製造業DXとは?取り入れるべき戦略と実現までのステップやポイントを事例と併せて解説
ビジネスに大きな変化をもたらしてくれるデジタルトランスフォーメーション。
「DX」とも呼ばれており、その波は製造業にも来ています。
その結果、製造業の分野でもDXを進める企業が多くなっていることが現状です。
そこで今回は、製造業に取り入れるべきDX戦略や成功事例などを紹介します。
DXについて深く知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、DXの成功事例集を無料配布しておりますので、こちらもご確認ください。
目次
- 1 製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは
- 2 製造業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要な理由
- 3 製造業DXで実現できること
- 4 製造業が取り入れるべき4つのDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略
- 5 製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)におすすめのシステム
- 6 製造業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例
- 7 製造業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題
- 8 製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためのステップ
- 9 製造業DXを成功させるためのポイント
- 10 まとめ:戦略を練り、DX(デジタルトランスフォーメーション)でビジネスに変革を
製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXは、単にデジタル技術を導入するだけで成功するものではありません。
「独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) 社会基盤センター」は、製造業におけるDXを下記のように定義しています。
顧客価値を高めるため、製造分野で利用されている製造装置や製造工程の監視・制御(OT)などのデジタル化を軸に、IT との連携により製品やサービス、ビジネスモデルの変革を実現すること
引用:中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイド|独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) 社会基盤センター
「製品やサービス、ビジネスモデルの変革」とあるように、作業だけではなく、ノウハウや情報・品質管理もデジタル化が必要なのです。
製造業においては、
- 変化に対して柔軟に対応できる生産ラインの実現
- 製品の設計や開発
- 製造した製品を活用したサービスの提供
などが具体例として挙げられます。
製造業に関わるすべての業務においてデジタルテクノロジーを導入・活用し、企業価値を上げることが、真のDXの目的と言えるでしょう。
デジタルトランスフォーメーションについては弊社の別記事「デジタルトランスフォーメーションとは?注目される理由を徹底解説」でも詳しく紹介しています。
こちらも合わせてお読みいただくと、よりDXへの理解が深まるはずです。
製造業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要な理由
製造業にDXが必要な理由は、デジタル技術を導入することで、企業の限られたリソースを新製品やサービス開発に集中投入できるからです。
今まで人の手で実施していた作業を、デジタル技術で自動化すれば業務コストが圧縮されます。
ここで得られた余剰リソースを、新製品やサービス開発にあてることもできるわけです。
現在、企業を取り巻く環境は非常に不確実で、この先どのように変化していくのか、予想も立てづらい状況になっています。
実際に、2021年版のものづくり白書でも、同様の見解が述べられています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大以外にも、多くの外的要因が我が国製造業の事業判断に影響を及ぼすものと考えられており、かつ、これらは事前に発生や変化を想定することが難しい。
引用:2021年版 ものづくり白書|経済産業省 厚生労働省 文部科学省
このような中で、状況や顧客ニーズの変化に素早く対応し、企業価値を高めていくために、DXは必要不可欠です。
