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ポジショニングマップを商談データで作り、マーケティング施策へ落とし込む手順

Japanese headline about creating a positioning map and using data axes, with a person at a desk analyzing a quadrant chart on a monitor on the right side.

この記事のポイント

  • ポジショニングマップは、顧客の評価軸で自社と競合の位置関係を可視化する図であり、自社の強みではなく顧客の認識が基準となる。
  • 効果的な軸は、営業担当者の感覚だけでなく、実際の商談データを分析することで抽出できる。特に顧客からの質問、比較項目、受注・失注理由が重要。
  • 「顧客が重視しているか」「競合との違いが表れるか」など5つの基準で軸を選定し、「伴走力」のような抽象的な表現は具体的な比較項目に変換する必要がある。
  • 作成したポジショニングマップは、サービスページ、SEO記事、広告、営業資料など、すべてのマーケティング施策に一貫して反映させることが重要。
  • 顧客の目的やリソース状況に応じて施策の優先順位を変え、円形のカスタマージャーニーに沿って一貫した価値を伝えることで、商談化につながる。

BtoBマーケティングにおいて、自社の立ち位置を明確にするポジショニングは不可欠です。しかし、多くの企業がポジショニングマップを作成する際に「価格と品質といった一般的な軸しか思いつかない」「自社の強みばかりを軸にしてしまい、顧客視点が欠けている」といった課題に直面します。結果として、競合との違いが不明確になり、マーケティング施策もちぐはぐなものになってしまいます。

本記事では、こうした課題を解決するため、勘や思い込みではなく実際の商談データを活用して最適なポジショニングを導き出し、具体的なマーケティング施策に落とし込むための実践的な手順を解説します。

ポジショニングマップとは

ポジショニングマップとは、顧客の認識を基準に、市場における自社と競合の相対的な位置関係を可視化するためのフレームワークです。このマップを正しく理解し活用することで、効果的なマーケティング戦略の土台を築くことができます。

ポジショニングマップの意味

ポジショニングマップは、顧客が商品やサービスを比較・検討する際に用いる評価軸を縦軸と横軸の2軸に設定し、自社と競合他社がそれぞれどの位置にいるのかを視覚的に示した図です。重要なのは、自社が伝えたい強みではなく、あくまで顧客がどのように認識しているか(パーセプション)を基準に作成する点です。これにより、市場における自社の客観的な立ち位置を把握し、狙うべきポジションを明確にできます。

ポジショニングとポジショニング戦略の違い

「ポジショニング」「ポジショニングマップ」「ポジショニング戦略」は混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。これらの違いを理解することが、戦略的なマーケティング活動の第一歩です。

用語 内容
ポジショニング 顧客の頭の中に、自社製品やブランドの独自の価値を明確に位置付けること。またはその位置付けそのものを指す。
ポジショニングマップ ポジショニングを可視化するためのツール。顧客の購買決定要因を2つの軸で表し、競合との相対的な位置関係を示す図。
ポジショニング戦略 設定したポジショニングを実現するための具体的な計画や活動全体のこと。マーケティングミックス(4P)などを通じて、狙ったポジションを顧客に認識させるための一連の施策を指す。

STP分析におけるポジショニングマップの位置付け

ポジショニングマップは、マーケティング戦略の基本的なフレームワークであるSTP分析の最終段階「ポジショニング(Positioning)」で活用されます。STP分析は、以下の3つのステップで構成されます。

  1. セグメンテーション(Segmentation):市場を共通のニーズや特性を持つ顧客グループに細分化する。
  2. ターゲティング(Targeting):細分化したグループの中から、自社が狙うべき市場(ターゲット)を決定する。
  3. ポジショニング(Positioning):ターゲット市場の顧客に対して、競合製品との違いを明確にし、自社の独自の価値を認識させる。

ポジショニングマップは、この3番目のステップで、ターゲット顧客が何を重視しているかを基に軸を設定し、自社の立ち位置を決定するために使われます。⚠️ 注意:ターゲットが不明確なまま軸を設定しようとすると、誰にとって重要な軸なのかが曖昧になり、効果のないポジショニングマップになってしまいます。必ずセグメンテーションとターゲティングを先に行うことが重要です。

ポジショニングマップを作る目的

ポジショニングマップを作成する目的は、単に市場の状況を把握するだけではありません。顧客への訴求を明確にし、社内の認識を統一し、施策の優先順位を決定するための重要な指針となります。

顧客が自社を選ぶ理由を明確にする

ポジショニングマップを作成する過程で、「顧客が本当に求めている価値は何か」「自社が提供でき、かつ競合が十分に提供できていない価値は何か」を深く分析します。これにより、顧客が数ある選択肢の中から自社を選んでくれる本質的な理由(独自の価値)を言語化できます。この独自の価値が、あらゆるマーケティング活動の核となります。

ポジショニングマップ作成の目的得られる効果・メリット
顧客が自社を選ぶ理由を明確にする独自の価値を言語化し、あらゆるマーケティング活動の核とする
競合との違いを可視化する顧客が比較検討する上で重要な具体的な違いを明確に提示できる
マーケティングと営業の訴求を統一するすべての顧客接点で一貫したメッセージを伝え、理解促進と商談化率向上に繋がる
顧客ごとに施策の優先順位を決める顧客の目的やリソースに合わせた最適な提案と、効果的な施策実施が可能になる

競合との違いを可視化する

BtoB市場では、機能やサービス内容が似通ってくることが少なくありません。しかし、ポジショニングマップを使えば、一見同じように見えるサービスでも、「支援範囲の広さ」「実行体制の手厚さ」「導入までのスピード」といった、顧客が比較検討する上で重要な違いを明確に可視化できます。「高品質」のような抽象的な表現ではなく、顧客が具体的に比較できる形で違いを示すことが可能になります。

