KPIで効果検証を確実に行う方法~マーケから営業まで~【FLUED・松永創さんインタビュー】 | テクロ株式会社
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KPIで効果検証を確実に行う方法~マーケから営業まで~【FLUED・松永創さんインタビュー】

企業のマーケティング・営業活動においてKPI設定と効果検証は、施策や改善の効果を測るための非常に重要なプロセスですが、指標の立て方や社内での管理・共有方法に悩む方も多いのではないでしょうか?

今回はKPIの効果的な設定方法から効果検証のコツまで、 株式会社FLUED 代表取締役社長/CEO・松永創さんにインタビューをさせていただきました。

今回お話を聞いたのはこの方

松永創(まつなが・そう)
​​株式会社FLUED 代表取締役/CEO

1984年 福岡市出身。IT(SaaS)ベンダの営業としてキャリアをスタート。その後 博報堂系テレマーケティング/ECサポートベンダでEC構築・運用・受注処理・カスタマーサポート・フルフィルメント(物流)事業/拠点の立ち上げ・営業企画に従事。自身もインサイドセールス部門での業務経験を積む。
その後B2BマーケティングエージェンシーでスタートアップSaaSベンダからERPなどのエンタープライズITまで様々なマーケティングに携わる。インサイドセールス/テレマーケティングで携わった企業・プロジェクトの数は100以上に及び、企業規模・フェーズに応じたコンサルティング幅の大きさに定評がある。
B2Bマーケティング/ビジネスプロセス改善などのテーマを中心にセミナー・カンファレンスなどで講演多数。

KPIは”皆”で管理するべき重要な評価指標

ー(天野)本日はよろしくお願い致します!
ではまず、マーケティングからCSまでの数値を追っていくという中で、何をKPIとして設定しどう管理していくのが良いのでしょうか?

ではBtoB、いわゆるSaaS組織におけるKPIの一般的なイメージで話しますね。

PR・マーケティング領域ではまずWebの流入量の施策、主にUU(ユニークユーザー数)・セッションPV(ページビュー数)というところがありますね。

それからコンタクトのMQLマーケティング活動によって創出されたリード)・SQL営業活動によって創出されたリード)・商談数フェーズごとの商談数取引数MRR(月次収益)、そういったところを追っていくケースが多いです。

方程式があるように見えますが、一言にMQLやSQLと言っても会社によって定義が全然違うんですよね。
きちんとそこの定義合わせをしてKPI全体を一つのデータポータルのようなものに集めていることが理想です。

最悪スプレッドシートとかでも良いですが、皆が一箇所で確認できるというのが大事ですね。

ー MQL、SQLが会社によって違うというのはまさにその通りだと感じますが、その定義合わせというのはどうやっていくのでしょうか?

例えばですが、この画像のような定義が一般論としてあるかと思います。

上記の画像はこちらからご確認いただけます。

そしてこういった一般論をベースに、社内での定義を議論して決めていきます。
新しい人がチームに入った時はこの辺りをしっかり言及して共有してますね。

また、こういったことをコンフル(Confluence)でまとめていったり、プレイブックのようなものを作ったりもします。

ー このようなシートを作成することで営業の担当者ごとに定義にズレが生じてくる可能性はやはり少なくなるのでしょうか?

そうですね、大切なのはこのシートを”皆で”埋めることです。

営業の近くにはPRやカスタマーサクセスの領域もありますが、その辺りも皆で合わせにいくこと、またそのためのコミュニケーションは惜しまないようにしています。

ー それは担当部長だけではなくて、部署全員で合わせにいくということなんですね。

はい、認識が合ってないと感じたらオフサイドでのMTGも全然やりますね。

あとは商談ステージの定義などもありますが、その辺りは会社の営業プロセスに合わせて定義します。

会社内にそういったことを体系化できるマネージャーや専門家がいないケースが多く、また会社としてもマーケティングのプロや営業のプロというのが揃っているケースも少ないですし、「別の会社でSaaSの営業をやってました!」という方がいても会社ごとに営業のプロセスは全然違うこともあるじゃないですか。

いろんな企業の営業やマーケティングのプロセスを見ていないと難しいところがあります。

そういう場合には僕たち外部が「他だとこうしてますよ」「この会社の営業プロセスに当てはめるとこうなるのではないでしょうか」というようなサポートをしているケースが多いですね。

ー サブスクライバー・MQL・SQLというのに対してKPIを立てる時は何を指標としていくのでしょうか?
現実とすごく乖離した指標だと誰も守れないということも考えられますよね。

そうですね、実態値と乖離してしまうと意味が無くなってしまうので、乖離をしないように積み上げていくプランが一つ。

それとは別に、例えば上達したスタートアップだったりすると、売り上げの目標から逆算して決めていくプランというのがあります。

どちらがよりその会社に合うかというのはありますが、これは帰納法か演繹法かみたいなもので決め方が違うだけでどちらの方法も正しいと思っています。

ー 設定したKPIをビジュアル化(目に見えるように)して共有するという段階では、情報が膨大過ぎても分かりづらく簡素化しすぎても意味を為さなくってしまうと思うのですが、どのレベルの数字までを見れるようにするのでしょうか?

