ITリテラシーとは?DXにおける重要性と身に付ける方法を解説
世界規模で業務のデジタルトランスフォーメーションが進む今、社会人が身に付けておくべき教養としてITリテラシーの重要性が高まっています。
セキュリティの強化や個人情報の保護に有効なことから、社員に対しITリテラシー研修を検討している企業も多いのでは。
とはいえ、ITリテラシーの具体的なメリットがわかりにくいですよね。
そこで今回は、ITリテラシーの概要と重要性、メリットを解説します。
ITリテラシーの向上の具体的な方法も紹介するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね。
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目次
ITリテラシーとは
「リテラシー(literacy)」は日本語に訳すと「特定の分野に関する知識や能力」です。
つまりITリテラシーは、情報、通信、デジタルツール、セキュリティなど、ITに関わる様々な分野に関する知識や能力を指します。
近年では社員のITリテラシーの欠如によるSNSアカウントの炎上など、ニュースで耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省は、労働者の生産性を今後一層向上させていくために、IT業界に限らず、ITを活用する全産業の人材がITリテラシーを持つ重要性があると述べています。
以下では、ITリテラシーの基礎となる3つの要素について紹介していきます。
情報リテラシー(インターネットリテラシー)
情報リテラシーとは、正確な情報を探し、精査し、活用する能力を指します。
簡単に言えば、情報を正しく使うための能力のこと。
情報リテラシーの中でも、インターネット上の情報に関する能力に関しては「インターネットリテラシー」と呼ばれることもあります。
近年になって情報リテラシーが注目された理由は、インターネットの普及により、根拠のないのフェイクニュースやデマが氾濫するようになったことが挙げられます。
2020年のコロナ禍に、SNS上のデマによってトイレットペーパーの買い占め騒動が起きたことは記憶に新しいですよね。
また同年のアメリカ大統領選挙でも、候補者に関するフェイク動画が拡散され、市民が混乱に陥りました。
業務においても、企業の信用を維持し適切な運営をする上で、正確な情報を判断し活用する力は非常に重要です。
コンピュータリテラシー
コンピュータリテラシーとは、パソコンやスマホなどの情報ツールを理解し、操作する能力のこと。
パソコンであればマウスの操作やキーボードの入力方法、スマホであれば各種機能の使い方など、身に付けるべきスキルは多岐にわたります。
またこれ以外にも、WordやExcelなどのソフトフェアの知識もコンピュータリテラシーに含まれます。
WordやExcelなどの知識は業務の効率化に役立つだけでなく、転職活動やキャリアアップなど、人材を評価する場面で重要です。
ネットワークリテラシー
ネットワークリテラシーとは、インターネットやセキュリティーなどを技術的な側面から理解する能力のことを指します。
企業をターゲットとするサイバー攻撃や個人情報の流出などは、企業に多大なダメージを与える危険性があるため、従業員がリスクや対策を十分に理解していることが重要です。
また、近年は従業員がプライベートで利用しているSNSが炎上することで、企業が損害を被るケースもみられ、よりネットワークリテラシーの重要性が注目されています。
インターネットやセキュリティに関する正しい知識を従業員に伝えることで、企業のリスクを回避しましょう。
ITリテラシーの欠如がもたらす危険
インターネットが普及し、生活や仕事の進め方が大きく変わった今、社員のITリテラシーの欠如は企業にとって大きなリスクがあります。
ここからは、IT欠如がもたらす危機をいくつか紹介します。
情報漏洩
顧客や社員の個人情報、企業の機密情報など、インターネットを介した情報漏洩が相次いでいます。
漏洩の原因は、個人情報を含んだメールの誤送信や、ホームページへの誤掲載、またセキュリティが低いコミュニケーションアプリでの仕事の会話などが挙げられます。
2021年には、新型コロナウイルスに感染した個人の氏名などが誤って県のホームページに掲載される事件が起きました。
