建設や観光・宿泊、農業などの分野で、老朽化した設備への対応や災害の監視を目的とした投資が盛んです。
また、上記の分野ではドローンの活用も進み、さらなる市場規模の拡大も考えられています。
デジタルトランスフォーメーションの技術基盤への市場規模
分野別の市場規模を紹介しました。
ここからはデジタルトランスフォーメーションの基盤技術への市場規模を解説します。
IoTセキュリティ
デジタルトランスフォーメーションの基盤技術であるIoTへの市場規模は、2017年時点で220億円でした。
IoTの普及に合わせて、IoT環境を対象とするセキュリティ対策への市場規模も拡大しています。
IoTシステムは主に
- デバイス
- ネットワーク
- クラウド
で構成されています。
3つのセクションを、横断的にカバーできるシステムやサービスが登場したことで、ユーザーの選択肢が広がり市場規模も拡大した背景がありました。
2030年にはIoTセキュリティへの市場規模が2,200億円に達すると予測されており、13年でおよそ10倍まで拡大が見込まれています。
参考:『2018 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社 富士キメラ総研
量子コンピューティング
2017年時点での量子コンピューティングへの市場規模は103億円でした。
量子コンピューティングは、量子力学を応用して高速な計算を実現する技術です。
実用化されれば、コンピューターの性能が飛躍的に向上するとされています。
2020年ごろに登場した「量子ゲート方式」のクラウドサービスにより、市場規模も拡大しています。
今後は量子コンピューターのさらなる開発に加えて、アプリケーションの市場規模も増加する見込みです。
参考:『2018 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる|株式会社 富士キメラ総研
日本におけるDXの事例3つ
日本におけるDX事例に、以下の3社の例が挙げられます。
- 伊藤忠商事株式会社
- みんなの銀行
- 株式会社アイデン
それぞれの詳細について説明します。
事例1.伊藤忠商事株式会社
総合商社大手の伊藤忠商事株式会社は、食品サプライチェーンに関するDXを推進しています。
人工知能を活用し、メーカーへの発注時における
- 需要のある商品の予測
- 発注時の最適化
を目標としたDXです。
これまでの小売・卸の業務データと共に、天候データや季節の情報をAIに学ばせることで、発注時のタイミングで一番最適な発注リストの作成ができます。
DXが実現すれば余剰在庫や発注業務に関する負担を減らし、より効率的かつエコロジーな発注ができるでしょう。
事例2.みんなの銀行
ふくおかフィナンシャルグループ傘下であるみんなの銀行は、デジタルネイティブ世代をターゲットとしたデジタルバンクを開設します。
Z世代・Y世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代は現在の10〜30代を指しており、現在は全人口の3割ほどです。
しかし今後はデジタルネイティブ世代の人口が増え、2030年には全人口の6割を占めると考えられています。
これを見越したみんなの銀行は
- 書類送付が不要
- 通帳・キャッシュカードなし
で、スマートフォンだけで申し込みができるデジタルバンクサービスを構築しました。
さらにビデオ通話機能を用いてオペレーターが直接本人確認し、その場で口座開設までを完了できるスムーズな仕組み作りを実現します。
煩雑な手続きを排除し、24時間365日いつでも口座開設が可能な銀行を開業することで、既存の銀行とは異なる世代・ターゲットの集客を目的としたDX事例です。
事例3.株式会社アイデン
制御盤・分電盤の専門メーカーである株式会社アイデンは、自社の主力事業である制御盤製造において属人化が進み、特定の社員の知見に依存してしまう課題がありました。
そこでDXを導入し、デジタル化ツールを開発することで
- 機械化できる製造工程を自動化
- 工程設計をデータ化し必要な作業を明確化
を実現します。
作業内容が明確されたことで習熟度に応じた作業の振り分けが可能となり、
- より専門知識を持ったベテランは付加価値の高い業務に専従できる
- 各作業担当者の進捗管理が容易となる