KGI・KPIの定義はもちろん会社によって違うと思いますが、KPIがありすぎる会社が多い気がします。

KPIというのはそもそもKey Performance Indicator(重要業績評価指標)の略じゃないですか。
すなわち、重点的なパフォーマンスを見る指標、かつKeyでなくてはいけないにも関わらず指標多すぎ問題みたいなことになってしまうんです。

僕らはそこを区別するために「それってKPIだっけ?中間指標だっけ?」というのはよく言うようにしてますね。

ー KPIと中間指標はどう区別しているのでしょうか?

例えばマーケティングの場合、KPIをセッション数と資料ダウンロード数と問い合わせ数で打つというのは良いんです。

これらは本当に大事な指標ですから。

その中にプラスしてマーケティング部が管理すべき中間指標として、問い合わせフォームの到達率や離脱率、セッションの質がどうだ、という話があるんですよね。

だからKPIというのは隣の部署も知っておかなければいけない、中間指標というのは部署内で管理しておけば良い、というイメージです。
KGIに関しては社員全員が知っておかなければいけないものですね。

となると、僕の中では一つの部署で追うKPIは3つまで。現実問題それくらいしか設定できないと思います。
そしてそのKPIは隣接する部門も知っておかなければならない、ということです。

効果検証のためにもKPIは一覧にして追うべき

ー ありがとうございます。そういった前提を元に効果検証ができている会社ってなかなか無いと思うんです。
そこで、マーケティングから営業の部分で効果検証を始めたいという場合、まず何からするべきなのでしょうか?

シンプルなことですが、まずはそのKPIを一覧性が高い1つのシートにまとめて、それを週次で追っていくための会議を作るという感じでしょうか。

各部署のKPI3つ×5部門くらいだと思いますが、これくらいの数字は一画面上で閲覧できる量なので、その状態をまず作ることですね。

例えば定例会をやっていても全体の数字の話をせずに、各部門の数値報告を細々とするのはあまりお勧めしません。
本当に全体という意味で全てのKPIを見ることでそれぞれの関連性や推移も分かるので、一画面一覧というのが重要だと思います。

中間指標などもまとめて管理した結果、どれが優先事項なのか分からないというKPI迷子になってしまい、費用対効果の良い時間の使い方ができなかったり、最終的にKGIが上がってこないことに繋がってしまいます。

そのためにもいつでもそこに立ち返ることができるというのがすごく大切な要素になりますね。

ー ダッシュボードを作る際にKPI3つ×5部門とありましたが、少しずつスタートしたいという場合まず手を付けるべき箇所や部署というのはありますか?

BtoBのSaaSという前提ですと、僕は最もキャッシュポイントから近い営業だと思います。

キャッシュポイントから遠い部分の改善はやはり効果が現れるのに時間がかかります。
負担もかかりますし、経由するKPIの数が多ければ多いほど変数が多いんですよ。

もっとブレイクダウンすると、KPIに近いところから改善していくというのも一つです。
例えばWebだとコンバージョンポイントに一番近いところの改善が一番早く効果が出るじゃないですか。

それは組織全体でも同じことが言えるので、最もキャッシュポイントに近い営業から手をつけるのが手っ取り早いと思います。

コツは先人の知恵を駆使すること

ー KPIの立て方がまず大事ということでしたが、効果検証がしやすいKPIの立て方やコツのようなものはありますか?

明らかにその業界で上手くいっているところや属性が近いところを真似するというのが一番早いですね。

ー 逆に新しいマーケットで、ベンチマークがあまり無いという場合はどうされますか?

それでもやっぱり先人がいるんですよ。

業界や国が違うということはあるかもしれませんが、100%完全にオリジナルなものはこの世に存在しないと思っています。

なので、この点においてはメルカリと一緒、この点だとAirbnbと一緒、というような「この点においては」を駆使して情報を集めていくという感じですね。

部署間でリンクしたKPI設定で円滑な連携を

ー マーケティング部と営業部の関係性というのは、良好な企業もあればあまり上手く繋がっていないという企業もあると思います。
追っていくKPIをお互いに共有するという話があったのですが、それ以外に連携を円滑にする方法というのはあるのでしょうか?