マーケティングと営業の訴求を統一する

ポジショニングが明確になることで、マーケティング部門と営業部門が顧客に伝えるべきメッセージが統一されます。Webサイト、広告、SEO記事、ウェビナーといったマーケティング活動から、営業資料、商談時の説明に至るまで、すべての顧客接点で一貫した価値を訴求できるようになります。これにより、顧客の理解を促進し、ブランドイメージの向上と商談化率の改善につながります。

顧客ごとに施策の優先順位を決める

同じサービスを提供するとしても、顧客が求める成果は一様ではありません。「とにかくリード数を増やしたい」という顧客と、「商談化率を改善したい」という顧客では、最初に実施すべき施策は異なります。ポジショニングマップを通じて顧客の目的を整理することで、それぞれの顧客にとって最適な施策の優先順位を判断し、効果的な提案ができるようになります。

ポジショニングマップを作る前に整理すべき情報

精度の高いポジショニングマップを作成するためには、事前の情報整理が極めて重要です。ターゲット顧客、競合、そして自社と顧客のリソースについて深く理解することが、適切な軸設定の土台となります。

対象市場とターゲット

誰に対してのポジショニングなのかを明確にする必要があります。ターゲットが異なれば、重視する価値(=ポジショニングの軸)も変わるからです。最低でも以下の情報を整理しておきましょう。

整理すべき情報カテゴリ確認すべき具体的な項目例
対象市場とターゲット業種・業界、企業規模、部署、役職、抱えている課題、検討のきっかけ
顧客が達成したい成果リード数増加、商談化率向上、WebサイトPV増加、CVR改善、ブランド認知、社内リソース不足解消など
直接競合と間接競合同サービス提供企業、内製、現状維持、他施策への予算配分といった選択肢
自社と顧客の実行リソース社内対応業務、外部依頼業務、担当者稼働時間、得意・不得意、意思決定者、確認・承認フロー
  • 業種・業界
  • 企業規模(従業員数、売上高)
  • 部署(マーケティング部、営業部、情報システム部など)
  • 役職(担当者、マネージャー、役員など)
  • 抱えている課題
  • 検討のきっかけ

顧客が達成したい成果

顧客が自社のサービスを導入することで、最終的に何を達成したいのかを具体的に分解して整理します。例えば、BtoBマーケティング支援の場合、顧客の目的は以下のように多岐にわたります。

  • リード数の増加
  • 商談化率の向上
  • WebサイトのPV(ページビュー)増加
  • CVR(コンバージョン率)の改善
  • ブランド認知の拡大
  • 社内マーケティングリソース不足の解消

これらの成果を把握することが、顧客の購買決定要因を理解する上で不可欠です。

直接競合と間接競合

競合を正しく定義することも重要です。競合は、同じようなサービスを提供している「直接競合」だけではありません。

  • 直接競合:自社と同じサービス・製品を提供している企業。
  • 間接競合:同じ課題を別の手段で解決しようとする選択肢全般。例えば、「外注せずに内製する」「現状維持(何もしない)」「別の施策に予算を配分する」なども顧客にとっては選択肢の一つであり、強力な間接競合です。

特にBtoBでは、顧客が「何もしない」ことを選ぶケースが多いため、現状維持という間接競合を意識することが重要です。

自社と顧客の実行リソース

特に支援サービスの場合、施策の成果は自社だけでなく顧客側の実行リソースにも大きく依存します。そのため、ポジショニングを考える上で、自社と顧客双方のリソースを整理しておく必要があります。

  • 社内で対応できる業務、外部へ依頼したい業務
  • 担当者の確保できる稼働時間
  • 担当者の得意な業務、不得意な業務
  • プロジェクトの意思決定者
  • 確認・承認のフローとスピード感

これらの情報を整理することで、「手厚いサポート」が求められているのか、「自走できるためのノウハウ提供」が求められているのかなど、提供価値の方向性が明確になります。

テクロ式|商談データからポジショニングの軸を抽出する方法

効果的なポジショニングマップの鍵は「軸」の選び方にあります。テクロ株式会社では、営業担当者の感覚だけに頼るのではなく、実際の商談データを活用して客観的な根拠に基づいた軸を抽出しています。ここでは、その具体的な方法を解説します。

営業担当者の感覚だけで軸を決めない

営業担当者へのヒアリングは、顧客の生の声を知る上で非常に有効です。しかし、個人の記憶や印象に依存する方法には限界があります。特定の成功体験や直近の印象的な商談に話が偏ってしまい、顧客全体の傾向を見誤る可能性があるからです。そこで重要になるのが、個人の感覚を補完する客観的なデータ分析です。

商談動画をすべて文字起こしする

テクロでは、オンライン商談をすべて録画し、その動画を文字起こししています。さらに、AIツールを活用して長文の文字起こしデータを要約・整理し、分析しやすい形に加工します。このプロセスにより、商談内容を網羅的かつ客観的に把握できます。

文字起こししたデータから、主に以下の情報を抽出します。

  • 顧客から多く寄せられる質問
  • 顧客が抱えている具体的な課題
  • 顧客が達成したい成果や目標
  • 競合サービスと比較している項目
  • サービス導入に対する不安や懸念点
  • 受注につながった訴求ポイント
  • 失注や商談が進まなかった理由

顧客の質問と回答をデータ化する

文字起こしした商談ごとの文章をそのまま管理するのではなく、分析しやすいようにテーマ別に分類し、データとして蓄積します。例えば、顧客からの質問や会話の内容を以下のようなカテゴリに分類します。

  • 求める成果:リード獲得、商談化、認知向上など
  • 課題:リソース不足、ノウハウ不足、効果測定ができないなど
  • 比較検討項目:料金、支援範囲、実績、サポート体制など
  • 支援範囲:戦略策定のみ、実行まで、内製化支援など

このようにデータを構造化することで、顧客が何を重視し、何を比較しているのかを定量的に分析できるようになります。

顧客が求める成果の傾向を分析する

データ化した商談情報を集計し、顧客が求める成果の傾向を分析します。例えば、「リード獲得を目的とする顧客が全体の40%」「リソース不足の解消を求める顧客が30%」といった具体的な数値で傾向を把握します。この分析結果は、どの顧客セグメントを優先的に狙うべきか、どのようなマーケティングメッセージが響きやすいかを判断する上で重要な根拠となります。