情報が一度インターネット上に流出してしまうと、第三者によって複製・拡散され、完全に削除することはほぼ不可能です。
さらに個人情報の悪用により、架空請求やクレジットカードの不正利用などの犯罪に顧客が巻き込まれるリスクがあります。
SNSの炎上
SNSを活用したマーケティングが注目される今、TwitterやInstagramなどで企業アカウントを見かけることが多くなりました。
2017年には、ある外資企業がTwitterに投稿したキャンペーン動画が炎上。
ダイバーシティを推進する動画の目的に反し、肌の色が異なるモデルの描写の方法が人種差別的だとして、世界中で拡散され批判が殺到しました。
また、個人のアカウントでも勤め先の機密情報に関する投稿をしたことで炎上し、投稿者の氏名や住所が特定される事件も相次いでいます。
生産性の低下
ITリテラシーが欠如することで、生産性が低下するというデメリットもあります。
企業のIT化は、業務効率を向上させることで、全体的な生産性を高める効果的な手段です。
例えば、経費精算のシステム導入や稟議書類の電子化によって、時間短縮やリソースの圧縮を図る効果があります。
しかし、IT化を導入できたとしても、従業員がシステムを使いこなせずに、生産性が落ちてしまうケースも。
IT化の導入にあたって、事前に従業員のリテラシーを高める研修や、会社全体への事前周知などが重要です。
コミュニケーション不足
ITリテラシーが不足することで、コミュニケーションエラーが発生することがあります。
社内で使用するチャットツールやビデオ会議システムといったツールが使用できず、コミュニケーション不足やコミュニケーションエラーが発生するのです。
本来、ITを駆使することで闊達な社内コミュニケーションが期待できますが、従業員のリテラシーが低いと逆効果になる可能性も。
とくに一部の従業員だけがツールを利用している状況では、コミュニケーションエラーが発生する可能性が高くなります。
従業員の一部の負担が大きくなる
ITリテラシーの習熟度にムラがある状態では、一部の従業員への負担が大きくなることもあります。
ITリテラシーの高い従業員が、ITリテラシーが低い従業員の相談窓口になることで、本来の業務が妨げられることがあるためです。
また、ITリテラシーの低い従業員が、導入されたツールを避けて業務をすることで、本来の作業効率が担保できなくなる可能性もあります。
市場や顧客の情報収集ができない
ITリテラシーが低いことにより、市場や顧客の情報収集が正しく収集できないことも考えられます。
例えば、インターネット上で正しい情報を収集する力がなければ、誤った情報をもとに行動を決定してしまう危険性があるでしょう。
また、CRMなどのシステムを十分に活用できないことで、業績に直接的な影響を与える可能性もあるのです。
直接的に企業全体の利益にも影響するため、ITリテラシーの重要性を従業員が理解しておく必要があります。
ITリテラシーの向上がもたらすメリット
ITリテラシーを身に付けることで、情報漏洩やSNSの炎上を防げるだけでなく、企業にとって様々なメリットがあります。
以下では、ITリテラシーの向上がもたらすメリットを紹介します。
業務の効率化
ITリテラシーを身に付けることで、業務の効率化を期待できます。
例えば、パソコンの操作方法やWord・Excelの知識があるだけで、資料作成にかかる時間が格段に短くなります。
顧客情報の管理などに使う基幹業務システムは、そもそも基本的なオペレーションを知らなければ、せっかく導入しても業務の効率化が困難です。
また、業務に必要な正確な情報がどこで手に入るかを知っているだけで、曖昧な情報に振り回されることも無くなります。
ITリテラシーがどれだけあるかで、業務の効率が大きく変わるのです。
セキュリティの強化
セキュリティの強化とは、個人情報の保管場所を守ることやセキュリティソフトの導入することなどの大掛かりなものだけではありません。
日々の業務に使うメールやコミュニケーションアプリの利用方法を少し工夫するだけでも、大きな事故を防げます。
そのためには、部門に関わらず全ての社員に情報漏洩のリスクを周知し、個人情報を扱う際は特定のプロセスを踏むなど、セキュリティの強化に努めましょう。
企業の信用を維持し、顧客や従業員を守るためにも、最低限のITリテラシーを身に付けることが必要です。
