医療の業界が抱える3つの課題とデジタルトランスフォーメーションの活用法
デジタル技術をビジネスに導入して大規模な業務効率化やサービスの向上などの実施によってビジネスの変革を図る、DX(デジタルトランスフォーメーション)。
少し前から活発になってきているこのデジタルトランスフォーメーションへの取り組みは、業界を問わず企業が取り組むべき施策の一つです。
もちろん医療の現場も例外ではありません。
そこでこの記事では、医療の業界が抱える課題と、その課題を解決する可能性を秘めているデジタルトランスフォーメーションをどのように活用していくべきかについて紹介していきます。
デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを進めていきたいと考えている医療の関係者は、ぜひ参考にしてみてください。
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医療の業界が抱える3つの課題
医療の業界はさまざまな課題を抱えていますが、その中でもとりわけ深刻だと言えるのが、
- 医療の現場で働く人の負担を軽減
- 逼迫している体制の解消
- 医療の現場で働く人の待遇を改善
の3つです。
それぞれどのような課題なのかについてみていきましょう。
課題1. 医療の現場で働く人の負担を軽減
日本の高齢化により、医療の現場で働く人の負担がかなり大きくなることが考えられます。
政府の統計によると、日本の総人口は約1億3,000万人ほどとなっていますが、実にその27%以上を65歳以上の高齢者が占めています。
そしてその流れは今後も加速し、2025年には総人口の30%が高齢者になると言われています。
高齢化によって需要が高まるのが、医療です。
高齢になると体のいたるところに不調が出てきてしまうため、どうしても医療の力が必要になります。
ただ、その一方で労働力となる世代の人口は減り続け、医療に従事する人の割合も減り続けてしまっています。
その結果、医療の現場で働く人一人あたりが対応する業務量が増え、負担が大きくなってしまっているわけです。
医療の現場はただでさえ激務と言われる業界ですが、今後はさらに一人あたりの負担が増加すると予想されています。
そうなると医療の現場を目指す若者も減ってしまい、さらに人材不足になってしまう可能性があるため、医療の現場で働く人の負担を軽減することは医療の業界における重要な課題と言われているわけです。
課題2. 逼迫している体制の解消
医療の業界の中でも特に地方が抱えているのが、「逼迫している体制の解消」といった課題です。
東京や大阪と言った大都市は、さまざまな分野の病院がありますし、病院の数も地方とは比べ物にならないほど充実しています。
地方の場合だと、専門的な分野の治療をおこなっている病院がその地方に一つしかなかったり、アクセスが悪くなってしまったりしてしまいます。
そうなると、「本来救えるはずだった命が救えない」といった悲劇を招いてしまいかねません。
そのような最悪な事態を解消するためにも、医療の体制をより充実させたり業務の効率化を図ったりするなどして、逼迫している体制の解消を進めていく必要があるわけです。
課題3. 医療の現場で働く人の待遇を改善
医療の現場で働く人への待遇の改善をすることも現場が抱える大きな課題の一つです。
看護師は昔から給与が高いことで知られている職業で、女性の全職種の平均年収より100万円以上も高い収入を得ているデータもあります。
ただ、看護師の業務に見合う年収かと言われると決してそうではありません。
看護師が働く病院は命を扱う現場で、一瞬たりとも気が抜けません。
また、看護師は基本的に日勤と夜勤のシフトで働くことになるため、生活のリズムも不安定になってしまいがちです。
そういった中で患者さんにキツくあたられてしまうこともあるわけですから、給与の高さのわりに離職率が高いのもうなずけます。
また、女性の全職種の平均年収がここ数年で24万円もアップしているのに対し、看護師の年収は6万円ほどしかアップしていません。
このままではさらに離職率が高くなってしまうことが予想されるため、看護師などの医療の現場で働く人の待遇を改善することが大きな課題となっています。
医療の業界におけるデジタルトランスフォーメーションの活用法
深刻な課題をいくつも抱えてしまっている医療の業界ですが、その課題を解決する糸口になると期待されているのがデジタルトランスフォーメーションの活用です。
ここからは、医療の現場におけるデジタルトランスフォーメーションの5つの代表的な活用方法について解説していきます。
活用法1. AIの導入
いま世界中の医療の現場でトレンドとなっているデジタルトランスフォーメーションの活用法の一つがAIの導入で、医療現場で働く人の
- 負担を軽減
- 待遇を改善
を実現するデジタル技術として注目されています。
AIは人工知能のことで、デジタルトランスフォーメーションでの取り組みでAIの導入を推進する企業は非常に多く、医療の業界も例外ではありません。