顧客の目的を軸候補へ変換する

最後に、分析した顧客の目的や課題を、ポジショニングマップの「軸」の候補へと変換します。ここでのポイントは、顧客の要望そのものを軸にするのではなく、複数の支援会社を比較する際の「評価項目」に変換することです。

顧客の目的・課題(商談データから抽出) ポジショニング軸の候補(比較項目へ変換)
「戦略はあるが、実行する人がいない」 戦略中心 ⇔ 実行中心
「Webサイト制作から記事作成、広告運用まで全部任せたい」 部分支援 ⇔ 一貫支援
「まずは短期で成果が出る施策から始めたい」 短期成果 ⇔ 中長期成果
「社内にノウハウを貯めて、いずれは内製化したい」 完全外注 ⇔ 内製化支援
「リードは取れているが、商談につながらない」 リード獲得中心 ⇔ 商談化まで支援

ポジショニングマップの軸を選ぶ5つの基準

商談データから抽出した軸候補の中から、最も効果的な2軸を選ぶためには、明確な基準が必要です。テクロでは、ポジショニングマップの軸を次の5つの基準で選定しています。自社の強みだけを基準にせず、顧客の購買決定要因を客観的に見極めることが重要です。

1.顧客が重視しているか

選んだ軸が、顧客の購買意思決定に大きな影響を与える要素でなければ意味がありません。以下の点を確認し、顧客にとっての重要度を判断します。

  • 商談で実際にその項目について質問されているか?
  • その項目が受注・失注の理由に直結しているか?
  • 顧客が競合他社と比較する際に、必ず確認している項目か?

自社が強みだと思っていても、顧客が全く重視していなければ、その軸は有効ではありません。

2.競合との違いが表れるか

設定した軸でマップを作成した際に、自社と競合の位置関係に明確な差が生まれるかを確認します。もし、すべての企業が同じような位置にプロットされてしまうのであれば、その軸は差別化要因を可視化する上で適切ではありません。競合各社の支援範囲や得意領域、体制などによって、マップ上でばらつきが出る軸を選びましょう。

3.自社が継続的に提供できるか

そのポジションで謳う価値を、自社が安定して提供し続けられるかという視点も不可欠です。一時的に対応できるだけでなく、事業として収益性が成立し、人員や体制を維持・強化しながら継続的に提供できるかを評価します。実現不可能なポジションを狙っても、顧客の期待を裏切る結果になりかねません。

4.数値や事実などの根拠を示せるか

設定したポジションは、顧客に対して具体的な根拠をもって説明できる必要があります。「サポートが手厚い」といった抽象的な表現ではなく、「専任担当者が2名体制」「定例会は週1回実施」「対応する業務工程は戦略立案からレポート作成まで」など、顧客が客観的に判断できる数値や事実に変換できるかを確認します。根拠を示せることで、訴求の説得力が高まります。

5.マーケティング施策へ反映できるか

最終的に、選んだ軸はマーケティング施策に落とし込めなければなりません。その軸を使って、サービスページで競合との違いを明確に説明できるか、SEO記事や広告でターゲットに響くメッセージを作れるか、営業資料で自社の優位性を分かりやすく伝えられるか、といった具体的な活用イメージが描ける軸を選びましょう。

抽象的な強みをポジショニング軸へ変換する方法

多くの企業が自社の強みとして掲げる「伴走力」や「高品質」といった言葉は、そのままではポジショニングマップの軸として機能しません。これらの抽象的な表現を、顧客が比較可能な具体的な要素に変換する方法を解説します。

「伴走力」をそのまま軸にしない

「伴走力が高い」という表現は、どの企業も使う可能性があるため、差別化につながりにくい言葉です。また、何を基準に「高い」と判断するのかが曖昧で、顧客にとっては比較が困難です。このような抽象的な強みは、顧客が「伴走力が高い」と感じる具体的な行動や体制に分解する必要があります。

例えば、「伴走力」は以下のような要素に変換できます。

  • 支援範囲:戦略策定のみか、実行まで担当するか
  • 定例会の頻度:月1回か、週1回か
  • 改善提案の有無:レポート報告のみか、具体的な改善施策まで提案するか
  • 制作業務の対応範囲:記事執筆のみか、図解作成や入稿作業まで含むか
  • 担当者の専門性:ジェネラリストか、SEO・広告などの専門担当者がいるか

これらの具体的な項目であれば、顧客は競合他社と比較検討しやすくなります。

抽象的な表現の変換例

「伴走力」以外にも、BtoBマーケティングでよく使われる抽象的な表現と、それを具体的な比較項目に変換した例を以下に示します。

抽象的な表現 具体的な比較項目への変換例
伴走力が高い 定例会の頻度(週次/月次)、担当者数、連絡手段(チャット/メール)、改善提案の有無
サポートが手厚い サポート対応時間(平日日中/24時間365日)、問い合わせ方法、専任担当者の有無
高品質 担当者の業界経験年数、専門資格保有者数、制作物のダブルチェック体制の有無、具体的な実績(導入社数、改善率)
柔軟性がある 契約期間の選択肢、プランのカスタマイズ可否、対応業務範囲の変更可否
専門性が高い 特定の業界・業種への特化、担当者の保有資格、独自データの有無、特定技術への対応
一貫支援できる 対応工程(戦略→実行→分析)、対応施策(SEO・広告・MA)、部署横断(マーケ→営業)での支援可否

ポジショニングマップの作り方【6ステップ】

ここまでの準備と分析を踏まえ、実際にポジショニングマップを作成する手順を6つのステップに分けて解説します。この手順に沿って進めることで、戦略的なポジショニングマップを効率的に作成できます。