正しい情報の選択
ITリテラシーの中でも特に情報リテラシーが高ければ、インターネット上に大量に存在する情報の中から正しいものだけを選べます。
子ども時代からインターネットを使ってきたデジタルネイティブ世代と呼ばれる若者でも、必ずしも正しい情報の選択ができるとは限りません。
ITリテラシーが欠如した状態で誤った情報を顧客に提供すれば、業務に支障をきたす可能性もあります。
このような事態に備え、新入社員に対して正しい情報の選び方や、業務に関するデータを発表している公的機関のホームページなどを事前に共有しておきましょう。
また社員だけでなく経営者にとっても、正しい情報の選択は適切な事業計画を立てる上で非常に重要です。
デジタルトランスフォーメーションに対するITリテラシーの重要性
デジタルトランスフォーメーションはDXとも呼ばれ、IT技術の発達により生活や業務を豊かにすることを指します。
2018年に経済産業省が、IT技術を活かした経営や社内のITシステム導入を推進する「DXレポート」を発表。
以降、様々な業界に対して政府はデジタルトランスフォーメーション関連の政策を実施し、多くの企業が経営体制を変化させてきました。
デジタルトランスフォーメーションに伴い最注目されているのが、社員のITリテラシーの強化です。
ここでは、ITリテラシーの強化の重要性とデジタルトランスフォーメーションとの関係について解説します。
DXが進まない場合経済損失が生じる
経済産業省が発表したDXによると、デジタルトランスフォーメーション化が進まない場合、「2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性」のことです。
企業規模においても、2025年に以下のような問題が生じることが予想されます。
- 21年以上の基幹系システムが6割に達する
- SAP(国内シェア1の基幹業務システム)のサポート終了
- IT人材不足が約43万人まで拡大
この結果、2030年までに爆発的に増加するデータを活用できない、システムトラブルやデータ滅失・流出などのリスクが高まるなどの可能性があります。
DXに社員のITリテラシー向上が求められている
デジタルトランスフォーメーションを実施するためには、ITリテラシーの向上が不可欠です。
デジタルトランスフォーメーションは、単なるITツールの導入や電子化だけではなく、企業のビジネスモデル自体を変遷させる取り組みです。
例えば、CRMを活用した顧客管理やクラウドを使用した情報管理など、従来の業務とは大きく異なるポイントが発生します。
デジタル化によって従来のワークフローや業務内容が大きく変更となる可能性もあり、ITリテラシーが低い従業員の作業効率が大幅に下がることも。
実際に中小機構のDX推進に関する調査のアンケート結果では、DXに取り組むに当たっての課題に「IT に関わる人材が足りない」と答えた企業が24.9%になったという報告がありました。
(参考:中小機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」)
引用:中小機構「中小企業の DX 推進に関する調査
アンケート調査報告書」
実際の企業でも、IT人材不足は深刻な課題です。
DX推進するためには、ITツールを導入が必要で、どうしても従業員のITリテラシー向上が求められます。
すべての従業員がDXに伴う変更点について、理解できる程度のITリテラシーが必要といえるでしょう。
DX推進のための具体的な組織作りの方法は「デジタルトランスフォーメーションを推進するための組織の作り方」を参考にしてみてください。
ITリテラシーを高める3つの方法
ITリテラシーの概要や必要性を理解したところで、ITリテラシーを高める3つの方法を紹介します。
- ITリテラシー研修の実施
- IT関連の資格取得支援
- Webサイトや書籍で学習
IT部門に限らず、全ての社員のITリテラシーを高めることを意識しましょう。
1.ITリテラシー研修の実施
全社員に対してITリテラシー研修を実施しましょう。
特に新入社員は仕事でインターネットを使った経験がほとんど無く、出身学部や学科によって、身に付けているITリテラシーには差があります。
研修では配属先の業務内容と照らし合わせながら、以下の項目を中心に、業務を効率化する上で必要なスキルを伝えます。
