製造業でのデジタルトランスフォーメーションの戦略4つと成功事例3つ
2021.01.18

ビジネスに大きな変化をもたらしてくれるデジタルトランスフォーメーション。
「DX」とも呼ばれていますが、その波は製造業にもやってきており、DXへの取り組みを進める企業が多くなっているのが現状です。
そこで今回は、製造業のDXについて紹介していきます。
製造業に取り入れるべきDX戦略や製造業でのDXの成功事例などについて紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
デジタルトランスフォーメーションとは
単なるIT化ととらえられてしまいがちなDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、それほど単純なものではありません。
DXは、「デジタルテクノロジーを取り入れることでビジネスの変革を図ること」と定義されています。
単純に企業のIT化を進めていくだけでなく、これまでのビジネスのあり方をデジタルテクノロジーの導入によって見直していこうとする考え方です。
日本のDXへの取り組みは諸外国に比べて遅れてしまっていますが、それでも数年前からさまざまな企業がDX化の取り組みを進めています。
そして、その流れは日本が世界に誇る製造業の分野でも起きています。
製造業は工場にロボットを導入して製造工程の自動化を図るなど、他の業界に比べて比較的早い段階からデジタルテクノロジーの導入がおこなわれてきました。
しかし、先ほども説明したように、DXは単なるIT化ではありません。
製造業の場合、
- 変化に対して柔軟に対応できる生産ラインの実現
- 製品の設計や開発
- 製造した製品を活用したサービスの提供
など、製品の生産における過程だけでなく、製造業にかかわるすべての業務においてデジタルテクノロジーの導入と活用が求められています。
製造業が取り入れるべき4つのDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略
製造業が取り入れるべきDX戦略には、代表的な4つの戦略があります。
それぞれどういった戦略なのかについてみていきましょう。
戦略1. 工場のスマートファクトリー化
工場で製品を製造する製造業には、製造現場である工場のスマートファクトリー化が求められます。
スマートファクトリーとは、デジタルデータを活用する新しいタイプの工場です。
AIやloTといったデジタルテクノロジーを導入して業務にかかわるデータを取得し、それらのデータを、
- 各プロセスでの業務効率化
- 品質の担保や向上
- 生産性の向上
などに活用していきます。
人間の目では見えていなかった改善点を、データの取得によって見える化し、業務効率化や品質・生産性の向上につなげていくわけです。
工場は製造業にとって核と言える部分ですので、DXへの取り組みを検討している企業が最も力を入れて取り組むべき戦略だと言えるでしょう。
戦略2. 業務効率化による人材不足の解消
日本は少子高齢化により働き盛りの世代の減少が急激なスピードで進み続けています。
そうなると当然人材が不足してしまうわけですが、それは製造業も例外ではありません。
技能実習の名目で外国人労働者を受け入れることで人材不足への対策がおこなわれてはいますが、この制度自体がさまざまな問題を抱えているといった側面もあります。
そのため、外国人労働者頼りになってしまうのは避けるべきだと言えるわけですが、そこで注目されているのが「DX」です。
DX化を進めることでさまざまな業務プロセスでの効率化が図れるようになると一人あたりの負担が大幅に軽減します。
それにより、慢性的な人材不足の状況を解消できるようになります。
人材不足は製造業界が抱えている大きな問題の一つですので、その問題を解決するための取り組みも戦略の一つとして考えるべきだと言えるでしょう。
戦略3. 製造した製品を活用したサービスの提供
製造業では製品の製造がメインになりますが、これからの製造業はそれだけでは勝負していけません。
そこで取り組むべきDX戦略の一つが、「製造した製品を活用したサービスの提供」です。
「サービス化」とも呼ばれるこの流れは、すでに製造業でのトレンドとなっています。
サービス化では、これまでのように単純に製品を製造してユーザーに提供するのではなく、その製品を使ったサービスを提供するところまでをセットとしたビジネスモデルを展開していきます。
製品とサービスの両方を提供することで製品そのものの価値が高まり、よりユーザーに選んでもらえるようにしていくわけです。
この流れは製造業でのスタンダードになっていくことが予想されるため、今後は製品購入後に利用できるサービスもセットで製品の開発をおこなっていくことが求められます。
戦略4. プラットフォーム化
プラットフォーム化も製造業が取り組むべきDX戦略の一つです。
これまでの製造業は製品の製造だけに取り組んでいる状況でしたが、それだと今後の厳しい競争に勝ち続けることはできません。
そこで、製造業を軸にさまざまな分野に裾野を広げてプラットフォームを構築し、ユーザーに利用してもらえるようにしていくわけです。
この戦略は世界的な大企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)がおこなっている戦略でもあります。
先ほど紹介した製品を活用したサービスの提供とあわせて進めていくのもおすすめです。
製造業でのデジタルトランスフォーメーション成功事例