1.対象市場とターゲットを決める

最初のステップは、STP分析のS(セグメンテーション)とT(ターゲティング)に基づき、このポジショニングマップが「誰のためのものか」を明確に定義することです。対象とする業界、企業規模、部署などを具体的に設定します。ターゲットが異なれば購買決定要因も変わるため、このステップがすべての土台となります。

2.商談データから顧客の比較項目を洗い出す

次に、商談動画の文字起こし、顧客からの質問リスト、受注理由、失注理由、問い合わせ内容の分析、営業担当者へのヒアリングなどを通じて、ターゲット顧客がサービスを選ぶ際に実際に何を比較し、何を重視しているのかをリストアップします。これがポジショニング軸の元となる重要な情報源です。

3.競合企業を選ぶ

マップ上に配置する競合企業を選定します。商談データから、顧客が実際に比較検討の俎上に載せている企業を中心に選びましょう。知名度が高い企業だけでなく、特定の領域で強い競合も含めることが重要です。また、直接競合だけでなく、「内製」や「現状維持」といった間接競合も意識して選定します。

4.5つの基準で軸を絞り込む

洗い出した比較項目の中から、ポジショニングの軸となる2つを絞り込みます。ここで、前述の「ポジショニングマップの軸を選ぶ5つの基準」を活用します。

  1. 顧客が重視しているか
  2. 競合との差が出るか
  3. 自社が継続的に提供できるか
  4. 根拠を示せるか
  5. 施策へ反映できるか

これらの基準に照らし合わせ、最も戦略的に有効な組み合わせを選びます。

5.自社と競合を配置する

選んだ2軸で構成されるマップ上に、自社とステップ3で選んだ競合企業を配置していきます。⚠️ 注意:配置する際は、感覚で決めるのではなく、事前に配置基準を明確にしておくことが重要です。例えば、「支援範囲」という軸であれば、具体的にどの業務まで対応するかを定義し、各社を同じ基準で評価します。情報が不足している場合は推測で配置せず、Webサイト調査や顧客へのヒアリングなどで追加情報を収集します。

6.目指すポジションを決める

最後に、完成したマップを俯瞰し、自社が今後目指すべき理想のポジションを決定します。目指すポジションを検討する際は、以下の観点から総合的に判断します。

  • そのポジションに顧客ニーズはあるか(市場性)
  • 競合がいない、または弱い領域か(競争優位性)
  • 自社の強みを活かし、実現可能か(実現可能性)
  • そのポジションを確立するために必要なリソースは確保できるか
  • 事業として十分な収益性が見込めるか

ポジショニングマップの具体例

ここでは、BtoBの主要な業種におけるポジショニングマップの具体例をいくつか紹介します。軸の選び方やマップ上の配置を参考に、自社のマップ作成に役立ててください。重要なのは、マップは一つに限定せず、複数の軸の組み合わせを試してみることです。

BtoBマーケティング支援会社の例

BtoBマーケティング支援会社の場合、顧客の課題は多岐にわたるため、支援範囲や目的によって様々な軸が考えられます。

  • 軸1:部分支援 ⇔ 一貫支援
  • 軸2:リード獲得中心 ⇔ 商談化まで支援

この軸でマップを作成すると、各社の立ち位置が明確になります。

  • 右上(一貫支援 × 商談化まで支援):戦略から実行、営業連携までトータルで支援する総合コンサルティング会社。
  • 右下(一貫支援 × リード獲得中心):SEO、広告、コンテンツ制作まで幅広く手掛けるが、主目的はリード獲得にある支援会社。
  • 左上(部分支援 × 商談化まで支援):インサイドセールス代行など、商談化プロセスに特化した専門会社。
  • 左下(部分支援 × リード獲得中心):SEO対策専門会社や広告代理店など、特定の集客施策に特化した会社。

SaaS企業の例

SaaS企業では、機能の豊富さや価格だけでなく、導入のしやすさやサポート体制も重要な比較軸となります。

  • 軸1:導入しやすさ(設定が容易 ⇔ 専門知識が必要)
  • 軸2:カスタマイズ性(標準機能中心 ⇔ 柔軟に拡張可能)

このマップでは、手軽に始められるツールと、自社の業務に合わせて作り込める高機能ツールとの間で、各社のポジションが分かれます。

人材サービスの例

人材サービスでは、紹介する人材の専門性や、関与する採用プロセスの範囲が差別化要因となり得ます。

  • 軸1:幅広い人材 ⇔ 専門人材
  • 軸2:人材紹介中心 ⇔ 採用全体の支援

このマップにより、特定職種に特化したエージェントと、採用戦略の立案から支援するコンサルティング色の強いサービスとの違いが明確になります。

マップは1つだけ作らない

ポジショニングマップは、一度作って終わりではありません。顧客の購買判断は単一の軸だけで決まるわけではないため、複数の軸の組み合わせを試すことが重要です。以下のような軸の組み合わせ例を参考に、自社の市場を最も的確に説明できるマップを探しましょう。

  • 戦略中心 ⇔ 実行中心
  • 短期成果 ⇔ 中長期成果
  • 価格(高価格 ⇔ 低価格)
  • 業界特化 ⇔ 汎用
  • ツール提供 ⇔ コンサルティング

複数のマップを作成し比較検討することで、より多角的に市場を理解し、戦略の精度を高めることができます。

顧客の目的に合わせて施策の順番を変える

ポジショニングを明確にした上で重要なのが、それを実際の提案や施策実行に活かすことです。特に、同じ支援プランやサービスであっても、顧客の現状と目的に応じて最初に実施すべき施策は異なります。画一的な提案ではなく、顧客に合わせた優先順位付けが成果を大きく左右します。

同じ支援プランでも実施順序は変わる

テクロでは、BtoBマーケティング支援において、すべての企業に同じ順番で施策を提供するわけではありません。例えば、月額の支援プラン内容は同じでも、顧客の「リード数を増やしたい」「商談化率を改善したい」といった目的と、現在のWebサイトの状況や社内リソースに応じて、施策の実施順序を柔軟に変更します。この個別最適化が、顧客満足度と成果に直結すると考えています。