確かにマーケティング部と営業部の仲が悪くなる、みたいなのは結構聞きますよね。
例えばマーケティングがリードを増やしたものの、その先に繋がらないリードばかりになってしまったためとか。

しかしこれは隣の部署のKPIが自分の部署のKPIとどうリンクしてるのか、本当の意味でシェアできていないから起こってしまうと考えられるんですよね。

先ほど各部署KPI3つ×5部署という話をした通り、隣接部署のKPIの連関性をきちんと覚えてもらうということ、そしてそこについて部署間でガッツリ話し合っておくことですね。

部門間で仲が悪くなってしまったりKPIにズレが生じる原因は、経験上90%ただのコミュニケーション不足なんです。
コミュニケーションの質ではなく、量の問題なのでそこを解消することが必要です。

そういう場合にも外部の人間というのは結構有効で、マーケティング部 対 営業部という構図の外から議論を建設的な方向に持っていくのは外部の上手い使い方かと思います。

ー マーケティングとセールスの考え方の違いで、マーケティングからすると匿名性のあるリードしか多く集めることが出来ない、営業からするとホットなリードを少なく集めて欲しい、という相互矛盾があるじゃないですか。

そうですね。なので、3つのKPIのうち1つは、隣の部署のKPIと限りなく近い方が良いんです。

マーケティング部と営業部という2部署に限って言うと、マーケティング担当者がKPIにするべきことの一つは有効商談数なんです。つまり営業がきちんとアポを取れて次に繋がると言える商談の数を持っておくべきで、これをマーケティング部の責任のもとに追う。

問い合わせ数や資料ダウンロード数だけにKPIを置いてしまい、マーケティングが個別最適化された結果、次に繋がらないリードばかり集まるという結果に。

そのあとは営業の仕事だろ、となりがちです。

そこで有効商談数というKPIは、マーケティング側の責任と営業側の責任が微妙にリンクしているところで、そのKPIを両部署で持つというのはすごく重要だと思います。

そうすると次にそのKPIに対して「なぜ有効商談数が上がらないのか」「このデータが取れていれば有効なリードだと分かる」といった会話が生まれるんです。

KPIを軸として管理する時にはぜひ設定しておいてもらいたい指標ですね。
僕自身マーケティングのお手伝いをさせていただいてるところでも、有効商談数はマーケティング部の中での一番重要なKPIに置いています。

事例から見るKPIとしての“有効商談数”

ー KPIの設定や部署間での連携などを経て、その結果が出るにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか?

全体のKPIを俯瞰しながらコンサルティングをやらせていただく会社というのは大体6ヶ月くらいで結果が出せるところが多いです。逆に言うと少なくとも半年はかかりますね。

僕を含め僕の会社でコンサルをしているメンバーは、一旦全体を見回せばどこにKPIを置くべきかというのは分かるのですが、そこできちんと会議台を回してそのKPIが普段の会話に出てくるようになるまでが必要なプロセスで。

なので最初の調査自体は2週間ほどで出来てしまいますが、会議で自然にKPIを追えるようになるまでに実際2ヶ月ほどかかってしまい、それを皆で取り組んだ結果として改善効果が見え始めるのが3~4ヶ月後くらいということが多いですね。

ー コンサルティングをされる中で実際に数字の変化が見えた事例などはございますか?

それこそわかりやすいマーケティングと営業の分断の話になりますね。

ある会社で、マーケティング部が元々追っていたのはセッション・PV・資料ダウンロード数でした。
いわゆるMQL的なリードの数でしたが、一方で営業が欲しいのはSQLの方なんですよね。

その会社では資料ダウンロード数で言うと、月間500件ほど獲得していたんです。
しかしその500件のうち、有効商談には10件も結びついていないくらい部署間が分断していたケースがあったんです。

よくよく紐解いてみると、有効商談とは何かというコミュニケーションがマーケティング部と営業部の間でされていなかったことが原因でした。

そこで両部署ともKPIを再度見直して、有効商談獲得数というKPIを両部門に置いたんです。
そうすることによって部署間での会議も行われるようになり、資料ダウンロード数のところであるMQLは半分以下になったものの、有効商談数は3倍ほどになりましたし、結果としてMRRは倍くらいになりました。

ー この事例では部署間の連携の結果、どういった部分を改善していったのでしょうか?

