DX戦略が必要な理由とは?策定時に考慮すべき事項や流れを解説
DXの重要性が広く知られるようになり、推進する企業も増加しています。
一方で、「何から手をつければ良いのか分からない」「戦略の立て方が分からない」など、どのようにDXを進めるべきか悩んでいる方は多いです。
本記事では、DXに戦略が必要な理由や策定の流れについて解説します。
DX戦略の策定でお悩みの方は、ぜひご覧ください。
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目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略とは
DX戦略とはデジタル技術を活用して、自社のビジネスモデルや業務、組織などをどのように変革していくのかを定めた戦略です。
DXは部分的な業務のデジタル化ではなく、企業活動のあらゆるレベルでデジタル技術を活用する広範な改革を指します。
そのため、経営戦略そのものにDXを組み込んでおく必要があります。
明確な枠組みがないままDXを導入しても、失敗する可能性が高いです。
自社内でデジタル技術を戦略的に活用するための方針を定めておかなければなりません。
まずは、DX戦略を立案するに当たって考慮すべき事項について解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の立案時に考慮すべき事項
DX戦略を立てる際に考慮すべき事項は、
- DXを推進できる体制と人材の確保
- 企業文化・マインドセット
- ビジネスモデル
- 業務
の4つに分けられます。
それぞれの事項について詳しく解説します。
DXを推進できる体制と人材の確保
DXを推進するためには、DX人材の確保が必須です。
DX人材とは、デジタル技術と自社の業務の両方に精通した人材を指します。
2020年に発表された「DXレポート2」では、業務の性質上、DX人材は企業自ら確保することが理想的とされています。
近年、DXに取り組む企業が増えている一方で、多くの企業がDX人材の確保に苦戦しています。
同レポートによると、国内のIT人材の77%がベンダー企業に所属しており、ユーザー企業に所属する人材は一部とされています。
企業の需要に対して、DX人材が圧倒的に不足しているのが現状です。
そのため、DX導入を進める上で、人材をどのように確保するのかについて戦略を立てておく必要があります。
加えて、DXを推進可能な体制づくりも不可欠です。
DX部署や職種の創設など、組織体制の見直しも求められます。
DX人材について詳しく知りたい方は「デジタルトランスフォーメーション人材に必要な7つのスキルと育成方法」をご覧ください。
企業文化とマインドセット
企業文化とマインドセットも、DXの成否を左右する重要な要素です。
デジタルトランスフォーメーションは部署単位ではなく、全社で取り組まなければ失敗してしまう恐れがあります。
必要性を社内で共有できていないことが原因で、反発にあうケースも珍しくありません
DXを実現する上で求められる企業文化の内容も、戦略に組み込む必要があります。
- ユーザーファースト
- データ思考
ビジネスモデル
DX戦略を立案する上で欠かせない要素が、ビジネスモデルです。
DXで事業を成長させるために現在のビジネスモデルに、どのようにデジタル技術を活用すればよいのかを考えなければなりません。
そのためには、自社の強みと市場の動向を踏まえて戦略を練る必要があります。
DXを成功させるにはデジタル技術の導入によって、ユーザーにどのような付加価値を提供できるのかを考えることが重要です。
業務
DXを推進するにあたって、既存の業務にどのようにしてデジタルツールを、導入するべきか考える必要があります。
具体的な戦略がないままデジタルツールを導入しても、業務の効率化につながるとは限りません。
非効率な業務や課題を洗い出し、デジタル化で解決可能な問題と不可能な問題を選別しましょう。
ツールを導入する際は試験運用を実施し、自社の業務にマッチしているかを確認しておくと失敗も少ないです。
また、業務をデジタル化した時の生産性だけではなく、投資額に見合うだけの効果が得られるのかも考慮しなければ、DXに失敗する恐れも。
コストパフォーマンスと業務効率の両方を考慮することが大切です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略が必要な理由
DXに戦略が必要な理由は、
- 2025年の崖問題
- データ喪失のリスク
- 競争力の低下
ここでは、各理由について詳しく解説します。
2025年の崖問題
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」によると、企業がブラックボックス化した旧来の基幹システムを使用し続けた場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済的損失が発生する恐れがあるとされています。