リード数を増やしたい場合

短期的にでもリード数を増やすことが最優先の顧客には、比較的早く効果が現れる施策から提案します。

  • 短期施策:リスティング広告、比較サイトへの掲載、既存リストへのメルマガ配信など
  • 中長期施策:SEO対策、ホワイトペーパー制作、共催ウェビナー開催など

まずは広告などで即時性のある成果を出しつつ、並行して中長期的な資産となるコンテンツ施策を進める、といった組み合わせが有効です。

商談化率を改善したい場合

すでに一定数のリードは獲得できているものの、商談につながっていない顧客には、リード獲得後のプロセスを見直す施策を優先します。

  • リードの分類・精査:獲得したリードの質を見極める基準を作る
  • ナーチャリング施策:メルマガやステップメールで継続的に情報提供する
  • インサイドセールス体制の構築・改善
  • セールスコンテンツの拡充:導入事例、比較資料、詳細なサービス資料の作成
  • 商談前後の情報提供プロセスの見直し

新しいリードを獲得しにいく前に、既存のリード資産を最大限に活用することから始めます。

PVや検索流入を増やしたい場合

Webサイトへのアクセス自体が不足している場合は、集客施策が優先となります。

  • SEO対策:キーワード戦略の見直し、内部対策の実施
  • AI検索対策(AIO/LLMO):AIに参照されやすいコンテンツ構造への最適化
  • コンテンツ制作:ターゲットの課題を解決する記事の作成
  • サイト構造の改善:ユーザーや検索エンジンが回遊しやすいサイト設計

ただし、すでに十分な流入がある場合は、闇雲にPVを増やすよりも、サービスページやCTA(Call To Action)、フォームなどのコンバージョン導線を改善する方が早く成果につながるケースも少なくありません。

社内リソースが不足している場合

顧客側のリソースが限られている場合、施策内容だけでなく、役割分担を明確にすることが極めて重要です。実行不可能な計画になることを防ぐため、以下の点を事前にすり合わせます。

  • 顧客側が担当する業務(例:専門情報の提供、最終確認・承認)
  • 支援会社側が担当する業務(例:記事構成作成、執筆、数値分析)
  • 共同で行う業務(例:施策の企画、キーワード選定)
  • 最終的な意思決定を行う担当者

顧客の得意・不得意も役割分担に反映する

さらに、担当者のスキルセットや得意・不得意を考慮して役割分担を最適化します。例えば、顧客担当者が業界の専門知識は豊富でも文章を書くのが苦手な場合、以下のような分担が考えられます。

  • 顧客側:専門情報に関するヒアリング対応、企画の壁打ち、原稿の事実確認、最終判断
  • 支援会社側:ヒアリング内容を基にした記事企画、構成作成、原稿執筆、CMS入稿、数値分析と改善提案

このように、お互いの強みを活かせる役割分担にすることで、プロジェクト全体の質とスピードが向上します。

ポジショニングを円形のカスタマージャーニーへ反映する方法

顧客の購買検討プロセスは、一直線に進むとは限りません。設定したポジショニングを一貫して伝えるためには、顧客が複数の情報接点を自由に行き来することを前提とした「円形のカスタマージャーニー」に、各マーケティング施策をマッピングすることが有効です。

顧客は一直線に検討するとは限らない

現代のBtoB顧客は、SEO記事で課題を認識した後、広告で見たウェビナーに参加し、その後サービスページや導入事例を読み込み、SNSで口コミを調べてから問い合わせる、といったように、複数の接点を何度も行き来しながら情報収集し、理解を深めていきます。この複雑な動きを捉えるためには、直線的なファネルモデルだけでなく、循環型のモデルで施策を設計する必要があります。

顧客の検討段階と施策をマッピングする

テクロでは、この円形のカスタマージャーニーを基に、顧客の検討段階と施策をマッピングしています。ただし、これはあくまで基本的な対応であり、施策と検討段階は固定的に分かれるものではありません。

  • 潜在層(課題が明確でない):Meta広告、共催ウェビナー、認知向けコンテンツ
  • 課題認識層:SEO記事、課題解決型コンテンツ
  • 解決策検索層:リスティング広告(比較・検討系キーワード)、選び方記事、ホワイトペーパー
  • 比較・検討層:サービスページ、導入事例、料金ページ、比較資料、指名検索広告

重要なのは、施策名で分類するのではなく、キーワードの意図、広告の訴求内容、コンテンツの中身、遷移先のページをセットで考え、顧客のその瞬間の状態に合わせることです。

SEO記事は課題認識層との接点として設計する

SEO記事は、自社サービスをまだ具体的に検討していないものの、何らかの業務課題を認識している層との最初の接点として非常に重要です。記事では、読者が抱える課題の原因や背景を解説し、解決策の方向性を示します。そして、より詳しい情報(ホワイトペーパー)や、具体的な解決手段(サービスページ)へと自然に接続する役割を担います。

サービスページは比較・検討層へ向ける

サービスページは、すでに課題解決の必要性を感じ、具体的なサービスを比較・検討している層が訪れます。そのため、支援内容、対象となる企業、競合との明確な違い、実績、料金、導入後の流れなど、意思決定に必要な情報を網羅的に掲載する必要があります。ここでポジショニングマップで定義した「違い」が説得力を持ってきます。

リスティング広告は課題・問題が明確な層へ向ける

リスティング広告は、検索キーワードという形で課題やニーズが明確になっている層へ効率的にアプローチできる手法です。「BtoBマーケティング 支援会社 比較」のようなキーワードで検索するユーザーは、まさに比較・検討段階にいるため、広告文と遷移先ページで自社のポジショニングを端的に伝え、競合との違いをアピールすることが求められます。

