新規事業の立ち上げ方とは?開発プロセスやフレームワークを紹介
「新規事業開発を任されたけれど、どのように進めればいいのだろう」と悩んでいる担当者は意外にも多いです。
変化のスピードが早い現代社会において、新規事業の立ち上げは、長期目線に立ったリスクヘッジとも言えます。
新規事業を立ち上げることで、社会環境やニーズの変化に対応できる「柔軟な組織」が育つと共に、より強い企業体質を作るために役立つケースもあるのです。
ここでは新規事業の立ち上げが重要な理由から、立ち上げのプロセス、事業を成功させるために必要なことを紹介します。
新規事業開発のプロセスを知っていることで、スムーズな立ち上げができます。
なお、テクロ株式会社では「新規事業開発を成功させる『勝ちプロセス』」資料を無料で配布しています。
新規事業開発を検討・推進しているBtoB企業様はぜひ参考にしてください。
目次
新規事業開発とは?
新規事業開発とは、新しいビジネスを創生・作り出すことです。
変化し続ける社会や市場の中では、消費者のニーズや経済状況、さまざまな分野の技術力も常に成長と変化を続けています。
新規事業を成功させるためには、ただ闇雲に事業アイデアを実現させるだけではいけません。
計画的に事業を開発し、運用していくことが大切です。
新規事業開発の課題
新規事業の立ち上げでは、ヒト・モノ・カネ・情報の4要素が、課題になるケースが多いです。
特によく出てくる課題は、以下です。
- アイデアが出てこない
- 市場ニーズをつかみきれない
- 仮説にこだわり過ぎてしまう
- 立ち上げチームの統率がとれない
- 予算の見積もりがとれない
これらを一つひとつ確実にクリアにしていくことが、新規事業成功の確度を高めることにつながります。
新規事業立ち上げのプロセス
新規事業開発を進める場合は、以下のプロセスを参考にしてみましょう。
プロセス1.目的を明確にする
まずは、目的を明確に設定します。
目的が明確でないと、新規事業を立ち上げてもゴールが分からず、計画が破綻してしまう可能性があります。
目的は、例えば主軸である事業の業績の悪化に伴う立て直しやリスク分散などです。
自社の課題と照らし合わせながら、目的を決めていきましょう。
プロセス2.市場や顧客のデータを集める
市場や競合他社の動向、顧客ニーズを集めます。
特に市場性については、市場の将来性や今後のリスクについて知ることも大切です。
市場の特徴や構造と共に、既に市場に参入している企業を調査して、顧客の特性や関係性をしっかりと調べることが重要です。
プロセス3.ペルソナを決める
新規事業を立ち上げる際には、ペルソナをしっかり決めましょう。
ターゲットを決めることで、ニーズを汲み取りやすくなったり、アイデアを練りやすくなるメリットがあります。
以下の項目を決めて、詳細なペルソナ像を作り出します。
- 性別
- 年代
- 家族構成
- 居住地
- 職業
- 趣味
- ライフスタイル
不特定多数よりも、特定のペルソナ像に寄せた事業を作った方が、結果的に市場のニーズに応えられます。
プロセス4.アイデアを創出する
ペルソナ像を決めたら、新規事業のアイデアを創出していきます。
チーム内で意見を積極的に出し合いながらアイデア練っていく作業です。
ライバル企業の強みや弱みを考えながら成功例が確立しているビジネスモデルを他業種に広げ、新たな付加価値を見いだしてください。
プロセス5.アイデアを選定して事業構築をする
出てきたアイデアの中から、新規事業として可能性のありそうなものを選択します。
新規事業につながるようなアイデアを見つけたらふるいにかけ、評価・検討・調査を実施しましょう。
さらに損益計算や事業計画の作成、融資や補助金など資金調達に関することを含めたビジネスプランを立てて、事業構築を進めていきます。
新規事業計画を立てる方法
アイデアが決まったら、事業計画を立てていきましょう。
新規事業をスムーズに進めるには入念な計画が必要です。
1.スケジュールの策定
事業開始から、何年でどのくらいの目標を達成していくのか検討しましょう。
目標を立てることで、達成するまでに何をしていけばいいのか手法などを考える手がかりになります。
さらにスケジュールは、チームメンバーの進捗を追うためにも重要です。
期間は5年程度で作ってみてください。
2.基本計画を時系列で策定
事業開始から数年後までの事業計画をまとめていきます。
このときに、事業にとって必要な機能をどのように獲得・強化していくのかも時系列で計画します。
マーケティング施策や達成する目標数値、担当者、納期などを具体的に織り込んでいきましょう。
3.資金計画の策定
事業は、収入と支出をたえず繰り返す行為です。
それがどれくらい必要でどうやって資金を確保するのかを把握して、コントロールしていくのが資金計画です。
具体的には、以下の項目を策定します。
- 投資金額
- 資金調達金額
- 資金調達方法
- 返済方法
計画中の事業にどの程度の確実性と収益性があるのかを、お金の数字を用いて策定していきます。
4.個別の詳細プランを策定
基本的な計画が決まったら、詳細プランを考えていきます。
