DX人材とは?代表的な6つの業種と求められる7つのスキルについて解説
欧米などに比べて遅れている日本企業のDXへの取り組み。
海外の企業との競争はもちろん国内の競合他社との競争に負けてしまわないためにも、DXへの取り組みは積極的に進めていくべきです。
そんなDXへの取り組みに必要不可欠になってくるのが「DX人材」ですが、DX人材についてしっかりと理解しておかないことには、優秀な人材の採用は不可能です。
そこで今回は、DX人材について詳しく紹介していきます。
DX人材がどういった人材なのかに触れつつ代表的な業種や求められるスキル、DX人材を育成する方法についても紹介していくので、DX人材の必要性を感じている方はぜひ参考にしてみてください。
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目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX人材を採用・育成していくためにはDXについて正しく理解しておく必要があるので、まずはDXについて解説していきます。
DXのことを単なるIT技術の導入や企業のIT化と認識している方は少なくありません。
実は、DXは単なるIT技術の導入や企業のIT化を指す言葉ではないのです。
DXはデジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタルテクノロジーを取り入れることでビジネスを変革させていく取り組みを指す言葉です。
ただ、そう言われてもなかなかイメージしづらいと思うので、出版業界を例にわかりやすく解説していきます。
これまで出版業界では、
- 出版社が印刷会社に書籍の印刷を依頼
- 配送業者が取次業者に書籍を配送
- 取次会社がそれぞれの書店に書籍を配送
- ユーザーが書店で書籍を購入する
といった流れで収益が発生していました。
ここにデジタル技術が導入されて電子書籍が登場したことで、この出版業界のビジネスの流れが一変します。
電子書籍が登場して以降は、出版業界のビジネスの流れが、
- 出版社が書籍を発売
- 配信プラットフォームで電子書籍を配信
- ユーザーが電子書籍を購入する
上記のようなシンプルな流れに変化しました。
DX化したことで印刷や配送、店舗での販売などの工程が省略化され、ユーザーが時間や場所を気にせず書籍を購入できるようになったわけです。
もちろん紙の書籍が一切発刊されなくなってしまったわけではありませんが、今後も電子書籍化の流れが加速していくのは容易に想像できますし、書籍を配信するためのプラットフォームのようなビジネスも誕生しました。
このように、デジタルテクノロジーの活用によってビジネスの変革を図っていくことをDXと呼ぶわけです。
DX人材とは
企業を成長させていくためには、常に時代の変化に上手く対応していかなくてはいけません。
今だとDXへの取り組みをどのようにして推し進めていくのかがとても重要になってくるわけですが、DXへの取り組みを進めていく上で欠かすことができないのがDX人材です。
DX人材とは、デジタルテクノロジーを活用してビジネスの変革を図れる人材のことを指します。
勘違いされがちですが、ただ単にデジタルテクノロジーに関する知識のある人材や、デジタルテクノロジーを駆使できる人材ではありません。
もちろんデジタルテクノロジーに関する知識やスキルを持ち合わせていることも重要ですが、それらの知識や技術を活用してDXへの取り組みを進めていけるかどうかがより重要になります。
そのため、DXへの取り組みを進めていきたいと考えている企業は、いかにしてDX人材を獲得していくのかを考える必要があります。
DX人材の代表的な6つの業種
DXへの取り組みに欠かすことのできないDX人材ですが、DXへの取り組みを一人で進めていくわけではありません。
ひとくちにDX人材と言ってもさまざまな業種があり、それらの人材がチームとなってDXに取り組むことで導入が進められていきます。
ここからは、IT施策の一端を担う政策実施機関の一つである「IPA(情報処理推進機構)」が定める、DXの代表的な6つの業種について紹介していきます。
業種1. プロデューサー
代表的なDXの業種であるプロデューサーは、DXやデジタルビジネスの実現を主導する役割をもった業種です。
プロデューサーには、
- DXへの取り組みの主導
- 事業の統括
- チームの良好な関係の維持
- プロジェクトの円滑な進行
- 適切で的確な意思決定
など、さまざまな役割が求められます。
プロデューサーは、事業をおこなうチームの良好な関係を維持し、プロジェクトが円滑に進められるようにしなくてはいけません。
いくら優秀な人材が揃っていても、足並みが揃わなければDX化は上手くいかないため、主導はプロデューサーの重要な役割です。
また、おこなっている事業の進行状況をふかん的に把握して、進行に遅れが生じてしまわないようにするのもプロデューサーの仕事です。
さらに、事業を進めていく上での適切で的確な意思決定もプロデューサーがおこなわなくてはいけません。