- インターネットの仕組み
- Webサーバーやデータベースサーバーの基礎知識
- WordやExcelなどのソフトフェアの使い方
- 基幹業務システムの使い方
- 情報漏洩のリスク
- SNSの適切な使い方
IT系の部門であれば、基本的なプログラミングの研修をする企業も見られます。
実際に研修をする際は、社内の教育部門で開催するか、外部のITに特化したスクールに委託するなどの方法があります。
IT技術は日々進化するため、定期的に研修をすることが重要です。
2.IT関連の資格取得支援
特定の資格を取得した社員にお祝い金制度を設けるなど、IT関連の資格の取得を支援するとも可能です。
企業にとっては社員のモチベーションを上げることで、自主的に勉強する習慣を付けてもらえる一方、社員にとっては転職やキャリアアップに資格が有利になるメリットがあります。
具体的なIT関連の資格は以下の4つが挙げられます。- ITパスポート試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
- IC3
- P検(ICTプロフィエンシー検定)
より専門的な資格については「デジタルトランスフォーメーション時代に取得したい資格7選」を参考にしてみてください。
ITパスポート試験
ITパスポート試験とは、ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。
ITに関する知識にとどまらず、
- 企業活動
- 経営戦略
- 会計
- 法務
結果発表は得点で出るため、スコア分析などを通じて人材育成に役立てられます。
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験とは、情報セキュリティマネジメントの計画・運用・評価・改善を通して組織の情報セキュリティ確保に貢献し、脅威から継続的に組織を守るための基本的なスキルを認定する試験です。
部門に関わらず、個人情報や機密情報を取り扱う全ての社員にとって必要なスキルが問われます。
IC3
IC3(アイシースリー)は、コンピュータやインターネットに関する基礎知識とスキルを総合的に証明できる国際資格です。
- コンピューティング ファンダメンタルズ
- キー アプリケーションズ
- リビング オンライン
国際資格のため、日本だけでなく海外でも活躍したい人におすすめです。
P検(ICTプロフィエンシー検定)
P検は、全ての「利用者」を対象とした、「総合的なICT活用能力」を問う資格試験です。
情報処理系国家資格の下位的なポジションなので、本格的に国家資格を取りたい人におすすめ。
準2級~4級は、学校の教育課程の基準として定められている「学習指導要領」に幅広く準拠しているため、中学生や高校生も受験可能です。
3.Webサイトや書籍で学習
Webサイトや書籍も、ITリテラシーを身に付けるうえで有効な手段です。
特にIT技術は日々の進化が目まぐるしく、数年前に勉強した知識が既に古くなっていることが多いのが現状。
最新の技術に適応するためにも、常にアップデートされたWebサイトや書籍に触れるようにしましょう。
弊社テクロ株式会社のブログでは、デジタルトランスフォーメーションなどの情報を発信しています。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?成功事例40選とポイント解説」ではデジタルトランスフォーメーションの具体的な解説もしています。
まとめ:ITリテラシーを重要性を理解した上でDXに取り組もう
ITリテラシーの概要と、デジタルトランスフォーメーションに必要な理由を解説しました。
ITリテラシーとは、情報、通信、デジタルツール、セキュリティなど、ITに関わる様々な分野に関する知識や能力のことです。
主に以下の3つの要素によって構成されています。
- 情報リテラシー(インターネットリテラシー)
- コンピュータリテラシー
- ネットワークリテラシー
ITリテラシーが欠如すると、情報漏洩やSNSの炎上などのリスクがあります。
ITリテラシーを身に付けることで、業務の効率化やセキュリティの強化に役立ててくださいね。
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