Meta広告と共催ウェビナーは潜在層との接点を作る

一方で、まだ自社やサービスを知らない、あるいは課題を明確に認識していない潜在層との接点を作るためには、Meta広告(Facebook/Instagram広告)や共催ウェビナーが有効です。これらの施策はすぐに商談化しない可能性も考慮しつつ、まずは接点を持って役立つ情報を提供し、継続的な関係を築く(ナーチャリング)ことを目的とします。

各コンテンツで同じポジショニングを伝える

ポジショニングマップで定めた自社の価値を、これらすべてのコンテンツへ一貫して反映させることが最も重要です。顧客がSEO記事、広告、ウェビナー、サービスページ、導入事例など、どの接点を行き来しても、同じメッセージに触れることで、自社の独自のポジションが顧客の頭の中に刷り込まれていきます。

例えば、「リード獲得から商談化まで一貫支援」というポジショニングを定めた場合、以下のように各コンテンツに反映します。

  • SEO記事:リード獲得のノウハウだけでなく、その後の商談化の重要性にも言及する。
  • 広告:「リード獲得だけで終わらない」というキャッチコピーを使う。
  • サービスページ:リード獲得後のナーチャリングやインサイドセールス支援まで含むことを明記する。
  • 導入事例:リード数だけでなく、商談化率や受注率が改善した事例を紹介する。
  • 営業資料:マーケティングと営業の連携プロセスを具体的に図解する。

このように、顧客が理解を深めるプロセス全体で一貫した価値を伝え続けることで、最終的に「この課題なら、この会社だ」という指名につながるのです。

ポジショニングを決めても、顧客の検討段階に合った施策やコンテンツへ反映できなければ、実際のリード獲得や商談化にはつながりません。

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この入門書では、BtoBマーケティングの基本から、市場・顧客理解、戦略設計、リード獲得、商談化、効果測定、そして施策の優先順位の付け方まで、マーケティング活動の全体像を体系的に解説しています。ポジショニング戦略を具体的な施策に落とし込むためのヒントが満載です。

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ポジショニングマップをマーケティング施策へ変換する

作成したポジショニングマップは、分析して終わりではありません。定義した自社の立ち位置を、具体的なマーケティング施策に落とし込むことで初めて価値を生みます。ここでは主要な施策への反映方法を解説します。

サービスページ

サービスページは、比較・検討段階の顧客が最も重視するコンテンツです。ポジショニングを反映し、以下の内容を明確に伝えましょう。

  • 誰向けのサービスか(ターゲット):「〇〇業界のBtoB企業様向け」
  • どのような課題を解決できるか:「リードは取れるが商談化しない、という課題を解決」
  • 競合との違いは何か:「弊社は実行支援だけでなく、貴社内の体制構築まで支援します」
  • 具体的な支援範囲:対応する業務工程を具体的にリストアップする
  • どのような企業に適しているか/適していないか:正直に記載することで信頼性が高まる

SEO記事

SEO記事では、自社のポジショニングに関連するテーマで専門性を発揮します。

  • 顧客が抱える課題の深掘り:自社が解決できる課題に関連するキーワードで記事を作成する
  • 顧客が比較する項目を解説:ポジショニング軸に関連する「選び方」「比較」記事を作成する
  • 自社が専門性を持つテーマ:独自のノウハウや一次情報を発信する
  • 競合が十分に説明できていないテーマ:競合の弱点を補う、より詳細な情報を提供する

広告

広告は、短い時間で端的にメッセージを伝える必要があります。ポジショニングに基づき、訴求を絞り込むことが重要です。

  • 1つの広告ですべての強みを伝えない:最も響くメッセージを1つに絞る
  • 顧客の課題と検討段階に応じた訴求:課題認識層には課題を喚起する広告、比較検討層には違いを明確にする広告を出す
  • 遷移先のページと訴求を一致させる:広告文とランディングページの内容に一貫性を持たせる

ウェビナー

ウェビナーは、自社の考え方や専門性を深く伝える絶好の機会です。ポジショニングを体現するようなテーマを選びましょう。

  • 潜在層がまだ気付いていない課題の提示
  • 顧客が判断に迷うテーマの解説(例:内製化と外注のメリット・デメリット)
  • 自社独自の考え方やフレームワークの紹介
  • 商談データで特に多かった質問への回答

営業資料

営業資料は、商談の場でポジショニングを補強し、受注を後押しする最終ツールです。

  • 顧客の目的別の支援順序の提案:顧客に合わせた施策の優先順位を提示する
  • 競合との違いの比較表:ポジショニングマップを基にした分かりやすい比較表を入れる
  • 顧客と自社の役割分担の明記:実行リソースに関する不安を解消する
  • 導入後の具体的な進め方:オンボーディングのプロセスを示す
  • 適している企業のチェックリスト:顧客が自社に合っているか自己判断できる材料を提供する

ポジショニングマップ作成でよくある失敗

ポジショニングマップは強力なツールですが、作り方や使い方を間違えると効果を発揮しません。ここでは、多くの企業が陥りがちな失敗例とその改善策を解説します。

自社の強みから軸を決める

問題点:自社が「強み」だと思っていることを軸にしてしまうケースです。しかし、その強みが顧客にとって重要でなければ、差別化にはつながりません。
改善策:必ず商談データや顧客アンケートに基づき、「顧客が重視する購買決定要因」を軸に設定します。自社の主張(Supply-side)ではなく、顧客の認識(Demand-side)から出発することが鉄則です。

商談データを使わず、競合サイトだけで判断する

問題点:競合のWebサイトに書かれている情報だけでポジショニングを判断してしまうと、実態と異なるマップになる危険があります。Webサイトはあくまで「理想の姿」を表現している場合が多いからです。
改善策:商談の中で顧客が「競合A社は〇〇と言っていた」と語る内容こそが、リアルな競合のポジショニング情報です。実際の顧客の声を一次情報として活用しましょう。

