デジタルトランスフォーメーションにAIが必要な理由は?得意な仕事や事例と併せて解説!
さまざま分野で導入が進んでいるAIですが、デジタルトランスフォーメーションにおいてもAIが活用されるケースが増えています。
DXの導入を検討している方の中には、AIの活用も視野に入れている方も多いでしょう。
一方で、 デジタルトランスフォーメーションを推進できる人材は不足しており、「DXにAIは本当に必要なのか?」「AIをどのように活用すればよいのか分からない」企業も多いです。
本記事では、デジタルトランスフォーメーションにAIが必要な理由や具体的な活用事例を紹介します。
AIを活用したデジタルトランスフォーメーションを検討している方は、ぜひご覧ください。
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目次
デジタルトランスフォーメーションとは?
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を使いビジネスの変革して、市場での競争力を高めることです。
もともとは、スイス人のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、日本では経済産業省の「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」をきっかけに注目されました。
デジタルトランスフォーメーションは、単に業務のデジタル化を指すわけではありません。
業務のデジタル化は、デジタイゼーションと呼ばれ、DXはビジネスモデルの変革も含む広範な概念です。
DXレポートでは、デジタルトランスフォーメーションが進まなかった場合、2025年に最大12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘しています。
将来的な競争力を獲得するためには、DXが不可欠と考えられています。
デジタルトランスフォーメーションについてさらに詳しく知りたい方は「デジタルトランスフォーメーションとは?注目される理由を徹底解説」を御覧ください。
AIとは?
AIはArtificial Intelligenceの略で、人工知能を指す言葉です。
AIはコンピューターに、推論や問題解決、言語処理などの知的行為を実行させる技術で、特化型AIと汎用型AIに分類されます。
特化型AIとは、特定の作業や処理に特化したAIで、実用化されている人工知能はすべて特化型です。
一方の汎用型AIは、人間のようにさまざま作業をこなせるAIを指します。
研究が進められている汎用型AIですが、現在のところ実用化には至っていません。
AIの歴史
AIは50年代から研究されており、今までに3度のAIブームが起こっています。
以下では、その歴史について詳しく解説します。
第1次AIブーム 1950~1960年代
コンピューターによる推論と検索を実現。
ゲームなどの明確なルールが存在する条件下で、答えを導き出せるようになりました。
しかし、複数の要因が絡み合う問題には対応できなかったため、ブームは終息しています。
第2次AIブーム 1980~1990年代
エキスパートシステムの誕生。
if文のように「AならばBを実行し、A以外ならばCを実行」といった条件分岐処理の組み合わせによって、知識表現ができるようになりました。
第2次AIブームで開発されたAIは、条件を追加するほど処理の精度が向上するものの、人の手で条件を設定しなければなりません。
AI自身が学習するわけではないため、精度を向上させるには限界がありました。
第3次AIブーム 2000年代~現在
第3次AIブームでは、AIが自律的に大量のデータから学習し、効率的な仕組みやアルゴリズムを構築する機械学習が発展しています。
機械学習によって学習が自動化されたため、今までにない速度で知識の習得が可能になりました。
さらに、ディープラーニング(深層学習)の登場により、予測・推論の精度も向上。
ディープラーニングでは、人間の脳細胞ネットワークを模倣したニューラルネットワークモデルが用いられています。
現在、第3次AIブームが続いています。
機械学習自体は50年代から研究されていましたが、コンピューターの性能が不足していたため、当時は実用化できませんでした。
2000年以降、コンピューターの性能が向上したことで、言語や画像処理など高度な動きが可能になりました。
デジタルトランスフォーメーションにAIが必要とされる理由
デジタルトランスフォーメーションにAIが必要とされている理由は、以下の2つです。
- 多くの情報の処理を自動化できる
- 業務効率化や人材不足の解消につながる
DX後はデータでの管理・情報共有が当たり前になるため、大量のデータを短時間で処理しなければなりません。
大量のデータを人の手でチェックするには限界があり、その手助けにAIは欠かせない存在となるでしょう。
またAIは言語処理や画像解析の技術を用いて、業務を人の代わりに遂行できます。
