デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進における課題と進め方
経済産業省がレポートを作成して公開するなど、国が推進をうながしているデジタルトランスフォーメーション、通称「DX」。
実際、業界を問わず数多くの企業が実施に向けた取り組みを進めているため、「我社でも…」と考えている企業も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、デジタルトランスフォーメーションの推進に取り組む際の進め方について紹介していきます。
経済産業省から出ているガイドラインやレポートの内容を参照しつつ、DXを進める上での課題などに触れながら紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
デジタルトランスフォーメーションとは?
デジタルトランスフォーメーションは、新しいデジタル技術によってビジネスの変革を図る取り組みを指す言葉です。
IT化と混同されてしまいがちですが、単なるIT化はではありません。
例えば、出版業界の場合だと、
- 電子書籍の仕組み
- 電子書籍が読める端末
- 電子書籍が販売、購入できるプラットフォーム
が登場し、業界やビジネスの形が変化しています。
戦後の日本を支えてきた製造業界でも、
- 製造ラインや倉庫へのロボットの導入
- 製造した製品と製品を活用したサービスの連動
- データ分析による業務効率化
など、これまでにない取り組みが進められています。
冒頭でも紹介したとおり、DXへの取り組みは経済や産業に関する行政機関である経済産業省が推奨している取り組みです。
実際、推進に向けたガイドラインを策定し、公表しています。
そのため、企業が優先して取り組むべき取り組みだと言えるでしょう。
デジタルトランスフォーメーションを推進するメリット
デジタルトランスフォーメーションの主なメリットは、
- 業務の効率化による生産性の向上
- 人手不足の解消
- ヒューマンエラーの抑制
- レガシーシステムのリスク回避
- 新たなビジネスの展開
などがあげられます。
ロボットやAIなどの最新技術を導入した場合、これまで人間が手作業でおこなっていた業務や単純作業を任せられるようになります。
また、日々の業務に関するデータを取って無駄な部分を削ぎ落としていけば、効率化にもつながります。
最近は、高齢化社会が急速に進み人手不足が懸念されていますが、推進することで解消され、ヒューマンエラーの発生も大幅に減らせます。
ダブルチェックやトリプルチェックなど、チェック作業に人手や時間を割かれてしまっている企業にとってメリットです。
既存の古いシステムであるレガシーシステムを使い続けていると、
- 運用やメンテナンスに多額の費用がかかる
- 使いづらいため生産性が上がらない
- 特殊な構造になり扱える人が少なくなっていく
などのリスクが生じますが、新しいシステムが導入されれば、これらのリスクも回避できるでしょう。
さらに、これまで実現できなかった新たなビジネスを展開できるようになる可能性が高まるのも、大きなメリットの一つです。
企業がデジタルトランスフォーメーション推進する上での現状と課題
日本は「DX後進国」と言われるほど取り組みが遅れている国の一つです。
それは、取り組む上でさまざまな課題を抱えてしまっているからに他なりません。
経済産業省が公表しているレポート「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」の内容を参照しながら、日本におけるDXの現状と、乗り越えなければならない課題について解説していきます。
1. 経営戦略における現状と課題
デジタルトランスフォーメーションを進めるには経営戦略が必要不可欠です。
しかし、具体的な方向性を決めることができず、経営戦略を模索している段階の企業がほとんどなのが現状です。
これは、
- 企業の経営戦略を決める経営陣のDXへの理解が進んでいない
- 経営陣がDXを正しく理解していない
からでもありますが、このような状況だと、
「AIを今のビジネスに応用できないか?」
「AIを使って何か新しいことができないか?」
のようにあいまいな指示が出されれるにとどまり、ビジネスの改革につなげる・役立てることができません。
2.既存システムの現状と課題
日本の企業の多くは、現在取り入れている既存のシステムにも問題を抱えています。
既存のITシステムが、
- 技術面での老朽化
- システムの肥大化
- システムの複雑化
- ブラックボックス化
などの問題を抱えてしまっている企業が多く、その割合は全体の8割にものぼります。
そのうちの7割の企業が、「老朽化した古いシステムが足かせとなっている」と答えているため、現在のシステムの見直しや改善も急務でしょう。
3. ユーザー企業における経営層や各部門、人材などの課題
ベンダー企業にシステムの開発を依頼するユーザー企業もさまざまな課題を抱えています。
