選抜研修とは?3つのメリットと効果を高めるためのポイントなど詳しく解説
今、多くの企業で選抜研修が導入されています。
あらかじめ優秀な人材を選抜し、次の階層を意識した研修を施す選抜研修は、次世代リーダーの育成に適した施策です。
自社でも選抜研修を導入したいと考えつつ、次のような悩みをもつ方もいるのではないでしょうか。
- 階層別研修との違いがよくわからない
- 選抜研修のメリット・デメリットを知りたい
- 選抜研修を効果的に実施したい
この記事では選抜研修について説明しつつ、効果的に実施するポイントや具体例を紹介します。
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目次
選抜研修とは
選抜研修とは、企業側が設定した基準で選ばれた社員が対象になる研修です。
選抜者は、次世代の経営者やチームリーダー候補として研修を受講する場合がほとんどです。
優秀な人材を厳選して実施するため、育成コストを抑えながらもリーダー層の育成を早く進めていけます。
選抜研修の目的
選抜研修の主な目的は、企業が選抜した人材の知識やスキルを、1ランク上の階層に求められるレベルまで引き上げることです。
例えば、次期部長候補の社員を対象にして選抜研修を実施する場合、前の階層である課長の時点から部長レベルの知識・スキルを習得するプログラムを設計します。
特定の階層になる前の準備段階として実施されることが多いです。
選抜研修の内容
選抜研修のプログラムでよくあるのは、次のような内容です。
- 問題解決スキル
- リーダーシップ
- ロジカルシンキング
- マーケティング
- 企業の戦略立案
経営やマネジメントに関わるカリキュラムが設定され、多くの場合半年〜1年以上の長期で実施されています。
階層別研修との違い
日本の企業においてよく見られるのは、各階層ごとに実施される階層別研修です。
階層別研修と選抜研修にはどのような違いがあるのか、具体的に見ていきましょう。
対象者の違い
階層別研修では、対象者は階層に所属するすべての社員です。
管理職や新卒社員、3〜5年目の中堅社員など役職や年齢に合わせて対象者を分けていきます。
選抜研修は階級で絞らず、基準を満たさない社員のみに受けさせるため、限定的な違いがあります。
研修目的の違い
階層別研修における主な目的は、対象になる階層の社員全体の知識やスキルを向上させることです。
つまり、組織全体のスキルの底上げになります。
一方の選抜研修では、選ばれた対象者へ自分の階層より上の階層で求められる知識やスキルを先取りして習得させることが目的です。
この2種類の研修を言いかえれば、階層別研修は階層に「なってから」の研修、選抜研修ではその階層に「なる前」に実施する研修ともいえるでしょう。
階級別研修について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:階層別研修とは?具体例と共に分類方法やメリット・デメリットを解説
選抜研修の3つのメリット
あらかじめ対象者を選考する選抜研修には、以下の3つのメリットがあります。
- 経営者候補になる優秀な人材を早く育成できる
- 限られたコスト内で優秀な人材を育成できる
- 社員のモチベーションを高める
次から、具体的な内容について詳しく解説します。
1.経営者候補になる優秀な人材を早く育成できる
経営者候補の育成は、若手社員のうちから始めるのが良いとされています。
理由は、経営者や幹部として実力を発揮できるようになるためには、育成に時間がかかるためです。
また、少しでも早い時期から業務に経営者目線で取り組んでいくことが大切です。
選抜研修によって早い段階から優秀な社員に研修を実施することで、本人にも経営者候補であるという自覚が生まれ、スムーズに育成を進められるのがメリットになります。
2.限られたコスト内で優秀な人材を育成できる
選抜研修は階層別研修と比べて対象者が絞られるため、育成にかかるコストも削減できます。
受講者が多いほど、研修場所の確保や資料作成などが大変です。
しかし対象者が少なければ、このようなコストは少なくて済みます。
育成コストを限られた対象者に注力できるため、より効率的に優秀な人材を育成できるのがメリットです。
3.社員のモチベーションを高める
選抜制度があることで、選ばれれば昇進の可能性が広がるといった業務へのモチベーション向上につながります。
あらかじめ社内の選抜基準を明確にしておくことで、社員の生産性の向上も期待できるでしょう。
選抜研修の3つのデメリット
大きなメリットがある選抜研修には、次のようなデメリットも存在します。