務効率化と人材不足にも役立ち、新規事業の開拓なども将来的にできます。
DX化が必要とされている今、AIの活用は欠かせません。
デジタルトランスフォーメーションでAIができること
AIは、ルーチンワークや大量のデータの処理、比較などが得意です。
ここからは、具体的にAIができることを紹介しましょう。
言語処理
言語処理とは、人の言葉を認識する処理です。
人が話していることや文章に書かれている内容を理解する技術で、外国語の翻訳や文章の要約への活用が期待されています。
また言語処理を応用したAIによる、文章の自動作成の研究も進められているのです。
現在多くの企業がカスタマーサポートの内容を録音してサポート品質の向上にAIを使っています。
言語処理の機能を活用すればより高度な分析ができ、効率化も実現するでしょう。
単純作業
単純作業もAIが得意とする処理のひとつです。
単純な計算はもちろんのこと、複数のデータを比較して共通点を見つける作業も、人よりも正確で高速に実行できます。
AIの普及によって単純作業が不要になれば、一部の人間の仕事が奪われるとも言われていますが、慢性的な人材不足に悩む業界にとってAIの導入は欠かせません。
例えば、2017年に埼玉県でおこなわれた実証実験では、AIを活用して保育園の入所割り当て業務を効率化しています。
従業員総出で一週間近くかかる作業を数秒で終わらせた結果からも、単純作業の効率化にはAIの活用が必要不可欠だと言えるでしょう。
画像処理
画像処理は、画像や映像に表示されている物や人、言葉を認識する処理です。
スマートフォンの顔認証などに、活用されています。
そのほか、小売業ではマーケティングデータへの活用も実施されています。
店内にネットワークカメラを配置して、顧客の行動をデータ化し、商品レイアウトをニーズに合ったものに変更するものです。
画像処理の技術は農業での活用も進んでおり、AIを搭載したドローンに画像処理技術を搭載。
害虫による被害が確認できる部分を把握し、農薬の量の調整する形で活用されているケースもあります。
音声処理
AIによる音声処理とは、人が発した音声を認識する技術です。
音声処理では、入力された音声データをAIで扱いやすい形式に変換した後、過去に学習したパターンと照合して単語を認識。
さらに、過去のデータをもとに単語同士の繋がりを予測して、文章を認識しています。
すでに多くの製品に導入されており、スマートフォンやスマートスピーカーなどに活用されています。
iOSのSiriやAmazonのAlexaなどが有名です。
音声処理機能の活用は医療業界でも進んでおり、キーボードで入力しなくても音声を認識して自動で入力してくれるシステムも導入されています。
デジタル機器が苦手で敬遠している医師でもカルテの入力がスムーズに実施でき、報告書の作成にも活用されています。
推論
推論は過去の学習にもとづいて、新しい答えを推測する処理です。
Googleが開発した解像度の低い画像を高画質化する技術では、AIによる推論が用いられています。
学習した内容をもとに、AIが不足しているピクセルを補って高画質化を実現。
画像分析への活用が期待されています。
そのほか、自然環境の変化や需要予測など、将来の予測に活用されているケースも増えています。
推論は医療の現場でも活用が可能です。
問診の内容や診断結果からどのような病気が考えられるかの予測や病気の原因の特定できるようになり、医療従事者の意思決定をサポートしてくれます。
機械制御
プログラムによる機械制御は、すでに多くの分野で取り入れられています。
従来の機械制御では、あらかじめプログラムされたことしかできませんでした。
今までと異なるのは、収集したデータをもとに、AIが制御を最適化する点です。
この技術の活用によって大きな成果が期待できるのが製造業で、工場の製造ラインでの不良品の検出やロボット制御への活用ができます。
デジタルトランスフォーメーションにおいてAIができないこと
デジタルトランスフォーメーションへの活用が期待されているAIですが、苦手な作業も存在します。
ここからは、AIができないことを紹介します。
人の感情を理解する
AIは、人の感情を理解できません。
今、実用化されているAIは、機械学習をベースにしています。
そのため、データが存在しない処理は苦手です。
AIはカウンセリングなどの人の感情を汲み取る必要がある業務には向いていません。
創造的な作業
創造的な作業もAIは苦手です。
機械学習ベースのAIは過去のデータにもとづいて、統計的に最適と考えられる答えを導き出しています。
そのため、学習に用いたデータに存在しないものを作り出すことはできません。
現在のAIでは、前例のない創造的な作業は難しいです。
デジタルトランスフォーメーションにおけるAIの活用事例5つ
ここからは、AIがデジタルトランスフォーメーションにどのように活用されているのかを紹介しましょう。
メルカリ
フリマアプリで知られるメルカリでは、AIによる画像処理が活用されています。