顧客の目的と購買決定要因を混同する

問題点:「リード獲得」といった顧客の目的(What)をそのまま軸にしてしまう失敗です。軸にすべきは、その目的を達成するために、どの会社のサービスを選ぶかという判断基準(How/Why)、つまり購買決定要因です。
改善策:「リード獲得」という目的の顧客が、何を比較して支援会社を選んでいるのか(例:「支援範囲の広さ」「過去の実績」)を分析し、それを軸に設定します。

「高品質」「伴走型」など抽象的な軸を使う

問題点:定義が曖昧で、どの企業も当てはまるように見えてしまう抽象的な言葉を軸にすると、比較ができず、差が生まれません。
改善策:本記事の「抽象的な強みをポジショニング軸へ変換する方法」で解説したように、具体的な業務内容や体制、数値に分解し、誰が見ても同じ基準で評価できる軸に変換します。

顧客側の実行リソースを考慮しない

問題点:支援会社側のサービス提供体制だけでポジションを定義し、施策の実行に不可欠な顧客側のリソース(時間、スキル、承認プロセス)を無視してしまうケースです。
改善策:自社のポジションを定義する際に、前提となる顧客側の役割や必要なリソースを明確にしましょう。「手厚い実行支援(ただし、週次の定例参加と迅速なFBが必須)」のように、前提条件をセットで考えることが重要です。

すべての顧客に同じ施策順序を提案する

問題点:せっかくポジショニングを明確にしても、すべての顧客に画一的なサービス提供をしてしまうと、顧客満足度は高まりません。
改善策:顧客が何を重視しているのか(ポジショニング軸)と、現在の課題・目的を掛け合わせ、顧客ごとに最適な施策の優先順位を提案します。

マップ作成後に施策へ反映しない

問題点:最も多い失敗が、ポジショニングマップを作成しただけで満足し、実際のマーケティングや営業活動に活かさないことです。
改善策:マップ作成はスタート地点です。サービスページ、広告、営業資料など、すべての顧客接点で、定義したポジショニングが一貫して伝わるように、既存のコンテンツやメッセージをすべて見直しましょう。

空白の領域をそのまま狙う

問題点:マップ上で競合がいない「空白の領域(ブルーオーシャン)」を見つけると、安易にそこを狙おうとしがちです。しかし、そこが空白いのには理由があるかもしれません。
改善策:空白の領域を狙う前に、「なぜそこには誰もいないのか?」を問う必要があります。単に顧客ニーズが存在しない市場(No Market)である可能性も十分にあります。必ず市場調査や顧客ヒアリングで、そのポジションに本当に需要があるのかを検証しましょう。

ポジショニングマップを作成した後に行うこと

ポジショニングマップは一度作成したら終わりではなく、継続的に活用し、更新していくものです。作成後に行うべき重要なアクションを4つ紹介します。

顧客ごとの提案方針を整理する

作成したポジショニングマップを基に、ターゲット顧客のタイプ別に提案の基本方針を整理しておきます。以下の要素をテンプレート化しておくと、営業担当者ごとの提案の質がばらつくのを防ぎ、効率的な提案活動が可能になります。

  • 顧客の主な目的
  • 現状の課題(仮説)
  • 優先して提案する施策
  • 当面は後回しにする施策
  • 顧客側に期待する役割
  • 支援会社側が担う役割

マーケティングと営業で共有する

ポジショニングマップとそれに基づく提案方針は、必ずマーケティング部門と営業部門で共有し、目線を合わせることが重要です。共有すべき情報は多岐にわたります。

  • 顧客からよくある質問とその最適な回答
  • 響きやすい訴求内容、響きにくい訴求内容
  • よく比較される競合とその対策
  • 受注・失注の主な理由
  • 商談化につながりやすいコンテンツやウェビナー

定期的な情報交換会などを設け、現場の最新情報を相互にフィードバックする仕組みを作りましょう。

商談データを継続的に更新する

市場環境、競合の動き、顧客のニーズは常に変化します。一度作成したポジショニングマップが永遠に有効なわけではありません。商談データを継続的に収集・分析し、変化の兆候を捉えることが重要です。

  • 新しい顧客課題は出てきていないか
  • 新しい競合企業が比較対象になっていないか
  • 顧客が重視する比較項目に変化はないか

これらの変化を定期的にマップへ反映し、常に現状に即した戦略を維持しましょう。

事業・ビジネスモデルとの整合性を確認する

目指すポジショニングは、単なる顧客への「見せ方」の問題だけではありません。それは、「誰に、どのような価値を、どのような体制で提供し、どのように収益を上げるか」という事業・ビジネスモデルそのものと密接に関わっています。例えば、「低価格・高機能」というポジションを目指すのであれば、それを実現するための徹底した業務効率化やテクノロジーへの投資といったビジネスモデルが必要です。設定したポジショニングと事業の実態が乖離していないか、常に整合性を確認しましょう。

ポジショニングマップに関するよくある質問

最後に、ポジショニングマップの作成や活用に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

ポジショニングマップの軸はどのように決めますか?

ポジショニングマップの軸は、自社の強みではなく「顧客の購買決定要因」から決めるのが基本です。最適な軸を見つけるには、営業担当者の感覚だけに頼らず、実際の商談記録や顧客アンケートなどの客観的なデータを分析することが不可欠です。データから「顧客が何を重視し、何を比較しているか」を抽出し、それを「競合との違いが明確になる」「自社が継続的に提供できる」といった基準で絞り込んでいきます。

競合は何社程度入れるべきですか?

マップに含める競合の数に決まりはありませんが、一般的には3〜5社程度が分かりやすいでしょう。重要なのは数ではなく、誰を選ぶかです。商談で頻繁に名前が挙がる主要な競合を中心に、特定のニッチ市場で強い競合や、間接競合(内製など)も含めると、より市場の実態に近い分析ができます。

商談データが少ない場合はどうしますか?

