コロナ禍におけるB2BマーケティングとMAツールのこれから。【インターパーク・高井伸さん】
昨今、コロナウイルスの影響によりさまざまな企業が変化せざるを得ない状況に。
オフラインでのイベントが打撃を受ける中、オンラインでのビジネスのあり方はさらなる進化が必要になってくるでしょう。
今回はB2Bマーケティングに焦点を当て、今後のオンラインにおけるマーケティングノウハウやMAツールについて「クラウドサービスサスケ」を提供している株式会社インターパークの取締役COO・高井伸さんにインタビューをしました。
今回お話を聞いたのはこの方
高井伸(たかい・しん)
北海道帯広市出身。「クラウドサービスサスケ」株式会社インターパーク取締役COO/CMO。
数社の企業顧問や、B2Bマーケティングのコンサルタントとしても活躍する傍ら、元オリンピック選手のスポーツ系オンラインサロンの運営から、SDGsやアートに関する非営利のプロダクト開発も手掛ける。
個人的な活動としてはバドミントンのプレーヤーとして日本一を目指しており、ジャンルを問わず幅広く活動している。
目次
はじめに
ー 現在インターパークさんをはじめとしてさまざまな事業でご活躍されていますが以前はどんなことをされていたんですか?
28歳まではサラリーマンとしてテレビ番組の制作をずっとやっていました。
そのあと初めての起業で、飲食店向けのメディアとして予約のマッチングサイトを展開したのですが、このとき銀行融資や助成金についてなど、資金調達周りの調整も全部自分でやって事業化したのでここで基本的な経営ノウハウを身に付けることができたと思います。
しかしその事業は半年程で1000万円近く無くなってしまったので…事業とメディアは一年持たずに閉じてしまいました。
チームは解散したものの、借金の返済が残っていたので僕自身が出来ることとして事業全体のコンサルティングを始めました
営業代行やマーケティングはもちろんですし、テレビマン時代に培った広報やPRについて、起業時に学んだファイナンスについても複合的にコンサルをしていました。
インターパーク社との取引は2011年頃から付き合いがありまして、最初は外部の役員として関わっていましたが、今から約5年前にインターパーク社ともう一社の合併のタイミングがあって、そこで出資を入れ、取締役とCOOを兼ねて専属的にジョインして今に至ります。
ー インターパークさんはMAツールの会社というイメージが強いですが高井さん自身はエンジニアや開発の経験はなかったのですね。
全く無かったですね。
ずっとビジネスサイドにいて、マーケティング・営業・PR・経営あたりのどこかのうち、会社に求められているポジションをやってきたという感じです。
うちの会社自体、ニアショアのようなシステムになっていまして、本社機能の管理部門や技術部門は本社の札幌に置いて、商圏を東京に絞っているというスタイルです。
僕以外の役員二人は札幌本社にいまして、僕はビジネスサイドで東京の責任者という感じです。
今後のB2Bマーケティングは課題と進化の領域、
乗り遅れないように。
ー 本日のテーマとしてB2BマーケティングとMAツールについてお伺いしたいと思っています!
元々B2BマーケはB2Cマーケに比べて3年程トレンドが遅れており、業界全体でもこれから更に進んでいく領域、という認識があったと思いますが、高井さんは今年から来年にかけてB2Bマーケはどう変わっていくと思いますか?
正直なところ、どんどん進んでいくと思っています。
これまでB2Bマーケで主力だった展示会やセミナーなどのオフラインイベントが、おそらく来年の夏頃までは止まってしまうと思いますが、そうすると主戦場は自ずとオンラインになっていくわけで。
今の時点で残っている選択肢は広告かウェビナーの二つになると思いますし、オンラインのマーケティングのやり方自体が進化していくと思います。
特にウェビナーではこれから3つのパターンが台頭すると思っていて、「ブランディング」のための数百から千人規模のもの、「ナーチャリング」系の百人程のもの、「リードジェネレーション」として即案件化させたい十人程のもの、といった感じです。
現状よくあるのは前半二つの「ブランディング」・「ナーチャリング」系のウェビナーだと思いますが、これからは売っていくためのウェビナーの使い方が課題として挙がってくると思います。
今までオフラインでやっていたような、製品・サービスの紹介、営業、受注獲得というフローをそのままオンラインに反映することは難しいので、必然的に新しいやり方が出てくる気がしています。
この領域は停滞せずにどんどん進化していくと思うので乗り遅れないように、と思っているところです。
ー 現在はコロナの影響で会議や商談はオンラインが主流ですが、コロナが収束するに連れてオンラインを使用する企業の割合が再度減ってしまう気がするのですがどう思われますか?