自社の業界を理解して将来の動向を把握しながらプロジェクトを進めていく必要があるため、外部の環境を把握する能力も必要になります。
業種2. ビジネスデザイナー
DXの業種の一つであるビジネスデザイナーは、DXやデジタルビジネスの、
- 企画
- 立案
- 推進
といった役割を担う業種です。
ビジネスデザイナーの主な役割は、ユーザーのニーズから製品やサービスを考え、ビジネスとして展開していく仕組みを作っていくこと。
製品やサービスを作っても必要とされなくては意味がないため、ユーザーのニーズや市場が抱えている課題を把握し、それらをくみとってビジネスを考える職種です。
また、考えたビジネスを一つの企画として提案できる状態にするための構築をおこなうのも、ビジネスデザイナーの大切な役割の一つとなっています。
業種3. アーキテクト
「DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材」をアーキテクトと呼びます。
アーキテクトの主な役割はシステムの設計ですが、システムを設計する場合、その企業の経営戦略に合わせて設計をおこなわなくてなりません。
また、実際に利用するユーザーのことを考え、取り扱いやすいシステムの設計を考える必要もあります。
システムの設計は、プロジェクトの出来を左右する部分です。
そのため、プログラミングなどのデジタルテクノロジーに関する知識やスキルはもちろん、経営的な視点やユーザーの使いやすさを考えるデザイナー的な視点も求められます。
業種4. データサイエンティスト
「DXに関するデジタル技術(AI・IoT)やデータ解析に精通した人材」として定義されているのが、データサイエンティストです。
スマートフォンやタブレットの登場によって誰もが気軽にインターネットを利用できるようになったことで、インターネットを通してさまざまなデータが取得できるようになりました。
これをビジネスに活用する役割を担っているのが、データサイエンティストと呼ばれるDX人材です。
取得したビッグデータの分析をおこない、それらの分析したデータをどのようにビジネスに活用できるかを考えるのがデータサイエンティストの主な役割になります。
業種5. エンジニア・プログラマ
「デジタルシステムの実装やインフラ構築などを担う人材」と定義されているのが、エンジニア・プログラマです。
エンジニア・プログラマは、アーキテクトが設計したシステムを形にしていく業種です。
DXを推し進めている企業でなくてもエンジニア・プログラマを欲している企業はたくさんあります。
しかし、DX人材のエンジニアやプログラマには「ビジネスへの理解」も必要です。
DXは「デジタルテクノロジーを活用してビジネスを変革する」のが目的ですので、一般的なエンジニアやプログラマとは異なります。
自社でおこなっているビジネスへの理解はもちろん、顧客が抱えている課題や社会に求められているものなどについても理解しておかなくてはいけません。
プロデューサーやビジネスデザイナーが描き、アーキテクトが設計したシステムを、ビジネス的な意図を理解しながら構築する能力が求められます。
業種6. UXデザイナー
「DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材」と定義されているのが、UXデザイナーです。
UXは「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略称で、ユーザー体験を意味する言葉です。
どれだけ優れたシステムでもユーザーが快適に使用できるものでなくては意味がありません。
ユーザーが使いやすいデザインを実現するのがUXデザイナーの最大の役割になります。
DX人材でのUXデザイナーには、プログラマやエンジニア同様ビジネス的な視点を持ちつつ、いかにユーザーが快適に使えるデザインを実現できるかが求められます。
DX人材に求められる7つのスキルや能力
DXへの取り組みを進めるためにDX人材の採用を考えているのであれば、DX人材に求められるスキルや能力についても理解しておかなくてはいけません。
DX人材に求められる7つのスキルや能力に紹介していきます。
スキルや能力1. ITに関する知識とスキル
ITに関する知識やスキルを持ち合わせているだけではDX人材として不十分だと紹介してきましたが、とはいえ、ITに関する豊富な知識と高いスキルがなくてはDX人材として活躍できません。
ITに関する知識がなくてはデジタルテクノロジーを駆使した新しいシステムを考えることはできませんし、スキルがなくてはせっかく出したアイディアも形にできずに終わってしまいます。
求められる知識やスキルはそれぞれの職種によって異なるので、それぞれの業者にあった知識とスキルを持ち合わせている人材かどうかを確認しながら採用してください。
スキルや能力2. 好奇心とリサーチ能力
DX人材には好奇心とリサーチ能力も求められます。
DXはデジタルテクノロジーを活用して進められますが、デジタルテクノロジーは驚くべき速度で進化し続けています。