とメリットも生まれました。
世界と国外のデジタルトランスフォーメーションの市場規模
ここからは、海外におけるデジタルトランスフォーメーションの市場規模を地域別に紹介します。
世界
株式会社グローバルインフォメーションの調査では、約5,215億ドルだった市場規模が2026年には、総額で1兆2,475億ドルにのぼると報告されました。
(参考:デジタルトランスフォーメーションの世界市場 (~2026年):技術 (クラウドコンピューティング・ビッグデータ&アナリティクス・モビリティ/ソーシャルメディア・サイバーセキュリティ・AI・IoT)・展開区分・組織規模・産業 (BFSI・小売・教育)・地域別|株式会社グローバルインフォメーション)
コロナ禍で経済的な成長が伸び悩む中、着実に市場規模は拡大しており現在も継続してDXへの投資や導入が進められています。
以下より主な国のDX市場規模について解説します。
アメリカ
アメリカは、デジタルトランスフォーメーションへの投資がもっとも盛んな国です。
アメリカのDXの市場規模が大きな理由は、GAFAをはじめとするビッグテック企業の存在が挙げられます。
GAFAとは、Google・Amazon・Facebook・Appleを指す言葉です。
GAFA以外にも、MicrosoftやAbobeなどデジタルトランスフォーメーション業界を牽引する企業が多いため、アメリカのDX市場の規模は大きいのです。
中国
国別で比較した場合、アメリカに次いでデジタルトランスフォーメーションへの投資額が多い国が中国です。
中国は、インターネットを活用したデジタル技術と製造業を組み合わせて、国際市場における中国企業の競争力向上を目指す「インターネットプラス政策」をとっています。
特に人工知能やスマートエネルギー、金融などの分野を重視する方針が示されているため、中国国内におけるこれらの分野の市場規模は、今後拡大する可能性が高いと言えるでしょう。
中国は、デジタルトランスフォーメーションへの投資額の伸びがもっとも大きく、2020年は前年と比較して13.6%増加すると予測されています。
東南アジア
東南アジアもインターネット経済の成長が著しい地域です。
eConomy Southeast Asia 2019によると、東南アジアの市場規模は2025年までに3,000億ドルに拡大すると予測しています。
(参考:eConomy Southeast Asia 2019|Google TEMASEK BAIN&COMPANY)
特に成長率が高いと予測されている国は以下の通りです。
- ベトナム 29%
- インドネシア 32%
- フィリピン 27%
- タイ 24%
引用:第4節世界のデジタル化の加速における新興国との共創を通じた新事業の創出|経済産業省
2025年までの年間平均成長率が20%を超える国も多く、もっとも高いインドネシアは30%と超えると予測されています。
インターネット経済の成長に伴って、デジタルトランスフォーメーションの市場規模も拡大する見通しです。
海外におけるDXの事例3つ
海外におけるDX導入の事例では、以下の3社が挙げられます。
- ロレアル・グループ
- Le Monde
- Farmers Insurance
それぞれの詳細について解説します。
事例1.ロレアル・グループ
世界最大の化粧品会社であるロレアル・グループは、DXの導入に際し以下の3つの目標を掲げました。
- 売上の20%をオンライン販売で実現
- より多くの接点を持つお客様の情報を活用
- ブランドと製品に対する愛情を持ってもらう
1つ目の目標は長年関係を続けてきた小売店と協力し、それぞれの店が持つ知見や専門知識を取り入れて成長につなげます。
2つ目の目標は顧客の購買習慣や過去の購入履歴だけではなく、一人ひとりの肌タイプや好みまでも分析・最適化することで、新商品の開発やイノベーションを生み出すきっかけ作りとなりました。
3つ目の目標はただ認知度を向上させるマーケティングから、顧客との深い関わりを構築する方針へ転換することで、自社ブランドと製品に関するファン化を目指します。
どれも高度なデジタル機能を構築することを前提とした目標であり、実現に向けてロレアル・グループは組織のトップからスキルアップに向けたトレーニングを実践しました。
アイデアの発案から商品リリースまでスムーズに進むようになり、アプリやUVパッチの開発に成功しています。