- 研修対象者の負担になりやすい
- 研修の効果がわかりにくい
- 選抜から漏れた社員のフォローが難しい
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1.研修対象者の負担になりやすい
選抜研修に選ばれることは、対象者にとって昇進やキャリアアップのチャンスが得られるというメリットがある一方、業務的にもメンタル的にも負担になる場合があります。
選抜研修は、通常の業務と並行して実施される場合が多くみられます。
対象者が業務の多い部署に配属されている場合、通常業務と合わせて研修を受けるのは負担が大きくなるでしょう。
また、選抜されたことは社内に広く周知されるため、周囲からの期待や羨望の目が気になってしまうケースもあります。
研修対象者には、事前に配属先の上司とよく連携をとって業務内容に配慮したり、人事から面談や相談の場を設けて対象者の不安を軽減するフォロー体制をとることも必要です。
2.研修の効果がわかりにくい
選抜研修の多くは長期にわたる研修であり、学んだことを実際に今の業務に生かしていくというより将来の業務に備えて知識を得るために実施されます。
そのため、研修で学んだ内容をすぐに発揮する機会がない場合もあるでしょう。
長い選抜研修を受講しても、対象者にどのような効果があったのか周囲にはすぐわかりにくいことがデメリットです。
研修後は、学んだ内容を活かせる部署に配属変更する、可能ならば早い段階で昇進させるなどの対処が重要になります。
3.選抜から漏れた社員のフォローが難しい
選抜研修に選ばれるために努力していた社員が選抜されなかった場合、業務や自分の能力に自信が持てなくなったり、モチベーションの低下が考えられます。
選抜されなかったとしても、別のルートから昇進する可能性や別のキャリアアップを選べる未来を示していくことで、フォローしていきましょう。
選抜研修を実施する前に確認するべきこと
次に、選抜研修を実施する前に、運営側で確認しておかなければならないことを解説します。
この確認があいまいになると、研修に費やした時間やコストが無駄になったり、研修がうまく進まなくなる可能性もあるでしょう。
自社における選抜研修の目的の明確化
選抜研修を実施するにあたって、この研修が自社にとってどのような目的をもつのかを明確にしておきましょう。
リーダー候補になる人材のプールなのか、新しい切り口から事業を開拓していく経営者候補の育成なのかなど、目的によって設計する内容は変わってきます。さらに、自社が求める人材がどのような人物なのかについて改めて確認しておきましょう。
選抜研修の最終目標
研修前に、対象者には具体的に何を習得してもらいたいかという最終目標を設定しておくのも重要です。
企業が求める人物像に近づけるために、対象者へ学んでもらいたい内容は多いでしょう。
しかし、すべてを網羅的に学ぶよりも、現在の状況を把握して不足している知識やスキルを身につける方がより効果的に研修をすすめられます。
自社の人材の現状
最後に、現在の選抜研修対象者のスキルや知識の状況を正確に把握しておきます。
ここを正確につかんでおかなければ、せっかく研修を実施しても研修内容と対象者のレベルが合っていなければ意味がありません。
企業が求める理想像と、人材の能力のギャップを埋めていくために研修を実施する考え方で設計すると良いでしょう。
選抜研修の対象者を選ぶポイント
対象者を選ぶ際にも、いくつかポイントがあります。
ポイントを押さえて人選しなければ、研修自体が成り立たなくなる事態にも発展しかねません。
次から解説するポイントを、ぜひ選抜の参考にしてください。
選抜基準を明確にする
社内の選考基準は明確にしておきましょう。
選考基準として、最もわかりやすいのは業績です。
しかし業績の評価だけでなく、自社が求める人材像と照らし合わせて合致する条件も必ず含めておきましょう。
選考基準は、各部署の上司からの推薦としている企業も少なくありません。
ただし、推薦だけでは選考の基準とは言い難いものです。
各部署によって判断基準は変わるため公平性を保ちにくく、選ばれなかった社員のモチベーション低下につながります。
人選は多角的にする
選考する際、業務成績など定量的なデータからの判断だけでなく、仕事への向き合い方やキャリアへの考え方なども合わせて考慮しましょう。
選抜者には、どうしても高い実務能力や豊富な実績のみを求めがちです。
しかし、チーム内での立ち位置や同僚からの評価、意欲などさまざまな目線から判断することが重要です。
特に、現在の業績だけでなく将来のポテンシャルについても見通して人選をしましょう。