出品する商品の写真に写っているものを認識して、商品名やメーカーの候補を自動的に表示してくれます。
上記の機能によってユーザーが、商品名を入力する手間を省略。
サービスの利便性を向上させています。
【参考】AINOW「【AI事例24選】産業別にAIの活用事例をまとめました」
USAA
USAAは、米軍関係者に金融サービスを提供するアメリカの企業です。
同社では、Clinc社製のAIを活用した音声チャットボットを導入しています。
音声チャットボット自体は珍しくありませんが、USAAでは顧客情報と連携させて、ユーザーの置かれている状況を考慮。
それぞれに適したサービスの提案を実現しています。
【参考】ITmedia NEWS「AIがデジタルトランスフォーメーションの起爆剤に? “ミニDX”から始める企業変革:よくわかる人工知能の基礎知識」
株式会社オーシャンアイズ
オーシャンアイズでは、自治体や水産試験場、漁業関係機関向けにAIを活用した海洋環境予測システム「SEAoME」を提供。
SEAoMEは、特定の海域の海面高度や水温、塩分濃度など、漁業に影響を与える環境の変化を予測するシステムです。
最大14日先の海洋環境の予測が可能で、赤潮などによる被害防止に活用されています。
【参考】AINOW「【AI事例24選】産業別にAIの活用事例をまとめました」
スシロー
回転寿司チェーンのスシローでは、店舗の需要予測にAIを活用しています。
もともとスシローでは、データの分析にExcelを用いていましたが、データの量が膨大になったためAIを導入。
高い精度で店舗の混み具合を予測できるようになり、食材の廃棄量を削減しています。
【参考】AINOW「【AI事例24選】産業別にAIの活用事例をまとめました」
ソフトバンク
自社でおこなっている事業やそれぞれの業務にAIを積極的に活用しているソフトバンク。
ソフトバンクは自社の採用活動にもAIを活用しており、自然言語認識機能によるエントリーシートの評価によって採用担当者の負担の大幅な軽減に成功しています。
さらにマッチング率の向上においても、大きな成果をあげています。
【参考】ソフトバンク「「AI採用」は就活戦線をどう変える ソフトバンクの新たな挑戦」
DXでAIを導入する際の注意点4つ
実際にDXにAIを導入する場合、いくつか注意しなくてはいけないポイントがあります。
ここでは、代表的な4つの注意点について解説していきます。
1.具体的な目標を設定する
DXへの取り組みやAIの導入を成功させるには、目標の具体化が必要です。
目標が具体的になっていないとやるべきことがハッキリしません。
また明確なイメージの共有ができず、現場を混乱させることにつながります。
ゴールを見失わないためにもなぜDXに取り組むのか、AIを活用しなくてはいけないのかを明確にしましょう。
2.データの品質を高める
DXにAIを活用する場合、AIが判断を下すための資料となるデータの品質にも注意しなくてはいけません。
なぜなら、偏りのある品質の低いデータを活用してしまうと、AIの判断にも偏見が入って差別を助長する可能性があるからです。
また、警察署で導入したAIに使用したデータの質が低いことで、冤罪につながったケースもあります。
業種によっては差別や冤罪などは、起こりにくいかもしれません。
しかし上記の事例に似た事故は、起こる可能性があるためデータの品質を高めましょう。
3.AI人材を確保する
DXにAIを導入するのであれば、AIに長けた人材の確保が必要不可欠です。
具体的な人材は、
- AIを具体化させてくれるデータサイエンティスト
- ビジネスへの活用法を示してくれるコンサルタント
- AIの可能性を広げてくれる研究者
などがあげられます。
人材を確保できないと取り組みを具体的に進られないため、AI導入前から力を入れるようにしましょう。
4.セキュリティ対策は万全にする
DXへのAIの導入を検討しているのであれば、セキュリティ対策は常に万全な状態にしておかなくてはいけません。
世界を代表するIT企業のFacebookは、ソフトウェアの欠陥によって個人情報の流出の危機にさらされてしまいました。
個人情報の流出は企業のイメージダウンを引き起こすだけでなく、サービスや企業の存続にも影響をあたえかねません。
個人情報の取り扱いには慎重になり、承諾を得るなどの配慮が必要です。
まとめ:AIがデジタルトランスフォーメーションを加速させる
今回は、なぜデジタルトランスフォーメーションにAIが必要なのかについて解説しました。
AIは処理の自動化をサポートし、業務の効率化や人材不足の解消を実現してくれます。
事例も参考にしながら、AI導入を検討してみてください。
しかし、IT技術に精通した人材が在籍していない場合、自社のどの業務にAIを活用できるか判断のは難しいでしょう。
DXを推進できる人材は不足しており、デジタルトランスフォーメーションの導入に二の足を踏んでいる状態の企業も多いです。
現在、弊社・テクロ株式会社より「DX解説本」を無料配布中です。
ぜひご活用ください。