商談データが十分に蓄積されていない場合は、他の情報源で補完します。例えば、既存顧客へのヒアリング、業界レポートの分析、ターゲット層へのアンケート調査、競合のレビューサイトの分析などが有効です。また、まずは営業担当者へのヒアリングから仮説を立て、その仮説を検証するために少数の顧客にインタビューを行うといったアプローチも考えられます。

AIで商談内容を分析する際の注意点はありますか?

AIによる要約や分析は非常に効率的ですが、万能ではありません。注意点として、AIは文脈の微妙なニュアンスや顧客の感情の機微を完全には読み取れない場合があります。また、要約の精度は元の文字起こしの正確性に依存します。AIの分析結果を鵜呑みにせず、必ず人間の目で最終確認し、重要な発言は元の録画データで確認することが重要です。

顧客の要望をそのまま軸にしてもよいですか?

顧客の要望そのもの(例:「リードが欲しい」)を軸にすることは推奨されません。それは「目的」であり、サービスを比較するための「判断基準」ではないからです。要望ではなく、その要望を叶えるために「なぜA社ではなくB社を選ぶのか」という比較の観点(購買決定要因)に変換して軸に設定する必要があります。

ポジショニングマップは顧客ごとに作るべきですか?

ターゲットとする顧客セグメントが大きく異なり、それぞれの購買決定要因が全く異なる場合は、セグメントごとにポジショニングマップを作成することが有効です。例えば、大企業向けと中小企業向けでは、価格感度や求めるサポート体制が大きく異なるため、それぞれ別のマップで分析した方が良いでしょう。ただし、むやみに細分化しすぎると管理が煩雑になるため、戦略上重要な違いがある場合に限定するのが現実的です。

ポジショニングと施策の順番はどのようにつなげますか?

ポジショニングは「何を伝えるか」というメッセージの核を決め、施策の順番は「誰に、いつ、どう伝えるか」という実行計画を決めます。まずポジショニングで定めた独自の価値を、ターゲット顧客の課題や目的に合わせて具体的な施策に落とし込みます。例えば、「短期成果を重視する」顧客には広告を、「中長期的な資産構築を重視する」顧客にはSEOを優先的に提案するなど、顧客の状況に応じて施策の優先順位を決定します。

ポジショニングマップはどのくらいの頻度で更新しますか?

市場の変化の速さによりますが、BtoB市場であれば、最低でも半年に一度、できれば四半期に一度は見直すのが理想的です。特に、大規模な法改正があった、画期的な新技術が登場した、強力な新規競合が参入した、といった大きな市場の変化があった場合は、速やかに見直しを行うべきです。定期的に商談データを分析し、変化の兆候がないか常にモニタリングする習慣が重要です。

まとめ|ポジショニングマップは商談データから作り、施策まで落とし込む

本記事では、BtoBマーケティングにおいて効果的なポジショニングマップを作成し、それを具体的な施策に落とし込むための実践的な手順を解説しました。

成功の鍵は、自社の思い込みや一般的なフレームワークに頼るのではなく、顧客の生の声が詰まった「商談データ」を分析の起点とすることです。顧客が何を重視し、何を比較しているのかという事実に基づいて軸を設定し、自社の独自の価値を定義します。そして、その価値をサービスページから広告、営業資料に至るまで、すべての顧客接点で一貫して伝え続けることが重要です。

ポジショニングマップは、一度作って終わりの地図ではありません。市場の変化を捉え、顧客への提供価値を磨き続けるための羅針盤です。本記事で紹介した手順を参考に、データに基づいた戦略的なポジショニングを構築し、マーケティング活動全体の成果を最大化してください。

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よくある質問

ポジショニングマップとは何ですか?

ポジショニングマップとは、顧客の認識を基準に、市場における自社と競合の相対的な位置関係を可視化するためのフレームワークです。顧客が商品やサービスを比較・検討する際に用いる評価軸を縦軸と横軸の2軸に設定し、自社や競合他社がどの位置にいるかを視覚的に示した図を指します。

ポジショニングマップはどのような目的で作成するのですか?

ポジショニングマップを作成する主な目的は、顧客が自社を選んでくれる本質的な理由を明確にし、競合との違いを具体的に可視化することです。これにより、マーケティングと営業の訴求メッセージが統一され、顧客ごとに最適な施策の優先順位を判断できるようになります。

ポジショニングマップの軸はどのように決めれば良いですか?

ポジショニングマップの軸は、営業担当者の感覚だけでなく、実際の商談データを活用して客観的に抽出します。顧客からの質問や比較項目、受注・失注理由を分析し、顧客が重視する評価項目に変換。さらに「顧客が重視しているか」「競合との違いが表れるか」など5つの基準で選定します。

ポジショニングマップを作成する前に、どんな情報を整理しておくべきですか?

精度の高いポジショニングマップを作成するためには、まず対象市場とターゲット顧客を明確に定義することが重要です。加えて、顧客が達成したい具体的な成果、直接競合と間接競合、そして自社と顧客双方の実行リソースについても深く理解し、整理しておく必要があります。

ポジショニングマップを作成する際の注意点は何ですか?

ポジショニングマップ作成では、自社の強みだけでなく「顧客の認識」を基準に軸を設定することが最も重要です。また、勘や思い込みに頼らず、商談データなどの客観的なデータに基づいて軸を導き出すこと、そしてターゲットが不明確なまま軸を決めないよう注意が必要です。

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黒上 洋甫
大学卒業後広告代理店や海外ゲームデベロッパーにてグローバル・マーケティングに従事。 日本のアプリデベロッパーの海外展開のサポートを行いながら、インバウンドと アウトバウンドの広告運用部隊の統括を担当し海外との関わりを強める。その後、広告代理店アドウェイズに入社し、クロスボーダーのマーケティング案件を100プロジェクト程度担当。2019年 よりドイツに本社を置くStröer Precision X GmbHに入社し、カントリーマネージャーに就任。 その後2021年よりBtoBマーケティングの世界へ飛び込み2023年テクロ株式会社にてCOOに就任しマーケティング・広告運用案件を担当している。

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