本人に意思確認をする
人事や上層部で選抜すれば終わりではなく、必ず本人にも選抜研修を受講する意志を確認しておくことが大切です。
多くの業績を残し、能力的に優秀な人材であっても、経営者候補への興味がないかもしれません。
前述の通り、選抜研修は長期にわたる上受講者の負担も大きくなるため、意思確認をし、本人にその気がなければ選抜対象から外すことも必要です。
選抜研修の効果を高めるポイント
選抜研修の効果を高めるポイントは次の2つです。
- 選抜者へ事前に期待を伝える
- 研修目的を選抜者と共有する
それぞれ、詳しくみていきましょう。
選抜者へ事前に期待を伝える
選抜者には直接、企業側の期待を伝えることでモチベーションの向上につながります。
選抜されたという事実があるため、あえて伝える必要はないと考えられるかもしれません。
しかし、本人が選抜された理由や企業側の選抜研修に期待する想いを伝えることで、より研修に対して真摯に向き合うよう促せるでしょう。
研修目的を選抜者と共有する
研修の目的を、選抜者と事前に共有しておくことも大切です。
研修を進めていくうちに、運営側・選抜者ともに当初の目的を見失ってしまうという事態はよくあります。
なぜ選抜研修を実施するのか、企業が期待している研修のゴールはどこなのかを明確にできていない場合には、選抜者はなぜ研修を受けるのかわからなくなってしまいます。
目的を共有して、ゴールに正しく向かえるように導きましょう。
選抜研修の事例
ここでは、誰もが知る企業で実施されている選抜研修の事例を紹介します。
選抜基準や研修内容には、各企業で独自のスタンスが取り入れられています。
1.日清食品ホールディングス
引用:日清食品ホールディングス
日本の食品業界を牽引する日清食品ホールディングス(以下、日清食品)では、リーダーシップとハングリー精神を備えたリーダーの計画的育成を目指しています。
OJTでは学べない知識の習得のため、企業内大学「NISSIN ACADEMY」を設立しました。
誰でも受講できる公開型プログラムと、次世代リーダー育成を目的とした選抜型プログラムの2部構成です。
選抜研修にあたる選抜型プログラムはさらに次の2種類に分かれます。
- 部門アカデミー
- 経営者アカデミー
このうち経営者アカデミーは、主に管理職層が対象です。
外部のビジネススクールの受講やワークショップの参加によって、経営者としてのスキルやマインドマップを身につけるプログラムになっています。
参考:日清食品グループ「人材育成」「人材戦略」2.日立製作所
引用:日立製作所
日立製作所では、企業内で変革を実践して業績を残している500人うち若手優秀層120人を「Future50」として集中的に育成しています。
限られた時間でリーダーに必要な要件を習得し、ポテンシャルを発揮して成長スピードを高めるという視点からの育成です。
具体的な内容は次のようになります。
- 個々の育成状況に応じてOJTをカスタマイズ(グループ会社社長任命、多職種経験など)
- OFF-JT
- 経営幹部からのメンタリング
- 社外取締役など上層部との議論
参考:株式会社日立製作所「経営戦略に連動した人財戦略の実行(この10年の歩みとこれから)」
3.帝人
帝人では、選抜研修を「コア人財プログラム」として実施しています。引用:帝人
プログラムは大きくストレッチ(STRETCH)とジャンプ(JUMP)の大きく2種類に分かれています。
ストレッチは部長層が対象で役員候補になる1と課長層(次期部長層)の2に分かれている2段階構造です。
ジャンプは主任層が対象であり、日本語枠30名と英語枠20名が選抜されます。
選抜には基本的に各部門の管理者の推薦が必要ですが、人事・選考委員会での選定に加えて外部機関やコンピテンシー測定結果も考慮されるという多角的な選考方法を導入しているのが特徴です。
【参考】
HRpro「経営×人事×タレントマネジメント Vol.1 グループ・グローバル経営を担う次世代リーダーを国内外から選抜・育成」
第6回日経スマートワーク経営調査/結果解説セミナー「帝人の人的資本経営に向けた取り組み」
まとめ:選抜研修で次世代リーダーの育成を
選抜研修は、対象者へ次の階層で求められるスキルや知識を前もって習得させることを目的としています。
選抜研修を効果的に実施するには、選抜基準をはっきりと定め、選抜者へ期待を正しく伝えることが大切です。
また、研修には自社にとっての目標を明確にし、選抜者と共有することも重要です。
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