製造業DXで実現できること
製造業DXがもたらす変革は、生産の現場から経営戦略に至るまで幅広い範囲に影響を及ぼします。
ここでは、製造業DXで実現できる内容について紹介します。
DXによるデータの活用がいかに製造業に影響を及ぼすのか知っておきましょう。
生産性の向上
製造業における競争力保持には、生産性の向上が不可欠です。
DXは、AIやIoTの導入により業務の効率化と自動化を実現し、生産性を高めることが期待されています。
例えば、AIやIoTなどのテクノロジーの技術は、作業の質の安定化を促進し、人的エラーの削減につながります。
また、IT技術による現場設備の全自動化や半自動化、さらには事務業務の自動化なども同様です。
さらにデジタル化によるペーパーレス化は、記録管理の効率化し、業務の効率化や管理体制の強化につながります。
DXを活用すれば製造業に欠かせない生産性を向上させることが可能です。
人手不足の解消
製造業における人手不足は、生産性の低下や品質の不安定に直結する大きな課題となっています。
この人手不足解消に向けて期待されているのが、AIやロボティクス技術の導入といったDXの取り組みです。
AIやロボティクス技術の導入により、従来人の手が必要だった業務の多くが機械によって処理されることが期待されています。
また、人が処理するルーチンワークや単純作業を機械に任せることで、私たちは付加価値の高いクリエイティブな業務に集中できるようになります。
さらに、DXの導入によって人材コストの削減も期待できるでしょう。
削減できた人材コストを、新しい技術の導入や研究開発など投資できるかもしれません。
このようにDXは、製造業における人手不足解消の実現に大きく貢献し、企業の持続可能な成長と強化を実現できると期待されています。
情報の可視化
製造業では、生産性の向上や品質など維持していくために情報の可視化が欠かせません。
そのため、DXによるデジタル技術の導入によって、全工程の情報を見える化することが期待されています。
例えば、デジタル技術を活用すると設備の状況や生産工程、生産量などの重要なデータをリアルタイムで把握できるようになります。
また、属人化やブラックボックス化されがちだった作業工程もデータ化することで、明確かつ客観的に理解できるようになるでしょう。
さらにIoT技術を活用することで、受注からアフターサービスまでの全工程を一元管理し、可視化を図れます。
このように製造業DXによる情報の可視化は、業務の効率化が図れるだけでなく、製品の品質向上やコスト削減などの実現が期待されています。
脱属人化
日本の製造業は長年にわたり、現場主義や職人文化によって発展を遂げてきました。
しかし、ベテランの技術や経験に依存する傾向が製造業の課題になる場合があります。
製造業における業務の属人化は、業務の効率や品質の安定に影響を与えるためです。
そして脱属人化の一歩として実現が期待されているのがDXです。
脱属人化の取り組み例として、作業内容や現場の情報といった業務プロセスのデジタル化が挙げられます。
デジタル上でデータ化することで業務プロセスの標準化ができ、属人化を回避できます。
また、デジタル技術の利用は、業務の自動化を推進し人間の介入を減らすことが可能です。
従来、人に依存していた業務が機械やシステムによって担われるようになり、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
このようにDXの導入は、製造業における脱属人化の実現を期待されています。
顧客満足度の向上
DXへの取り組みは、顧客満足度を向上させるとして期待されています。
DX による業務効率化は、スムーズなサービス提供やレスポンスの速度向上につながるためです。
例えば、AIを活用したデータ分析では、需要予測や顧客のニーズ、製造問題など顧客が求める商品製造するための参考材料として活用できます。
製造する商品の品質は、顧客の信頼獲得を左右する重要な課題です。
DX化による機械導入やAI技術の利用は、ヒューマンエラー軽減が期待され、安定した品質を顧客に提供できます。
このように製造業DXに取り組みは、顧客満足度を向上させるとして期待されています。
ダイナミック・ケイパビリティ強化: DXによる製造業の競争力向上
ダイナミック・ケイパビリティとは、企業が外部環境の変化に対応し、自らを変革していく能力のことです。
現代の製造業は、新型コロナウイルスの影響や国際政治の緊張など、多くの不確定要素に直面しています。
このような状況において、企業では「ダイナミック・ケイパビリティ」を持ち、市場や顧客のニーズに柔軟に対応することが求められます。
そして製造業DXは、ダイナミック・ケイパビリティを支え強化する役割が実現できるとして期待されています。