事業や業種によって異なりますが、商品を生産し販売していく新規事業を立案した場合、以下の3つのプランを個別に考えましょう。
仕入れにかかるコストや収益の見込み、さらに人件費などがどのくらい必要なのかを計画していく必要があります。
- 生産:原材料をどのように集めて加工するか
- 販売:販売予測をして、売上高を計算していく
- 採用:プロジェクトに必要な人員をいつまでに確保するべきか考える
誰がいつどこで何をするのかと、KPIを決定していきます。
5.事業計画に盛り込むべき内容
事業計画書には、以下の内容を盛り込みましょう。
- 創業者の略歴
- 会社や事業の理念・目的
- 具体的な事業内容
- 提供するサービスや販売する商品の特徴
- 会社や事業の強みと弱み
- 市場環境や競合の特徴
- 具体的な販売・マーケティング戦略
- 事業に関わる組織体制・人員計画
事業計画書は、共同経営者にビジネスのビジョンを説明するときなど、事業の将来性について説得力を持って示すツールになります。
銀行からの融資を受けるときにも、利用できるため丁寧に準備しましょう。
新規事業の開発で活用できるフレームワーク
事業計画は事業の成功に欠かせない要素の1つですが、特に新規事業開発においては、スピードが求めらます。
競合に先手を打たれたり、環境の変化による機会損失を未然に防ぐためにも、「フレームワーク」は非常に有効なツールです。
SWOT(スウォット )分析
SWOT分析とは、
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
- マーケットの調査・分析
- アイデア創出
- 事業構築(再構築)
- サービス化(改良・修正)
- 分析
新規事業スタートさせる際に、SWOT分析を利用すれば、新規事業の方向性を見出せます。
分析するときは、目的を設定し内部・外部分析を実施。
その結果を各項目をかけ合わせたクロスSWOT分析をして、戦略を練っていきましょう。
VRIO(ヴリオ)分析
VRIO分析は自社を深掘り、経営資源にフォーカスした分析手法で市場機会を見つけるための分析です。
分析項目は、
- 経済価値(Value)
- 希少性(Rarity)
- 模倣困難性(Inimitability)
- 組織(Organization)
VRIO分析対象は「業界」という大きなくくりではなく「個別企業」で、企業内部に存在する経営資源が持っている強みの競争優位性やアドバンテージを明確にします。
VRIO分析を行うことによって事業構築が容易となり、競争優位性を強固にでき、顧客満足度をアップしていくことが可能です。
さらにこれらを整理・分析することによって、自社の置かれている状況が分かり、投資・撤退判断ができます。
マンダラート
マンダラートは、マス目にアイデアを書き込みながら、思考を拡げていく発想法です。
テーマをマス目の中心に書き、周囲のマス目にはテーマから連想するアイデアを8個記入します。
さらに、その中の一つを選んで次の9個のマス目の真ん中に記入し、連想するアイデアを周りのマス目に書き込んでいきます。
単純ですが、個性的なアイデアやユニークなアイデアが出てくるのが大きな特徴です。
新規事業のアイデアを創出するときに、利用できるフレームワークです。
SCAMPER(スキャンパー)法
SCAMPER法とは、アイデアを生み出す方法の1つです。
既存のアイデアを別の角度から捉えたり、より良いものにしたりするために用います。
SCAMPER法には、以下の7つの質問が用意されています。
- Substitute(代用する)
- Combine(組み合わせる)
- Adapt(適応させる)
- Modify(修正する)
- Put to other uses(その他の使い道)
- Eliminate(取り除く)
- Rearrange・Reverse(並べ替える・逆にする)
7つの質問をもとに、小さなアイデアを組み合わせたり、並べ替えたりして新たな新規事業のアイデアを作り出します。
アイデアをたくさん出すためには、核となるアイデアを用意しておき、制限時間を設けて集中して取り組むことが重要です。
ペルソナ分析
「対象としたいユーザー像」「架空顧客」を意味するのがペルソナです。
架空の人物が実際にいるかのように想定しながら、年齢や性別などの情報を設定し、具体的に戦略や指針を検討するために用いるフレームワークです。
ペルソナを設定するときは、以下の項目を埋めていきます。
新規事業開発を進める上で、ターゲットを決めていく段階で利用できます。
アナロジー分析
アナロジー分析は、新しい発想を生み出すフレームワークアナロジーです。
他業種の成功事例を取り込んでいくことで、自社の業界の常識にとらわれないアイデアが生まれます。
自社の既存のアイデアや他社のマーケティング活動などを参考にして、新規事業に活かすこともできるでしょう。
Logic Tree(ロジックツリー)
問題の要因を分解した上で階層毎に整理するのがロジックツリー(Logic Tree)です。
問題の全体像を俯瞰して、根本となる原因を見つけて、それに対する有効な解決策を模索します。