旧式のシステムに対応可能なエンジニアが不足し、維持費が高騰するため、IT予算の9割以上が維持に充てられ、成長分野への投資が鈍化すると考えられています。
結果的に、事業拡大の機会を逃し、売上が伸び悩むことになるでしょう。
データ喪失のリスク
DXが進まなかった場合、データを喪失するリスクも。
旧来の基幹システムの多くは、部分的な最適化によって複雑な状態です。
そのため、ベンダーはもとよりユーザー企業ですらも、システムの全体像を把握できていな状態です。
加えて、古い言語を理解できる世代のエンジニアが定年を迎えつつあり、システムのブラックボックス化に拍車をかけています。
データを継承できなければ、企業が蓄積してきた多くのノウハウが失われることに。
ブラックボックス状態の解消は、DXを進める上で避けては通れない課題のひとつです。
基幹システムの移行は、全社で取り組まなければならないため、戦略的に進める必要があります。
競争力の低下
DXが進まなかった場合、競争力が低下する恐れがあります。
現在、国内のみならず、世界中の多くの企業がDXに取り組んでいる状況です。
ITおよび通信分野における調査・分析をおこなっているIDCは、人工知能を活用している企業は、将来的に同業他社より50%速いペースで業務やサービスを改善すると予測しています。
DXによって同業他社が市場での競争力を向上させた場合、相対的に自社の競争力が低下することに。
2018年以降、国内でも急速にDXへの関心が高まっているため、競争力を維持するためにも早期にDX戦略を策定する必要があります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)のメリットとは?
DXに戦略が必要な理由について解説しましたが、ここからはDXのメリットについて解説します。
競争力の獲得
競争力を強化できる点は、DXの大きなメリットです。
デジタルトランスフォーメーションを導入すると、人の手による作業が減少します。
例えば、企業内のデータを収集・統合して分析するBIツールを活用すると、市場調査でよく用いられるクラスター分析やアソシエーション分析など、手間のかかる手法でも短時間で実行できます。
また、投資した額に対してどの程度のリターンが見込めるのかをシミュレーションすることも可能です。
デジタル技術を導入してDXを進めると、市場分析から経営判断、施策実行までの期間を短縮できるため、競争力の強化に繋がります。
変化への対応力向上
DXを導入すると、市場の変化への対応力が向上します。
自社のサイトやオンラインサービスを利用したユーザーの行動は、データで記録されます。
しかし、膨大なデータを人の手で分析することは容易ではありません。
デジタルトランスフォーメーションでは大量のデータを分析するために、AIを活用しているケースが多いです。
短時間で分析ができるため、ユーザーの動向をいち早くつかむことが可能に。
ユーザーのニーズの変化を早期に把握できれば、迅速に対応できます。
PDCAサイクルを高速化できる点は、DXの大きなメリットです。
生産性の向上
DXには生産性が向上するメリットも。
ルーティーン型の業務は、人間よりもコンピューターの方が高速かつ正確にこなせます。
また、大量のデータから共通点を見つける作業も得意です。
例えば、営業で活用されているSFA(営業支援システム)には、過去の購入履歴や案件をもとに、見込み客が購入する可能性の高い商品を推測する機能が備わっています。
上記の機能を活用すれば、個々の営業スタッフの能力に依存しない営業を実現できます。
さらに、類似する過去の案件で使用した提案書を活用することも可能です。
多くのSFAがほかのシステムとの連携をサポートしているため、営業からサポートまでシームレスに連携できます。
DXを導入するとルーティーン業務が減少し、本当に注力すべき業務に集中できるようになるでしょう。
DX戦略が成功した事例
DXに成功した企業は、どのような課題感を持ち、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを進めたのか気になる方もいるのではないでしょうか。
ここからは、DX戦略が成功した事例をご紹介します。
Amazon
Amazonは、DXの元祖とも言われています。
ECサイトでは、会員登録や支払い方法の選択など、購入までのプロセスが煩雑になるほど、ユーザーが離脱する可能性が高まります。
Amazonでは、多くのECサイトが抱える上記の課題を、商品ページに「今すぐ買う」ボタンを設置することで解決。
加えて、今すぐ買うボタンの特許申請が認められたことで、競合他社が同じ機能を実装するためには、Amazoへ使用料を支払わなければなりませんでした。
2017年に期限切れとなり、現在は失効しているものの、初期のAmazonの成長を支えた戦略として知られています。