製造業DXは、業務効率の向上や人材育成の強化を実現し、市場変化に対応できる人材と業務体制を築く助けになるためです。
積極的に製造業DXに取り組み、ダイナミック・ケイパビリティを実現させましょう。
リソースが確保され新製品やサービス開発などに集中できる
製造業DXは、デジタル技術を導入することで新製品やサービス開発に集中投入できるリソース時間の確保を実現します。。
今まで人の手で実施していた作業をデジタル技術で自動化すれば、これまで必要だった業務時間の短縮が期待できます。
そして、空いたリソースを新製品やサービス開発にあてるといったことも実現できるわけです。
現在、企業を取り巻く環境は非常に不確実で、この先どのように変化していくのか、予想も立てにくい状況になっています。
実際に、2021年版のものづくり白書でも、同様の見解が述べられています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大以外にも、多くの外的要因が我が国製造業の事業判断に影響を及ぼすものと考えられており、かつ、これらは事前に発生や変化を想定することが難しい。
引用:2021年版 ものづくり白書|経済産業省 厚生労働省 文部科学省
このような中で、状況や顧客ニーズの変化に素早く対応し、企業価値を高めていくためにDXは、必要不可欠です。
製造業が取り入れるべき4つのDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略
製造業が取り入れるべきDX戦略には、代表的な4つの戦略があります。
それぞれどういった戦略なのかについてみていきましょう。
戦略1. 工場のスマートファクトリー化
工場で製品を製造する製造業には、製造現場である工場のスマートファクトリー化が求められます。
スマートファクトリーとは、デジタルデータを活用する新しいタイプの工場です。
AIやloTといったデジタルテクノロジーを導入して業務にかかわるデータを取得し、それらのデータを、
- 各プロセスでの業務効率化
- 品質の担保や向上
- 生産性の向上
などに活用していきます。
人間の目では見えていなかった改善点を、データの取得によって見える化し、業務効率化や品質・生産性の向上につなげていきます。
工場は製造業にとって核と言える部分のため、DXへの取り組みを検討している企業が最も力を入れて取り組むべき戦略だと言えるでしょう。
戦略2. 業務効率化による人材不足の解消
日本は少子高齢化により働き盛りの世代の減少が急激なスピードで進み続けています。
人材不足は、製造業も例外ではありません。
技能実習の名目で外国人労働者を受け入れることで人材不足への対策が実施されていますが、この制度自体が長時間労働や在留資格の悪用などの問題を抱えている側面もあります。
外国人労働者の代案として、注目されているのが「DX」です。
DX化を進めると、さまざまな業務プロセスでの効率化が図れるようになります。
すると一人あたりの負担が大幅に軽減でき、慢性的な人材不足の状況を解消できます。
人材不足は製造業界が抱えている大きな問題の一つですので、その問題を解決するための取り組みも戦略の一つとして考えるべきだと言えるでしょう。
戦略3. 製造した製品を活用したサービスの提供
製造業では製品の製造がメインになりますが、それだけでは今後勝負していくのは難しくなるでしょう。
そこで取り組むべきDX戦略の一つが「製造した製品を活用したサービスの提供」です。
「サービス化」とも呼ばれるこの流れは、すでに製造業でのトレンドとなっています。
サービス化は、今までのように単純に製品を製造してユーザーに提供するものではありません。
その製品を使ったサービスの提供までを、セットとしたビジネスモデルを展開していきます。
製品とサービスの両方を提供することで製品そのものの価値が高まり、よりユーザーに選んでもらえるようになるでしょう。
この流れは製造業でのスタンダードになっていくことが予想されるため、今後は製品購入後に利用できるサービスもセットで製品の開発をすることが求められます。
戦略4. プラットフォーム化
プラットフォーム化も製造業が取り組むべきDX戦略の一つです。
製造業を軸にさまざまな分野に裾野を広げてプラットフォームを構築し、ユーザーに利用してもらえるようにしていきます。
この戦略は世界的な大企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が実施している戦略でもあります。
先ほど紹介した製品を活用したサービスの提供と合わせて進めていくのもおすすめです。
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)におすすめのシステム
ここでは、製造業のDXにおすすめのシステムの一部を紹介します。
