海外事例に学ぶデジタルトランスフォーメーションを成功させる4つのポイント
経済産業省の「DXレポート」が発表されて以降、デジタルトランスフォーメーションの必要性を認識する企業が増えています。
しかし、デジタルトランスフォーメーションに成功している企業は、ごく一部です。
アメリカや中国をはじめとする海外では、デジタルトランスフォーメーションに力を入れている国も多く、日系企業の将来的な競争力の低下が懸念されています。
日系企業でDXが進まない理由のひとつに、DX人材の不足が挙げられます。
そのため、DXの必要性は認識しているものの、「どのように進めればよいのか分からない」という経営者も多いです。
本記事では、海外の事例を紹介しながら、デジタルトランスフォーメーションを成功させるためのポイントをご紹介します。
DXの始め方が分からず、お困りの方はぜひご覧ください。
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目次
国内のデジタルトランスフォーメーションへの取り組み状況
5,000社を調査対象にした一般社団法人日本能率協会の「日本企業の経営課題2020調査結果 第2弾」によると、「DX導入を検討している」と回答した企業は28.4%でした。
「すでにデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる」と回答した企業は、全体の28.9%に止まっています。
引用:「日本企業の経営課題2020」調査結果 第2弾
規模別にみると、従業員数が3,000人を超える大企業においては、「すでにDXに取り組んでいる」と回答した割合が50%を超えているものの、中小企業では34.9%と低い傾向にあることが示されています。
また、同調査では、デジタルトランスフォーメーション推進の課題に「人材の不足」を挙げる企業が80%を超えていることも明らかにされました。
海外のデジタルトランスフォーメーションの動き
ここからは、海外のデジタルトランスフォーメーションの動きについて解説します。
アメリカ
アメリカは、DX関連の投資がもっとも盛んな国です。
GAFAをはじめとするビッグテック企業の多くが、アメリカに拠点をおいています。
GAFAとは、
- Aamazon
- Apple
とりわけAmazonやGoogleは、現在トレンドになっているクラウド型サービスの開発・運営に欠かせない開発者向けプラットフォームサービスを提供しており、世界のDX市場を牽引しています。
中国
中国もDXに積極的な国のひとつです。
中国におけるデジタル経済の市場規模は、2019年時点で35.8兆元(参考:中国経済四半期概観2020年Q2/Q3 PWC)に達しています。
さまざまな分野でデジタル化が進められており、とりわけモバイル決済や自動運転の研究・開発、小売、医療の分野におけるデジタルトランスフォーメーションに積極的です。
中でもモバイル決済の利用率は86%(参考:世界の消費者意識調査2019 PWC)と世界1位。
中国がDXに積極的に取り組んでいる背景には、2015年に策定された「インターネットプラス政策」があります。
同政策では、農業やエネルギー、人工知能などの11の分野で競争力向上を目指すとしています。
欧州
欧州では、北欧諸国がDXに積極的です。
電子政府やキャッシュレス決済を推進しています。
特にスウェーデンは、国民1人当たりのユニコーン企業数がシリコンバレーに次いで多く、 Skypeなどが有名です。
スウェーデンがユニコーン企業を多く輩出している背景には、イノベーションセンターの存在があります。
イノベーションセンターは、デジタルイノベーションの推進と雇用増加などを目的に設置された機関です。
若手の起業家に出会いの場を提供するとともに、資金調達などのサポートをしています。
東南アジア
ASEAN諸国のインターネット経済の成長は著しく、2015年の320億ドルから2019年には1,000億ドル(参考:世界のデジタル化の加速における新興国との競争を通じた新事業の創出 経済産業省)に拡大しています。
今後も同地域におけるインターネット経済は、成長を続ける見込みです。
ASEAN諸国では、評価額100億ドルを超えるユニコーン企業も生まれつつあり、ライドシェアなどのデジタル技術を活用したサービスが成長しています。
現在の日本には、100億ドル以上のユニコーン企業は存在しないとされており、分野によってはすでに日系企業はASEAN諸国に遅れをとっているとの見方も。
日本政府は「アジアDXプロジェクト」を立ち上げて日本企業の改革を促しています。
海外のデジタルトランスフォーメーションの成功事例
海外のデジタルトランスフォーメーションの成功事例を5つご紹介します。
Netflix
動画のストリーミング配信サービスを提供するNetflixは、DVDレンタルビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションの事例として知られています。
もともと同社では、郵送による定額制のレンタルサービスを提供していましたが、2007年から動画配信サービスを開始。
郵送サービスを主軸としていた時期から、ビッグデータを活用した需要予測に着目し、レコメンデーション機能の開発に取り組んでいました。
精度の高い需要予測によって、DVDレンタルビジネスのモデルに改革に成功し、現在では1億9,000万人のユーザーを獲得しています。
【参考】JETRO「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」
Amazon
Amazonは、デジタルトランスフォーメーションの先駆者として有名です。
「最高の顧客体験の提供」を企業理念としており、現在もユーザーの利便性を向上させ続けています。
同社の「今すぐ買う」ボタンは、DXの成功事例として取りあげられることが多いです。
ECサイトでは購入手続きが煩雑になるほど、ユーザーの離脱が増加する傾向にあります。
今すぐ買うボタンのおかげで、ユーザーは1クリックで注文を確定できるため、離脱を最小限に抑えられます。
【参考記事】マーキャリ「デジタルトランスフォーメーション(DX)のお手本!Amazonが起こすデジタルトランスフォーメーションとは」