ロジックツリーには足し算型と掛け算型があります。
足し算型は、事業の属性にフォーカスして問題を部分集合に分け、どこに問題があるかを見つけていく方法です。
掛け算型は事例を決定する要因で因数分解し、問題の原因や必要な論点を見つけていきます。
ロジックツリーの特徴は、問題を広く深く掘り下げて全体像を把握し、さまざまな角度の視点から原因を見つけることです。
6W3H
ぼんやりと輪郭だけが見えているようなテーマを、はっきりさせる場合に効果的なフレームワークが6W3Hです。
6W3Hの項目は以下の通りです。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(なにを)
- Whom(誰と)
- Why(なぜ)
- How(どうやって)
- How much(いくらで)
- How many(どれだけ)
5W1Hに、誰と・いくらで・どれだけを加えて、よりビジネスに使いやすい形にしました。
アイデアを出すときや新規事業計画を練るときなどに利用できます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
自社の理念や元々持っている持ち味をMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に合致させることで、新規事業はうまく走りだします。
MVVを「Yes/No」の判断基準にすると、フレームワークとして利用できます。
新規事業のアイデアを出して、その中から自社に合ったものを選定して推し進める段階で有効です。
3C分析
3C分析とは、
- Customer(顧客)
- Company(自社)
- Competitor(競争相手)
を分析するフレームワークです。
市場の現状を整理して、市場の関係性を見ていきます。
顧客に焦点を合わせてし、競合と自社を比較して自社の競争優位性を見つけながら、マーケティング戦略や顧客ニーズ、自社のアドバンテージなどを考える際に利用します。
競合他社に対する自社の優位性を探っていく段階で役に立つ分析方法です。
新規事業開発を成功に導くためのポイント
新規事業を成功へ導くためには、いくつかのポイントがあります。
事前に需要予測を立てる
需要予測とは、自社が提供する商品が、将来どれほどの需要を生むのかを予測することです。
需要予測をしないまま、新規事業を立ち上げても、資金を集められず事業が失敗する可能性が高まります。
需要予測は、明確な根拠を用意して他社に説明できるようにしましょう。
新規事業と経営理念にギャップがないかを確認
新規ビジネスは自社の経営理念を判断基準にして新規事業を選択しましょう。
経営理念に沿って物事を決めていくことで、事業の目的や意義がはっきりと見えてくると共に、間違った方向へ進む可能性も低くなります。
また、経営理念を判断基準とすることで、既存事業との相乗効果も期待できる可能性が大きくなってくると言えます。
顧客のニーズを再確認する
新規事業開発は、対象として設定した顧客ニーズを再確認しながら取り組んでいきましょう。
新規事業は仮説に基づいて開発されるので、あてずっぽうにいきなり本格参入するのはリスクが高いです。
まずテストを通じて実際の顧客反応や収益がどのくらいになるかを確認し、必要に応じて修正しながらリスクを減らし、成功させる可能性を高めていきましょう。
事業の撤退基準を決めておく
新規事業を進める場合、撤退基準はあらかじめ決めておきましょう。
決めないままでいると、会社の資金を常に投じる必要があり、経営危機に陥る恐れがあります。
新規事業における撤退基準は大きく分けて2つです。
- 達成率で判断する
- 状況や将来性で判断する
事前に決めたKPIに沿っているかチェックした上で、達成してなければ撤退しましょう。
またうまくいっていたとしても不景気や強豪の参入によっても断念せざるを得ない状況もありえます。
最初からどの状態になったら撤退するのか考えて、新規事業を開発しましょう。
正しいと判断したら早く始める
新規事業のアイデアは、既に競合他社も思いついているものと考えて、成否の判断を素早く実施するのが基本です。
同じようなアイデアなら、それを成功に導くにはとにかくスピードが重要になってきます。
選択したアイデアが正しいと判断できたら、他社よりも速くに進めていくことが重要です。
まとめ:新規事業開発はプロセスを守って実施しよう!
新規事業の開発には、周到な分析が大切であると共に迅速な判断や実行が大切になってきます。
進出を計画している市場には既存の競合があふれていると想定し、いかにユニークなアイデアを持ってして新規ビジネスへ参入する蚊が鍵となります。
事業化までを最短のスピードで実現するためにフレームワークを活用し、分析・整理しまとめる時間を最小限にしてください。
株式会社テクロでは、新規事業開発のプロセスを解説した「新規事業開発を成功させる『勝ちプロセス』」を無料で配布しています。
新規事業開発の全体像などが想像できない場合は、ぜひダウンロードして参考にしてみてください。