気になるシステムがあれば、チェックしてみましょう。
システム名 | 特徴 |
---|---|
工程管理支援システム『cycleon』 | システム化が難しい金型製造の工程を効率的に管理 |
現場主導型生産管理システム『Sys DevLink』 | 製造現場主導での製造指示や計画作成・変更できるシステム |
日報電子化アプリ『スマファク!』 | 日報のペーパーレス化や有効活用、データ化など見える化できるシステム |
Web生産スケジューラ | 生産状況や進捗状況を見える化し、最適な生産計画を策定するための支援システム |
工場向けのlotシステム『Nazca Neo Linka』 | 生産設備の稼働データを一元管理できる生産設備向けloTシステム |
見積もり支援システムCPQ(コンフィグレーター) | 誰でもすぐに正確な見積もり作成が可能 |
ホワイトボード型生産管理システム『ADAP』 | サプライチェーン全体を見える化するツール |
FLEXDOOR | 設備ごとの電力使用状況の計測と把握などが可能なシステム |
生産進捗管理システム | 目標・進捗・改善を見える化し目標意識向上が図れる |
製造業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例
ここからは、実際にDX化に取り組んで成功した製造業の事例をいくつ紹介していきます。
成功事例1. 株式会社今野製作所「プロセス参照モデル」
- 理化学機器の製造
- 板金加工
- 機械修理
- 油圧機器の製造
などの事業を実施しています。
デジタルトランスフォーメーションで、株式会社今野製作所が取り組んだのは「プロセス参照モデル」です。
株式会社今野製作所では事業のスタイルを大きく変更し、オーダーメイド型に移行することで製品の付加価値の向上を目指しました。
しかし、その取り組みによって対応力不足や負荷の集中、納期遅れなどの問題が相次いでいました。
これは業務のプロセスが複雑化してしまったことによって、引き起こされた弊害によるものです。
複雑化を解消するべくプロセス参照モデルは、
- 複雑化してしまっていた業務プロセスの分析
- それぞれの業務プロセスを最適化するために必要なシステムツールの開発
などが実施されました。
この取り組みによって業務プロセスの整理や可視化が実現され、人材が不足してしまっているポイントや改善点が早期に発見できるようになるなどの成果が得られました。
【参考】製造業DX取組事例集:株式会社今野製作所「プロセス参照モデル」
成功事例2. 沖電気工業株式会社「バーチャル・ワンファクトリー」
精密機器の製造・販売をしている沖電気工業株式会社。
実施されたDXは「バーチャル・ワンファクトリー」です。
沖電気工業株式会社には、世の中の変化による需要の減少や共通の仕様による生産ができていないなどの課題がありました。
そこで今まで工場ごとに分かれてしまっていた設計情報を共通化し、設計データをそれぞれの工場で受け取れるようにしたのが「バーチャル・ワンファクトリー」です。
「バーチャル・ワンファクトリー」では、それらの取り組みと並行する形で、人材や技術の交流の活発化も実行しました。
これらの取り組みにより、技術の共通化とそれぞれの工場の強みを生かした生産体制の構築が図れるようになりました。
【参考】製造業DX取組事例集:沖電気工業株式会社「バーチャル・ワンファクトリ」
成功事例3. 株式会社アイデン「IWS」
制御盤や分離板の製造・販売をしている株式会社アイデン。
株式会社アイデンでは、
- 制御盤製造を製造担当者の知見に依存してしまっている
- 作業の進捗管理や工程管理が担当者任せになってしまっている
- 作業の簡素化や単作業化の必要性を感じている
などの課題を抱えていました。
それらの課題を解決するための取り組みが「IWS」です。
IWSは各工程で必要な作業を標準化・可視化できるデジタルツールで、CADベンダーと連携し、開発と導入を進めていきました。
IWSの導入により得られた成果には、以下のものが挙げられます。
- デジタル図面データを活用して一部の作業を機械化させたことによる生産性の向上
- 作業の明確化による分業体制の構築と担当者の進捗管理の実現
- 作業量の明確化による、必要な材料量の事前把握
- 作業の標準化による新規海外拠点への進出や市場への参入
これらの成果の中で、特に注目するべきなのが「作業の標準化による新規海外拠点への進出や市場への参入」です。
DXにより株式会社アイデンでは、IWSの導入によって今まで参入できていなかった市場や拠点への進出が実現できています。
日本の制御盤メーカーが参入できていない市場に進出したことで、今後同社の売り上げに大きく貢献していくでしょう。