例えば、導入したAIが医師のサポートをおこなってくれることで看護師の負担が大幅に軽減されるようになりますし、患者の優先順位の決定や調査をおこなってくれることで従事者の業務量が大幅に軽減されます。
AIの導入はコストの削減にもつながるため、課題の一つである「医療の現場で働く人の待遇を改善」についても実現できるようになるでしょう。
また、AIの導入によって患者のスケジュール管理のサポートまでおこなっている例もあります。
AIが患者のスケジュールを把握して、仮に診療スケジュールに遅れが生じてしまうようであれば、その情報を自動的に患者に通知してくれます。
これにより、不満やクレームが減少するのと同時に、待合室の混雑によって病気の感染が拡大する被害を抑制できます。
活用法2. オンライン診療
医療が抱える課題の一つであげた「逼迫している体制の解消」を実現してくれる可能性を秘めているのが、この「オンライン診療」です。
オンライン診療は、注目を集めている診療スタイルで、ビデオ通話を通して診療をおこないます。
オンライン診療は、わざわざ病院まで足を運ぶ必要がないため、地方のような病院が少ない地域でも気軽に病院を受診できるようになるメリットがあります。
遠出が難しい高齢者や障害者、交通手段がなく受診したくてもできない方にとって非常に大きなメリットの一つです。
また、オンライン診療の導入が進めば、地方から都市部にある病院の受診も可能になります。
もちろんオンライン診療が利用できる段階は限られていますが、気軽に受けられるようになれば、病院の待合室がいっぱいになって病院を受診するべき人が処置を受けられない状況を避けられるはずです。
スイスでは、咳の音によって感染症への感染の有無を判断するタイプのオンライン診療への取り組みも進められています。
活用法3. 予防医療
デジタルトランスフォーメーションは予防医療にも活用できます。
予防医療とは、体調が悪くなったり病気になってから病院を受診するのではなく、普段から体調の変化を意識して健康的な生活を送って病気を未然に防ぐ考え方です。
予防医療の考え方は最近になって提唱されるようになったわけではありませんが、生活習慣や食習慣に気をつけるなど、これまではできることに限界がありました。
しかし、スマートウォッチなどのデジタルデバイスを通して体の変化に関するデータが日常的に取得できるようになったことで、データに基づいた細かな体調の管理が実現できるようになってきています。
また、今後はこれらのデータを医師と共有し、医師が患者の体調をマネジメントできるようにもなります。
活用法4. ネットワーク空間での情報の共有
カルテなどの医療データは年々デジタル化が進んでいますが、それらのデータをネットワーク空間で共有するのも、デジタルトランスフォーメーションの活用法の一つです。
情報をネットワーク空間で共有することで重複した検査や重複した問診を避けることができるようになり、業務の効率化につながります。
患者も何度も同じことを聞かれたり同じ検査をされるのは避けたいため、従事者と患者の両方にメリットのある活用方法だと言えるでしょう。
また、いつでも必要な医療データに瞬時にアクセスできるようになるためより的確な診断がおこなえるようになりますし、スピーディーな診断を実現できるようにもなります。
活用法5. データを使ったBCPの強化
データを使ったBCPの強化も、医療の業界におけるデジタルトランスフォーメーションの活用法の一つです。
BCPとは、自然災害やテロといった不測の事態によって生じる事業への影響を最小限に食い止め、事業を継続させるためにおこなう対策を指す言葉です。
緊急事態が発生した場合、医療の現場の重要性は更に高まるため、医療はその他の業界よりもBCPの強化を推進していかなくてはいけない業界だと言えます。
これまで医療の現場では、事業を継続させる上で重要になってくるデータは現地のみで保存している状態でした。
しかし、クラウドサービスにデータをバックアップできるようになったことで、万が一のときもバックアップデータを参照して事業の継続がおこなえるようになってきています。
まとめ:医療の業界の課題はデジタルトランスフォーメーションで解決できる
医療の業界は高齢化の影響をかなり大きく受けてしまっています。
そのため、抱えている課題もかなり深刻なものだと言えるでしょう。
ただ、それらの課題は、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みで解決できる可能性のあるものばかりです。
デジタルトランスフォーメーションによって業務が効率化されたりサービスが大きく変われば、医療の現場で働く人の負担は軽減できますし、地方の医療の逼迫した状態も解消できます。
また、それらの取り組みでコストが削減されて売上が増えれば、従事者の待遇も改善されるでしょう。
今回紹介してきたような課題を抱えている現場の方は、ぜひデジタルトランスフォーメーションで解決に取り組まれてみてはいかがでしょうか?
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