おそらくこの一年くらいで対面での機会とオンラインの機会の割合は半分ずつくらいになるかなと思います。
とりあえず対面で会う、というのは少なからず減ると思っていて、それよりその時々に抱えている課題の段階によってオフライン・オンラインを分けるべきではあると思います。
例えば最初の商談ではお客様のニーズを喚起しなければいけないのでオンラインだとやり辛いです。なぜならお客様と課題の一致・共有ができていない状態だからです。
教育なんかもそうなんですけど、同じ視座に立っていないもの、同じテーブルに乗っていないもの(課題など)はオンラインで処理するのはコミュニケーション的に厳しいですよね。
そのため、例えば営業の場合、まずは対面で課題の共有をして、案件を進める段階やタスク処理をする段階になったらオンラインに移行していく、という感じで用途や状況に応じた使い分けが出来るのがベストだと思います。
あとはクロージングの場面ですね。ここは営業の最終局面ですのでオンラインの浅いやり取りだと厳しいですよね。クロージングにおいては対面営業が活用されていくだろうと思います。
コミュニケーションも定義をし直す必要があって、対面営業のようなオフラインは深く狭く。Zoomのようなオンライン商談の場合は浅く広く。
各コミュニケーションのメリットとデメリットを理解してセールススキームを設計していく必要があると思っています。
MAツールは何を使うかよりどう使うか
ー 今後、営業がオンライン・オフラインと別れてくると顧客データの管理を共有するためにMAツールを導入する会社が増えてくると思うのですが、MAツールはどういった視点で選ぶべきでしょうか?
今の段階では「展示会ができなくなってしまった」「対面営業ができなくなってしまった」という状況下です。
なのでそもそもマーケティングをどうしていこうか、かなり戻ってマーケティング手法をゼロベースから考え、その上で適したMAツールは何だろうか、という考え方が大事かなと思っています。
私的に言ってしまえば、どのツールを使ってもやりたいことは大方可能だと思いますが、機能性を取るか、操作性を取るかみたいなところはあるので、自身のマーケティングのレベルに合わせて選ぶのが良いと思います。
マーケティング初心者であれば出来るだけ単機能でわかりやすいシステムのもの。そういう意味だとうちの「サスケ」が良いと思いますし、マーケティングを追究している人は「ハブスポット」や」「パードット」を使ったり。
私も最近コンサルティング案件が多いですが、フラットな立場のコンサル側としては導入を考えている方のお悩み相談を聞いて、その方のレベルを把握した上でツール選定、提案をするといいかなと思います。
B2Bのリードジェネレーションは今の大きな課題
ー MAツールは獲得したリードの管理に使うツールではありますが、その前提として重要になってくるB2Bのリードジェネレーションで必要なことはなんでしょうか?
今はリードジェネレーションのやり方が限られていて、短期で結果を出すためにはおそらく広告かウェビナーの二択しかない気がしています。
あとはオウンドメディアからのホワイトペーパーのダウンロードとか攻めのリードはそういったところからも取れる気はしますが…リードジェネレーションは今課題として皆困っているところだと思います。
ー SEO対策を始めたとしても半年〜1年単位の時間がかかりますし、WEB上では薄いリードも拾ってしまうため必ずしも発注を決めたお客様だけがお問い合わせをしてくださるとも限りません。
そんなお問い合わせに対してもしっかりと対応できるようなリードジェネレーションを準備してお客様を温めてなければいけないですし、そういった意味でB2Bのリードジェネレーション、ナーチャリング、営業の関係性は切っても切れない関係ですよね。
そうなんです。肌感覚的なところもありますが、B2B企業のマーケティングの主軸チャネルって今まで8割くらいが展示会だったなぁという印象があります。
しかもそういった企業のほとんどがオンライン施策も試してみたんだけど成果があまり無かったから展示会を活用していた、という消去法で展示会を活用していた気がします。
そんな袋小路のような状態に何か提案できるか?と言われると難しいのですが、現実解としては先ほど話したようなタイプのウェビナーを何回も何回も繰り返してとりあえずリードを集めていく。まずこれをルーティーンにします。