【参考】製造業DX取組事例集:株式会社アイデン「IWS」
製造業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題
他の業界よりも比較的早い段階からDX化に取り組んできた製造業ですが、DX化が思うように進んでいないのが現状です。
製造業でDXを成功させるにはどのような事象が課題となるのか、確認していきましょう。
正しい投資ができていない
DXの課題でまず挙げられるのが、正しい投資ができていないことです。
DXを推進するためには、現行の仕事を保守する投資よりも、変化に合わせて企業を変革させるための投資が必要になります。
国内の企業では現行の仕事の保守を重視する傾向が強く、これがDX推進の妨げになってしまうのです。
先にもお伝えしたとおり、現在の企業を取り巻く環境は非常に不確実であり、顧客のニーズも激しく変化しています。
このような状況下では、現行の仕事を保守することよりも、柔軟な変革が求められるため、大胆な投資が必要になります。
経営者と技術者で認識の差がある
経営者と技術者の間に「認識の差」がある場合も、DX推進の妨げになります。
経営者は今までのやり方を変え、大きな変革を起こそうとしますが、現場技術者はやり方を大きく変えることに反発することがあります。
このような状態では、なかなかDX化を前に進められません。
なぜDXが必要なのかという理由や、DX成功後のビジョンをしっかりと説明し、ゴールやプロセスを共有することが大切になります。
属人的なシステム
システムが属人化されすぎている場合も、DX推進の妨げになってしまいます。
現在日本では少子高齢化が進行し、労働力が慢性的に不足している状態です。
このような状態ではシステムに問題があった場合に抜本的な改善をすることが難しいので、多くの場合は現場の担当者が独自に改善して対応します。
システムの部分最適の改善を繰り返すことになり、その結果システムそのものが特定の個人に属してしまうのです。
いわゆる「〇〇さんしか使えない」という状態です。
必要であれば、問題点を押さえた上で抜本的にシステムを設計し直すことも検討しましょう。
また、このような状況ですと先に説明した「認識の差」も生まれやすくなります。
経営者と現場が同じ方向を向いて歩めるよう、慎重に進めるようにしましょう。
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためのステップ
こちらでは、製造業でDXを実現するための具体的なステップを解説していきます。
製造業でのDX推進は、下記の5ステップで進めます。
- DXでなりたい姿を社員に共有する
- 人材を確保し、現状を把握する
- IT・デジタル化する箇所を選定する
- IT・デジタル化した業務を実際に運用する
- ビジネスモデルを変え続けて顧客育成を図る
詳しく解説します。
1.DXでなりたい姿を社員に共有する
まずは社員に、DXを経てどのような姿になりたいのか、そのビジョンを共有しましょう。
DXは会社全体で、取り組むべき課題です。
なぜDXが必要なのかという理由と、どこを目指すのかというゴールが明確でないと、無用な軋轢が発生したり、思うように進まなくなったりします。
しっかりと社員に共有しましょう。
2.人材を確保し、現状を把握する
ビジョンを明確にしたら、体制を整え、現状を把握していきます。
まずは目的達成のために必要な人材を確保しましょう。
社内だけではなく、社外から優秀な人材を獲得するのもよい方法です。
人材が確保できたら、社内システムなどのIT資産がどのような状態なのかを把握します。
その上で、継続して使用するのか、破棄するのかを決めておきましょう。
3.IT・デジタル化する箇所を選定する
業務全体を俯瞰し、デジタル化の効果が高そうなポイントを選定します。
この時に注意しておきたいのが、いきなり全てを変えるのではなく、小さなところから徐々に変更していく点です。
社内システムのあちこちを変更すると、現場が混乱するほか、失敗時のロスも大きくなります。
DXがスムーズに進むよう、小さなところから改善していくようにしましょう。
4.IT・デジタル化した業務を実際に運用する
選定したポイントをデジタル化し、新しいシステムで業務を実際に運用します。
ここで大事なのが、効果検証や改善をしっかり実施することです。
焦らず、確実に進めていきましょう。
5.ビジネスモデルを変え続けて顧客育成を図る
先にも解説したとおり、DXは単にデジタル化するだけでは終わりません。
時代の変化や顧客のニーズに合わせて、企業の構造やビジネスモデルの変革を実施し、顧客の満足度を高めていくことが必要です。
今後どのような変化が起こるかを予想したり、察知したりするためには、データの活用なども大事になってきます。
企業全体が一丸となって、取り組んでいきましょう。