事例2.Le Monde
フランスで日刊紙を発行している大手新聞社Le Monde(ル・モンド)は、紙面のDX化で購買者数の2割増加を実現し18万人の定期購読者を獲得します。
以前のサイトは購買者限定のコンテンツを掲載する別のタブに誘導するUIになっていました。
そこからデータの分析を重ね、全ての読者が同じページを閲覧可能にし、有料会員のみ閲覧できるコンテンツに黄色いフラッグを付与し、非購読者でも有料コンテンツの存在を認知できるサイトデザインに改善します。
最終的にWebサイトの改善で
- サブスクリプションのCV率を46%増加
- デジタルサブスクリプション数を20%以上増加
に成功しました。
事例3.Farmers Insurance
アメリカの大手保険会社・Farmers Insurance(ファーマーズ・インシュランス)は、短時間かつスムーズに報告ができる損害請求報告プラットフォームを開発しました。
きっかけは、CEOが交通事故に遭い損害請求報告が煩雑だと知ったことでした。
それまではFarmers Insuranceに電話をかけて損害通知を報告し終えるまでに、平均12分ほど時間がかかっていましたが、損害請求報告プラットフォームを使えば3分で報告が終わります。
顧客のニーズを理解し、同業他社と異なるカスタマーサービスの提供・改善を続ける献身的な取り組みから生まれたDX事例です。
デジタルトランスフォーメーションの市場規模は今後も拡大する見通し
実態調査とコンサルティングを提供する富士キメラ総研が2020年に発表した「2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」では、2019年度と比較して2030年には国内のDX市場はおよそ4倍近い成長が予想されています。
中でも流通は2019年度の時点で367億だった投資額が、2030年には2,375億にまで伸びると予想されており6.5倍もの成長率が見込まれています。
全ての市場でDXに関する投資額や導入率が向上する傾向にあり、今後はどの業界に限らずあらゆるジャンルでDXが推進されていくことが想定できるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション市場で今後予測される変化
ここまで紹介したように、数年でデジタルトランスフォーメーション市場は大きく成長すると考えられています。
一方で、DXの成否によって企業間の競争力に格差が生まれる可能性も指摘されています。
さらにデジタルファースト経済においてはクラウドファーストが重要視されており、利用者がどの環境でもデジタルサービスを使用できる環境づくりも大切です。
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では「2025年の崖」問題を踏まえ、それまでにシステム刷新を推進する必要があると述べられました。
デジタルトランスフォーメーションへ投資した企業は、競合他社よりも速いペースでサービスを改善する一方で、DXへの投資に消極的な企業は競争力が低下し、シェアを失う可能性があります。
2023年にはICT支出の中でもDX・イノベーション支出の割合が50%以上になると予想されており、今後も市場の発展と拡大が見込まれている分野と言えるでしょう。
まとめ:デジタルトランスフォーメーションの市場規模は急成長している
ここまで
- デジタルトランスフォーメーションの意味
- デジタルトランスフォーメーションの市場規模
- 国内外におけるデジタルトランスフォーメーションの事例
- 今後のデジタルトランスフォーメーションの展望
について解説しました。
国内外を問わず、DXの市場規模は数年のうちにどの業界においても2〜6倍以上拡大すると予測されています。
企業が競争力を獲得・維持するためには、デジタルトランスフォーメーションが必須と考えてよいでしょう。
しかし、日本ではDXに本格的に取り組んでいる企業は一部にとどまっています。
企業によっては「ITに強い人材が在籍していない」「どのようにDXを導入すべきか分からない」ケースも。
テクロ株式会社では、DX導入を支援しています。
デジタルトランスフォーメーションについて解説した「DX解説本」も配布しておりますので、ぜひ参考にしてください。