Amazonのデジタルトランスフォーメーションについて詳しく知りたい方は「デジタルトランスフォーメーションの先駆者Amazonが成功した4つの理由」もご覧ください。
Domino’s Pizza
宅配ピザチェーンのDomino’s Pizzaは、注文プロセスにIT技術を取り入れて、デジタルトランスフォーメーションを成功させた事例として知られています。
2010年にDX専門のチームを立ち上げ、場所・端末を問わずピザを注文できるプラットフォームの開発に着手。
DXチームは、客単価を上げるよりも顧客の利用頻度を高める方が、売上アップに繋がりやすいと判断し、「Easy Order」と呼ばれる仕組みを導入しました。
Easy Orderは、スマートスピーカーやチャットアプリなどから、簡単な操作でピザを注文できる仕組みです。
注文の手間を省略したことで、売上を増加させることに成功しました。
現在では、ドローンによるピザ宅配サービスの開発にも取り組むテック企業へと変貌しつつあります。
【参考】JETRO「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」
Apple
デジタル製品の開発・販売を手掛けるAppleは、金融サービスも提供しています。
もともと電子決済サービスを提供していた同社ですが、2019年には「Apple Card」を開始し、クレジットカード分野にも参入。
Apple Cardが従来のクレジットカードと異なるのは、カード上に所有者の名前以外、何も記載されていない点です。
一般的なクレジットカードには、カード番号やセキュリティコードが記載されており、不正利用のリスクがあります。
Apple Cardは、クレジットカード業界では当たり前だったカード情報の記載を廃止して、セキュリティ上のリスクを抑えています。
【参考】エムタメ!「デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例 ~日本と海外の事例をそれぞれまとめました!〜」
24 Hours Fitness
アメリカのフィットネスチェーンの24 Hours Fitnessでは、スマートフォンアプリを活用して会員のロイヤリティを高めることに成功しています。
同社の会員の80%は、スタジオクラスやパーソナルトレーナーを利用していません。
そのため、多くの会員とコミュニケーションを十分に取れない状態にありました。
2016年からアプリの提供を開始し、会員ごとにパーソナライズしたトレーニングメニューをアプリ経由で紹介。
アプリ利用者のロイヤリティを向上させることに成功しました。
【参考】エムタメ!「デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例 ~日本と海外の事例をそれぞれまとめました!〜」
海外事例から学ぶデジタルトランスフォーメーションを成功させる4つのポイント
ここからは、デジタルトランスフォーメーションを成功させる4つのポイントをご紹介します。
デジタルトランスフォーメーションの目的を明確にする
デジタルトランスフォーメーションを成功させるには目的を明確にして、社内で認識を共有しておかなければなりません。
DXでは、業務の見直しやビジネスモデルの改革が求められます。
社内でデジタルトランスフォーメーションの必要性を共有できていなければ、理解を得られない可能性も。
事業計画にDXを盛り込むなどして、会社の方針を明確にしておきましょう。
全体の最適化
現在、国内の企業で使用されている基幹システムの多くは、個別に最適化されており、収集したデータを十分に活用できないと言われています。
デジタルトランスフォーメーションの成功には、全体に最適化されたシステムが不可欠です。
新しいシステムの導入に際しては、開発をベンダーに丸投げするのではなく、自社が主導する必要があります。
また、IT技術と自社の業務の両方に精通した人材の確保・育成も必須です。
デジタルトランスフォーメーション人材について詳しく知りたい方は、「デジタルトランスフォーメーション人材に必要な7つのスキルと育成方法」を御覧ください。
強力なリーダーシップ
デジタルトランスフォーメーションの成功には、経営トップの強力なリーダーシップが不可欠です。
DXでは広範な改革が必要なため、社員だけでは頓挫してしまうことも珍しくありません。
また、デジタルトランスフォーメーションを推進する過程で、社内で衝突が起こる可能性もあります。
そのため、経営陣が主導してデジタルトランスフォーメーションを進めることが重要です。
定期的なDX戦略の見直し
デジタル技術によってもたらされる変化は非常に速いため、DXを導入した当初の戦略では変化に対応できなくなるケースも多いです。
デジタルトランスフォーメーションに成功している企業の多くは、月に1回のペースで自社のDXへの取り組みを見直しているとされています。
うまく推進していくには、定期的に自社の戦略を見直して、軌道修正しなければなりません。
柔軟な実施体制
デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、柔軟な体制を整えておく必要があります。
デジタル技術の導入による変化に対応できなければ、DXに失敗してしまう恐れも。
デジタルトランスフォーメーションに成功している企業の多くは、柔軟にDXに取り組める体制を整えています。
部門ごとの協力や新しい取り組みを支援する仕組みを構築しておくことが大切です。
まとめ:デジタルトランスフォーメーション成功のカギは経営トップのリーダーシップにあり!
デジタルトランスフォーメーションの海外事例や成功させるポイントについて解説しました。
DXによって、まったく予想していなかった分野から競合が参入し、既存のビジネスモデルを破壊する事例も増えてきました。
デジタルトランスフォーメーションでは、企業方針やビジネスモデル、業務など、社内のあらゆるレイヤーで改革が求められます。
DXを成功させるには相応の時間が掛かるため、早めに取り組んだ方が良いでしょう。
しかし、「DXを推進できる人材がいない」「進め方が分からない」などの課題を抱えている企業も多いです。
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