製造業DXを成功させるためのポイント
DXの目的や目標が明確でない場合、プロジェクトの方向性を失い、DXが失敗する可能性があります。
ここでは、製造業DX を成功させるポイントについて解説します。
経営者自らDXを主導する
製造業DXを実現するには、経営者自らが主導することが必須です。
DXは、単なる技術の導入ではなく、業務プロセスの見直しや企業風土の変革を含む全社的な改革を意味します。
この大規模な変革は、経営者の強いリーダーシップと意識がなければ実行に移すことは難しいでしょう。
経営者がDXの目的と目標を明確に設定し、会社全体にDXの重要性を伝え、主導することが肝要です。
組織全体の意識と行動を変える推進力を生み出すことができます。
一般的にDXの推進は、IT部門や専門のDX推進部門に依存する傾向がありますが、これだけでは不十分です。
経営者自らが積極的に関与し、異なる部門間の連携を促進し、全体最適を追求することで、真のDXを実現する道を切り開くことができます。
経営者自らがDXの旗振り役となり、企業全体を巻き込むことがポイントです。
「守り」と「攻め」の2種類のDXを意識する
製造業でDXを進める際には、「守り」と「攻め」の2種類のDXを同時に意識することがポイントです。
これら二つの観点は、企業の成長と競争力向上に欠かせない要素であり、バランスよく取り入れることで多面的な成功を目指すことができます。
守りのDXとは、
- 業務効率化
- コストカット
- 業務フローの最適化
- デジタルツールの導入
これら守りのDXを通じて、既存の業務プロセスを強化し、リソースの無駄を削減など効果があります。
また、安定した運営基盤を築き、リスクを低減することが可能です。
一方の攻めのDXは、
- 組織変革を促すデジタル技術の導入
- 新たなビジネスモデルの開発
- 製品やサービスに新たな付加価値を加える
などです。
これら攻めのDXは、市場での競争力を高め、新しい市場や顧客層を獲得する機会を拓くことができます。
守りと攻めのDXは相補的な関係にあり、一方だけを進めるのではなく、両方をバランスよく組み合わせると効果的です。
守りのDXで築いた効率的な業務プロセスの基盤のうえで、攻めのDXで革新的な取り組みを推進すると良いでしょう。
この2つのDXの観点を意識し、それぞれに適した戦略と施策を練ることで製造業におけるDXの成功につながります。
段階的に進める
製造業におけるDXの成功には、プロセスを段階的に進めることがポイントです。
一気に全てを変革しようとすると、現場での混乱や従業員の負担増が懸念されます。
そこで推奨されるのは、段階的な進行を心がけ、各ステージでの成果を確認しながら次の段階へと進む方法です。
まず各部署と連携し、どのツールや技術が業務効率化や組織改革に貢献するかを検討します。
そして、最も効果が大きいと予想される部分からDXをスタートし、その成果を評価すると良いでしょう。
成功体験を得ることで組織全体のDXへの理解と意識が高まり、次の段階へ進む準備が整います。
DXを段階的に進めることで、DXに関連するリスクを管理し、未知の課題や障害に対して柔軟に対応することが可能です。
そして、各段階での学びを活かしながら、企業全体でのDXの効果を最大化することができます。
ダイナミックケイパビリティを意識する
製造業においてDXを成功させるポイントのひとつは「ダイナミックケイパビリティ」を意識することです。
ダイナミックケイパビリティとは、企業が技術や市場、環境の変化に対応し、自己変革を図る能力のことです。
ダイナミックケイパビリティを意識することで、既存の業務プロセスを見直し、必要に応じて改善や変革を行いながら、新しいビジネスモデルや戦略を形成することができます。
また、組織全体でこの考え方を共有し、実践することで社内のコミュニケーションと連携が向上し、より効率的かつ効果的なDX推進が可能です。
ダイナミックケイパビリティを意識した取り組みは、変化の激しい市場環境や環境の変化においても柔軟な対応ができます。
まとめ:戦略を練り、DX(デジタルトランスフォーメーション)でビジネスに変革を
デジタルトランスフォーメーションが製造業にもたらしてくれるメリットは計り知れません。
DXはビジネスに変革をもたらすものですので、DXへの取り組みが大きなビジネスチャンスにつながることもあります。
しかし、DXの実現にはしっかりとした戦略と時間が必要になります。
また、現場の技術者たちから理解を得ることも必要です。
DXの取り組みには時間がかかるので、今回紹介した成功事例を参考に、戦略を練りながら時間をかけて取り組んでいくようにしましょう。
弊社・テクロ株式会社ではDX支援を行っております。
DXの成功事例集も配布しておりますので、ぜひご確認ください。