リスティング広告やオーガニックで取得できたリードは、案件化の即効性も期待できますが、それ以外の広告だと、すぐ受注に至らない薄いリードも多いので天野さんのおっしゃったようにお客様を温める、インサイドセールスやナーチャリングの体勢が無いと意味がありません。ただ、その体勢もコロナ時代になって急遽作れるというわけでも無いですしね。
ロードマップをひいて少しずつ体制を構築していくしかありません。
また、コロナの影響が大きかった業界にとっては今年の一月に抱えていた課題と今抱えている課題は全く違います。だからこそもう一度今の課題を取り出してリサーチし直すことも必要だと思います。
そうなるとマーケティングも営業のやり方も変わるので、その点、相談役としてのB2Bマーケティング周りのコンサルティングの需要は増えていくと思っています。
コンテンツマーケの王様が「動画」の時代に
ー 先ほど少しお話に出たコンテンツマーケティングについてです。
コンテンツマーケ=SEOメディアとは限らず、SEOやブランディングなどのコンテンツを詰め込んでリードの全段階に対応できるよう用意したサイトに、何度も来てもらってお問い合わせをしてもらう。
そういった使い方を含めてB2Bにおけるコンテンツマーケというのはコロナ時代を生き抜くための一つの方向性だと思っているのですが、どうでしょう?
コンテンツマーケですと、ここから少なくとも一年くらいは動画が一番強いでしょうね。
利用用途が一番効率的で、動画を一つ作っておけば営業でもマーケティングでもコンテンツとしても使えますし場合によってはCS(カスタマーサービス)でも使えるので、動画が王様かな…と感じます。
あと、やはりコンテンツを量産できる会社は強いですよね。
IT系以外のB2B企業でオウンドメディアを運営できているところはほとんど無いので、そういった企業のオウンドメディアを作るニーズは高まりそうかなと思います。
しかし僕自身IT系の記事だとよく読みますが、例えばネジを作ってる会社の記事を読むかと言ったら読まないですし、他の製造業とかはなんとも言えないところですかね。オウンドメディアとの相性がいいのか正直分からないです…。
オウンドメディアまでいくと話は別ですが、製品説明用の動画だけでも何パターンかつくっておけば色々使えるので、動画活用はこれからの営業やマーケティングの肝になってくるのは確実だと思います。
今後のMAツールは情報管理能力で差がつく
ー 話が少し戻りますが、B2Bマーケではいろいろなリードジェネレーションからの情報が全てMAツールに集約されていくわけじゃないですか。それを踏まえて今後MAツール自体はどう進化していくべきだと思いますか?
変化の面で言うと、MAツールは2016年頃から本質的な変化はあまり無かったと感じますし、直近での大幅なアップデートは想像し辛いです。
あとはGDPR(EU一般データ保護規則)の流れもきっと日本に入ってくるでしょうし、そうなればCookieやWEBの扱いも変わっていくでしょう。
そういったことも含めてMAツール自体の進化というよりも、データの取り扱い方で差が出てくるのでは無いでしょうか。
言ってしまえばツールの性能自体はどこもそれほど変わらないので、データ取り扱いのリテラシー、スキルのあるところが勝っていくと思います。
「データをどう格納するか?」というリテラシーと同時に「データをどう使いたいか?」「データを使ってマーケティングで何をしたいか?」という使い手側のレベルも求められてくるようになるとは思っています。
あとはUI/UX面や他ツールとの連携等も差がついてくるポイントになるかもしれません。
最後に
ー 今回、MAツールからB2Bマーケティングまでたくさんお話を聞かせていただきました。B2Bマーケティングの本質自体は簡単に風化するものではなく今後はセオリーの応用も期待される領域ですし、MAツールもようやく導入が始まったところでまだまだ発展の余地がある世界だと感じました。
そうですね。変な話、もし緊急事態宣言の期間があと半年あったらオンライン移行の流れは加速してマーケティング領域もさらに進化していたのでは、とも思いますが、実際には現在オフラインが復活しつつあるのでそこのスピードは落ちていくのかな、と思います。
ただ、リードを獲得するための展示会はしばらく無いでしょうし、ゆっくりであっても代替案としてのマーケティング施策が次々登場して、B2Bマーケティングも着実に進化していくタイミングだと思っています。
ー 高井さん、本日はありがとうございました!
高井伸(たかい・しん)
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