ここからは、実際にDX化に取り組んで成功した製造業の事例をいくつ紹介していきます。
成功事例1. 株式会社今野製作所「プロセス参照モデル」
- 理化学機器の製造
- 板金加工
- 機械修理
- 油圧機器の製造
などの事業をおこなっている株式会社今野製作所。
そんな株式会社今野製作所がおこなったDXへの取り組みが、「プロセス参照モデル」です。
株式会社今野製作所では事業のスタイルを大きく変更し、オーダーメイド型に移行することで製品の付加価値の向上に取り組みました。
しかし、その取り組みによって対応力不足や負荷の集中、納期遅れなどの問題が相次いでしまいました。
これは、業務のプロセスが複雑化してしまったことによって引き起こされた弊害ですが、この問題を解決するためにおこなわれたDXの取り組みが「プロセス参照モデル」です。
プロセス参照モデルでは、
- 複雑化してしまっていた業務プロセスの分析
- それぞれの業務プロセスを最適化するために必要なシステムツールの開発
などがおこなわれました。
この取り組みによって業務プロセスの整理や可視化が実現され、人材が不足してしまっているポイントや改善点が早期に発見できるようになるなどの成果が得られました。
【参考】製造業DX取組事例集:株式会社今野製作所「プロセス参照モデル」
成功事例2. 沖電気工業株式会社「バーチャル・ワンファクトリー」
精密機器の製造・販売をおこなっている沖電気工業株式会社。
そんな沖電気工業株式会社でおこなわれたDXの取り組みが、「バーチャル・ワンファクトリー」です。
沖電気工業株式会社には、世の中の変化による需要の減少や共通の仕様による生産がおこなえていないなどの課題がありました。
そこで、これまで工場ごとに分かれてしまっていた設計情報を共通化し、設計データをそれぞれの工場で受け取れるようにしたのが「バーチャル・ワンファクトリー」です。
「バーチャル・ワンファクトリー」では、それらの取り組みと並行する形で、人材や技術の交流の活発化もおこわれました。
これらの取り組みにより、技術の共通化とそれぞれの工場の強みを生かした生産体制の構築が図れるようになりました。
【参考】製造業DX取組事例集:沖電気工業株式会社「バーチャル・ワンファクトリー」
成功事例3. 株式会社アイデン「IWS」
制御盤や分離板の製造・販売をおこなっている株式会社アイデン。
そんな株式会社アイデンでは、
- 制御盤製造を製造担当者の知見に依存してしまっている
- 作業の進捗管理や工程管理が担当者任せになってしまっている
- 作業の簡素化や単作業化の必要性を感じている
などの課題を抱えていました。
それらの課題を解決するためのDXの取り組みが、「IWS」です。
IWSは各工程で必要な作業を標準化・可視化できるデジタルツールで、CADベンダーと連携し、このIWSの開発と導入を進めていきました。
IWSの導入により得られた成果には、以下のようなものがあげられます。
- デジタル図面データを活用して一部の作業を機械化させたことによる生産性の向上
- 作業の明確化による分業体制の構築と担当者の進捗管理の実現
- 作業量の明確化による、必要な材料量の事前把握
- 作業の標準化による新規海外拠点への進出や市場への参入
これらの成果の中で特に注目するべきなのが、「作業の標準化による新規海外拠点への進出や市場への参入」です。
DXに求められるものはデジタルテクノロジーの導入によるビジネスの変革ですが、株式会社アイデンでは、IWSの導入によってこれまで参入できていなかった市場や拠点への参入が実現できています。
日本の制御盤メーカーがほとんど進出していなかった市場や拠点への参入が実現できているとのことですので、今後同社の売り上げに大きく貢献していくことになるでしょう。
【参考】製造業DX取組事例集:株式会社アイデン「IWS」
製造業でデジタルトランスフォーメーションを推進する際の課題
他の業界よりも比較的早い段階からDX化に取り組んできた業界である製造業ですが、製造業でのDX化には、思うように普及が進んでいないといった側面もあります。
これには、デジタルテクノロジーを活用してビジネスの変革を図るIT技術者とものづくりをおこなう技術者の考え方や感覚の違いが大きく関係しています。
経営者やIT技術者側はこれまでのやり方を変えて変革を図りたいものの、これまでのやり方を大きく変えたくない現場の技術者が反発し、なかなかDX化を前に進めていくことができていないわけです。
また、製造業には中小企業が多いため、経営状況的にDX化に取り組めない課題もあります。
これらの課題をクリアしながらDX化を進めていくためには、しっかりと戦略を練り、現場の技術者たちにも理解してもらいながらDXへの取り組みを進めていく必要があります。
まとめ:しっかりと戦略を練り、デジタルトランスフォーメーションでビジネスに変革を
デジタルトランスフォーメーションが製造業にもたらしてくれるメリットは計り知れません。
DXはビジネスに変革をもたらすものですので、DXへの取り組みが大きなビジネスチャンスにつながることもあります。
しかし、それにはしっかりとした戦略と時間が必要になります。
また、現場の技術者たちから理解を得ることも必要です。
これらの取り組みには時間がかかるので、今回紹介した成功事例を参考に戦略を練りながら時間をかけて取り組んでいくようにしましょう。
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