どちらかというとWebでの作り込みというよりは情報を届ける先、に関する改善ですね。

例えばそれまで「うちのSaaSってこういう規模の会社にハマるんだ」というのは、マーケティング部と営業部の間でふんわりとした共通認識しか無かったんですよね。

それを有効商談数というクロスファンクショナルなKPIを1つ置くことによって必然的に意識するようになるので会話が生まれるんです。

そうするとお客さんの像みたいなのが明確になって、マーケティングコストを集中投下する場所も見えてきて、資料ダウンロードの数は減るけど有効商談数は増えるということで解決されました。

ー 有効商談を作る際には架電していたんでしょうか?それともメールで商談を申し込んでいたんでしょうか?

課題認識する前の業界知識系のホワイトペーパーをダウンロードする人にはメールを、
いくつかステージを決めて課題認識しているようなホワイトペーパーをダウンロードした人には電話、と使い分けていますね。

ー メールや電話のスクリプトも、課題に合わせてマーケティング部と営業部の方で共有する形ということですね。

ここも言語化が難しいところなのでがっつりと打ち合わせをして区分を作っていくという感じです。
それを作るのに3,4ヶ月ほど、定着するのになんだかんだ半年ほどかかるイメージです。

基本週一回は全部門の人たちとミーティングをしますし、KPIがズレていたら口うるさく言っていますが、それでも半年かかってしまうものなので、逆に言うとノウハウだけ共有してできる会社というのはほとんど無いです。

「ここの会社こうやってますよ」「こういう定義をつけると良いですよ」というのを伝えただけでできた会社というのは今まで僕が見た中で一社しかありませんでした。
その一社はおそらく僕らが手をつけなくても出来ただろうと思います(笑)

マーケティング・営業の支援を受けるべきタイミングとは

ー インタビューの最後になりますが、読者の方に伝えたいことは何かございますか?

実際のところ調べてみると何をKPIにするべきかという情報はいろいろ出てくると思いますが、いろんな企業でそれを経験している人って市場にはすごく少ないんですよね。

なのでポジショントークにはなってしまいますが、専門家に頼るも良し、外部の手を借りるも良しだと思います。

ー どういった課題を持つ人、またはどんなフェーズの会社にコンタクトして欲しいというのはありますか?

KPI迷子な方ですね!

分かりやすくスタートアップで言うと、各フェーズによって課題の粒度だったりは違っても、シード時期もシリーズA時期も全部課題があるんですよ。

逆に言うと、そこはフェーズに合わせてお手伝い出来ます。

ー スタートアップのシード時期は事業開発の部分も100%完成していないので、営業でガンガン売っていくというよりはピポットを繰り返していくイメージなのですが、その時期からやったほうがいいことはありますか?

そうですね。具体的なアクションだと、シード時期はまず顧客事例の獲得です。

数社集まれば再現性が出せて共通解が見つかるはずなので、まずは提供価値と期待値がきちんとマッチしている事例というのを5社作って、それをベースに広げていくというやり方になるかと思います。

最初はセールスフローをしっかりと作るというよりは力技になりますね。

ー ではようやく再現性が出てきた、セールスフローを作ろうというタイミングで御社にお願いをするのがベストなのでしょうか?

そういったケースが一番多いですね。
シード時期の最後の方から、シリーズA、Bくらいでご相談いただくことが多くあります。

あとはいわゆるスタートアップだけではなくて大企業の中の新規事業開発部みたいなのもあったりしますが、ユニットエコノミクスが成立するかどうかのタイミングでお声がけいただくことが多いですね。

ー 少し話が脱線してしまいますが、リードジェネレーションができていないという場合には、マーケティングの方に入り込んでリードジェネレーションの施策からコンサルティングをスタートするという場合もあるのでしょうか?

全然ありますね!
マーケティングを散々やったのにリードジェネレーションができないという場合はプロダクトかPRの問題だったりするんですよね。

プロダクトの場合は明白だと思いますが、PRがうまくいっていない時はフワッとしているケースが多いです。

例えばWebサイトも「For the better world!」みたいな、誰向けの何なのかというのが明確に定義されていないことが多く、コンセプトメイキングやコピーライティングの部分で問題があったりします。

ー なるほど。本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

株式会社FLUEDは、3ヶ月インサイドセールス強化パッケージもご用意しています。

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松永創 Facebook:https://www.facebook.com/sohmatsunaga
株式会社FLUED:https://www.flued.jp/

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