利便性を向上させることで、ユーザーの離脱を防ぎつつ、競争力を高めることに成功した事例として有名です。
AmazonのDXについて詳しく知りたい方は、「デジタルトランスフォーメーションの先駆者Amazonが成功した4つの理由」をご覧ください。
【参考】マーキャリ デジタルトランスフォーメーション(DX)のお手本!Amazonが起こすデジタルトランスフォーメーションとは
クボタ
建機・農機関連のサービスを提供するクボタは、故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」を導入して、サポート業務の効率化を実現しています。
従来の故障修理では、マニュアルに従って故障箇所を割り出す必要がありました。
割り出しに時間が掛かるため、修理期間の長期化が課題になっていました。
Kubota Diagnosticsの導入によって、機材に表示されたエラーコードをアプリに入力するだけで、故障個所の特定が可能に。
また、同アプリには3DモデルとAR(仮想現実)技術が活用されており、アプリを起動してスマートフォンを故障した製品にかざすと、故障個所を3Dで確認できます。
DXによって、修理にかかる時間の短縮に成功しています。
【参考】Monstarlab 3Dモデル・ARを活用した診断を提供し、建機故障時のダウンタイムを低減
ユニメイト
レンタルユニフォーム事業を展開するユニメイトは、AIによる画像認識を活用した「AI×R Tailor」で、採寸を自動化しています。
同社では、クライアントが申告したサイズをもとに、製品を納品していました。
しかし、サイズ違いが発生しやすく、返品率が40%を超える状態に。
サイズ交換に備えて余剰な在庫を確保するなど、コスト面での課題を抱えていました。
AI×R Tailorの導入よって、ユーザーの背面・側面の画像と身長などのデータをもとに、最適なサイズの提案が可能に。
返品によるロスを削減するだけではなく、ユーザーと社員両方の負担軽減にも繋がっています。
同システムはスマートフォンアプリではなく、Webサイト上でアプリのように動作するPWA(Progressive Web Apps)として提供されています。
そのため、スマートフォンアプリのように、リリース時のストア申請やOSのバージョン対応なども不要です。
PWAを採用することで、システム維持のコストや工数も削減しています。
【参考】Monstarlab AIの画像認識を活用した自動採寸アプリを開発し、事業コストの削減に貢献
DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略策定の流れ
DX戦略を策定する際には、いくつかポイントを押さえておく必要があります。
ここでは、DX戦略を策定する流れをご紹介します。
1.自社が目指すビジョンを明確にする
まずは、自社が目指すビジョンを明確にしましょう。
DXで何を目指すのかが定まっていなければ、認識にズレが生じてしまいます。
競争力を獲得するために自社のあるべき姿を定義し、DXに携わるメンバー全員でビジョンを共有することが重要です。
自社内だけに止まらず、プロジェクトに参加する社外のメンバーとも認識を共有できなければ、DXの実現は難しいでしょう。
2.自社の強み・課題を洗い出す
現状把握するために、自社の強みや課題を洗い出しましょう。
ビジネスモデルや業務、人材など、項目別に現状を確認し、デジタル技術でどのように課題を解決できるのかを検討します。
自社が強みを持つ項目と弱い項目を明確にし、どこに注力すべきか優先順位を決めておくことも大切です。
優先順位を決める際には、事業へのインパクトが大きい項目を優先し、効果が薄い事項については後回しにするか、切り捨てることも検討しましょう。
3.戦略を立てる
現状把握した後は、目指すビジョンとのギャップを埋めるための戦略を立てましょう。
DXの目的は、データとデジタル技術を活用して会社のあり方を変え、競争力を高めることです。
立案段階においても、データをベースに戦略を考える必要があります。
戦略の立案に必要なデータが揃っていない場合は、データの収集から取り組みましょう。
憶測にもとづいて戦略を立てると、DXに失敗してしまう恐れがあります。
まとめ:戦略の立案はDX推進の第一歩
DXに戦略が必要な理由について解説しました。
DXを実現するには、全社で取り組む必要があります。
それぞれの役割やDXの必要性を全社員が理解していなければ、実現は困難です。
まずは、自社のDX戦略を策定して、社内で目指すべきビジョンと実現までの道筋を共有しておきましょう。
しかし、現状ではDXを推進可能な人材は不足しています。
「自社にDX人材が在籍していない」というケースも珍しくありません。
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