デジタルトランスフォーメーションの重要性を肌で感じていながらもシステムを刷新する判断を下せる経営層は少なく、改修して使い続けようと考える割合が多いため、DXを進めにくくなっています。
また、付き合いを重視してベンダー企業を選ぶ傾向にある点も、ユーザー企業が抱える代表的な課題の一つと言えるでしょう。
DXを推進する上で大きな役割を担う事業部門と情報システム部門。
しかし、事業部門が仕様の決定や受け入れテストを実施するなどのオーナーシップを持てていないケースは少なくありませんし、事業部門と情報システム部門がうまく連携できていないケースもあります。
この場合、事業部門が満足できるものとは程遠いシステムが納品されてしまいやすいため、注意が必要です。
ユーザー企業側にシステムの開発をおこなえる人材や老朽化したシステムの運用ができる人材が不足している点も大きな課題です。
4. ユーザー企業とベンダー企業との関係
ユーザー企業とベンダー企業の関係性についても課題が山積しているケースが見受けられます。
システムの開発をベンダー企業へ丸投げし、責任のあり方や所在が明確化されていないのも問題です。
開発の内容をベンダー企業側に任せっきりになっている今の状態では、ビジネスの変革につながるシステムはできあがりません。
最低でも、要件定義をおこなった上でベンダー企業側に開発を依頼する必要があります。
また、責任の所在が明確になっていないと損害賠償請求の訴訟などのトラブルに発展し、多くの費用と時間を割いてしまいかねません。
明確にした上で契約をおこなう必要があります。
5. 情報サービス産業の抱える課題
日本の情報サービス産業は、
- ベンダー側がリスクを請け負う契約になっている
- ユーザー企業側よりもベンダー企業側がIT人材を積極的に確保している
など、他の国とは異なる特徴があり、課題を抱えています。
情報サービス産業が抱える主な課題は、
- 既存システムの残存リスク
- 技術者の不足
- 技術者の不足による既存の技術者のスキルシフトの必要性
- これまでのビジネスモデルからの脱却と転換
などがあげられます。
特に、日本のIT技術者の不足は情報サービス産業の構造的な問題によって生み出された課題でもあるため、短期間での解決は難しいのが現状です。
そのため、既存の技術者のスキルシフトが求められています。
6. 2025年の崖
これまで紹介してきたさまざまな課題によってデジタルトランスフォーメーションの推進が遅れてしまった場合、2025年以降、最大で年間12兆円もの経済損失が生じると言われています。
これがいわゆる「2025年の崖」です。
レガシーシステムからの脱却が遅れ、
- データの活用が上手くおこなえない
- レガシーシステムの維持管理費の高騰
- 保守や運用を担当する技術者の不足によるリスクの高まり
といった問題が加速すると、2025年までに現在の3倍にあたる規模の経済損失が発生する可能性が生じます。
そのため、国内の企業は推進を加速させ、2025年の崖に備える必要があります。
デジタルトランスフォーメーションの進め方
デジタルトランスフォーメーションへの取り組みは、
- 社内での理解を深める
- 戦略をかためる
- 体制をつくる
- デジタル化を進める
- 効率化を進める
- データの活用をすすめる
のように進めていきます。
DXを推進する場合、既存のやり方が大きく変更される場合があります。
そのため、理解を深め、なぜ推進する必要があるのかを知ってもらわなくてはいけません。
社内での理解が深まったら、推進に向けた戦略をかためていきましょう。
次に、必要な人材をそろえ、体制を整えていきます。
DXの推進に必要な人材や体制づくりについては、以下の記事を参考にしてください。
>>DX人材とは?代表的な6つの業種と求められる7つのスキルについて解説
>>デジタルトランスフォーメーションを推進するための組織の作り方
体制が整ったら、まずは既存の業務のデジタル化から進めていきます。
次に、それらの業務をどんどん効率化していき、生産性を高めていきましょう。
あとは、DXを推進していく中で得られたデータを既存のビジネスに活用し、あり方や取り組み方を変化させていきます。
まとめ:課題を把握しながらデジタルトランスフォーメーションの推進に取り組もう
これからの時代、企業が生き残るためにはデジタルトランスフォーメーションへの取り組みは避けて通れません。
国内の経済や産業に関する行政機関である経済産業省がDXの推進をうながしているため、その点については疑いようがありません。
ただし、既存のビジネスのあり方を変えてしまうほど大きな取り組みになるため、形になるまでに時間がかかります。
また、今回紹介したようにさまざまな課題があるため、試行錯誤しつつそれらの課題をクリアしていきながら進めていかなくてはいけません。
そのため、なるべく早く取り組み始める必要があるわけです。
デジタルトランスフォーメーションは専門的な取り組みになるため、外部にサポートしてもらいながら推進するのがおすすめです。
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