今最新のテクノロジーがあっという間に時代遅れのテクノロジーになってしまうことも珍しくありません。
そのため、最新の知識や技術を常に探求し、身につけようとする好奇心が必要になります。
また、インターネット上にアップされている膨大な情報の中から最新の知識や技術を見つけ出すためには、高いリサーチ能力も必要になります。
リサーチ能力はビジネスの企画をおこなう上でも欠かせないスキルになるので、それらのスキルを持ちあせている人材を採用しましょう。
スキルや能力3. 思考力
DXへの取り組みを進めていく場合、既存のシステムや考え方では課題を解決できないことが多々あります。
その場合、新しいシステムを構築しますが、その際に必要になるスキルや能力が思考力です。
既存の考え方や方法を一旦リセットし、新しい視点で課題にアプローチできる能力とスキルが必要になるので、そういった思考力を持っている人材を採用しましょう。
スキルや能力4. 課題を発見する能力
DX化の目的は既存のビジネスを変革させることですが、ビジネスを変革させるためには既存の課題を解決していかなくてはいけません。
それには、ビジネスを変革するための課題をすべて洗い出す必要があるため、その役割を担うDX人材には課題を発見する能力が求められます。
課題を発見する能力は、ビジネスデザイナーやアーキテクトに特に求められる能力となっています。
スキルや能力5.コミュニケーション能力
DX人材にはコミュニケーション能力も求められます。
企業のDX化は組織で進めていくものです。
先ほども紹介したとおりDX人材にはさまざまな業種がありますが、それらの業種が一つのチームとなってDXへの取り組みを進めていきます。
また、DXはその企業のビジネスに変革をもたらすほど規模な大きな取り組みになるので、通常のプロジェクト以上にチームでのコミュニケーションが大切になってきます。
プロデューサーやビジネスデザイナー、アーキテクトなど管理する業種や、ビジネスやシステムを考える業種であればなおさらです。
特にプロデューサーはチーム以外の人間ともコミュニケーションを取る機会が多いので、高いコミュニケーション能力が求められると考えておくべきでしょう。
スキルや能力6. デジタル技術を活用して課題を解決する能力
デジタル技術を活用して課題を解決する能力も、DX人材に欠かすことができません。
DXは、デジタル技術によっておこなわれるものです。
そのため、DXへの取り組みを進めていくDX人材にはそれぞれのデジタル技術への理解と、どのデジタル技術を活用すれば課題を解決できるのかを見極める能力が必要になります。
それぞれの技術でできることとできないこと、また、それぞれの技術をどういった分野に応用していけるのかを理解しているかどうかをチェックしながら採用をおこないましょう。
プロデューサーやビジネスデザイナーは技術者と会話しながら要件定義をおこなったり技術者をサポートする場合も少なくないため、それらの業種にもこの能力は求められます。
スキルや能力7. プロジェクトを推進・マネジメントする能力
先ほど紹介した6つのDXの業種の中でも、プロデューサーに対して求められるのが、プロジェクトを推進・マネジメントする能力です。
プロデューサーはプロジェクトに遅れが生じてしまわないようしっかりとスケジュールを管理しながら、プロジェクトを円滑に進めていかなくてはいけません。
プロデューサーはDXへの取り組みを進めていく上で特に重要なポジションになるので、プロジェクトを推進できるリーダーシップとマネジメントできる能力を持ち合わせた人材を採用しましょう。
DX人材を育成する方法
DXへの取り組みは短期間で集中的におこなわれるようなものではありません。
長期的な取り組みが必要になってきますが、そのために必要になるのがDX人材の育成です。
DX人材を育成する方法はいくつかありますが、代表的なものとしては、社内での研修の機会を設けて必要な知識やスキルを身につけてもらう方法があげられます。
また、外部のセミナーに参加させたり書籍などで自主的に学んでもらう方法もあります。
ただ、座学で知識やスキルを身につけるだけでなく経験を積んでもらうことも非常に重要になってくるので、適正があると思われる人はどんどんプロジェクトに参加してもらうようにしましょう。
まとめ:DXへの取り組みには優秀なDX人材が必要不可欠
DXへの取り組みを進めていくためには、今回紹介してきたスキルや能力を持った優秀なDX人材の存在が必要不可欠です。
ただ、冒頭でも紹介したとおり日本はDXへの取り組みが遅れてしまっていることもあって、優秀なDX人材は決して多くありません。
そのため、今現在DXへ取り組むことを検討しているのであれば、できるだけ早く採用活動を始めて優秀なDX人材を早めに採用する必要があります。
また、DX人材を採用するのと同じぐらいDX人材の育成も大切になってくるので、DX人材を育成するための仕組みづくりも並行して進めていくようにしましょう。
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